エルフの結界
ウォルフ達は、バルガナーン大森林での目的の一つである、エルフとの接触に成功する。
更に深部へと、俺達は探索を続ける。
相手に捕捉されない限りは魔物と戦う必要はない。
魔力探索で周囲を探りながら、時に迂回しながら深部を目指すが、迂回した時に違和感を感じた。
「ここって、人の手が入ってないか?」
「こんな所に、人はいませんよね?」
「残存魔力は感じませんわ?」
クリスとホリーはそう返事するけど……
俺は森の様子に違和感がある。
「マーク、ユリア、どう思う?」
「自然に見えるが、確かに不自然さを感じるな……」
「人がここまで進んでる様子は無かったわね……ウォルフ、あなたはエルフがいるって思ってない?」
「そうだ。もしかすると、この近くに結界で隠したエルフの里があるかもしれない……」
今回の探索の目的の一つが果たせるかもしれない。
ローレンスと古代竜の会話……
世界樹を護るエルフの一族と、それを簒奪しようとしていたエルフ『ヴェレダ』。
それに、【調停者】である古代竜が絡んでいたなら、【調律者】って存在に対するヒントがあるかもしれない。
その鍵を探すためにエルフと接触したかったのだ。
エルフの里は周囲に高度な結界を重ねて張ることで、彼等以外の存在から身を隠して暮らしている。
通常の魔物では結界の存在に気がつかず、その外側に張られた結界に方向感覚を狂わされて、近付くことすら出来ず離れていく。
非常に排他的なエルフの特徴が顕れている。
普通に進んでいては、俺達も方向感覚を狂わされて迷う恐れがある。
ホリーに結界を張って貰い、安全を確保した状態で俺は魔力探索の精度をあげることにした。
魔力探索は自身の魔力を薄く拡げていくことで、周囲の魔力を持つ存在を察知する魔法だ。
生物は必ず魔力を持っている。
普段は植物や、小動物の魔力を無視する精度で魔力探索をしているが、精度を上げれば、結界で隠している地域が浮き出すと考えたのだ。
薄く、しかし濃密に魔力を拡げていく……
周囲全てに魔力を感じる。
「見つけた!」
方角にすれば北北西に魔力を全く感じることの出来ない場所がある。
相手に警戒を促しては接触が難しくなると判断した俺は、すぐに魔力探索を中断する。
相手が魔法に長けたエルフなら、既に俺の魔力探索を察知した可能性も否定は出来ないが、俺の魔力はローレンスの魔力が混じっている。
エルフの興味を惹ければ話に応じてくれるかもしれない。
「どうする?」
「魔石を埋めてから、進もうと思う……」
念のため、ここに魔石を埋めることにした。
結界内で道に迷う事態になった時に脱出する手段を確保するためだ。
排他的なエルフが相手だ。
彼等は一方的に俺達を拒否するために、里の周囲を永遠に廻らせることも警戒する必要がある。
「エルフには、同部族のエルフにさえ排他的な部族がいる。好戦的じゃない部族が多いけど、警戒はしてくれ」
普段、エルフという種族は穏やかな暮らしを好むが、迫る驚異……主に魔物等を狩る時には、弓、魔法といった遠距離の攻撃を駆使するのが一般的だ。
俺達を近づけたくない場合、いきなり弓や魔法で牽制して来る可能性が高い。
「最初の結界内にはいるぞ」
「結界の存在を感じないですね……」
「方向感覚が狂ったって感じはないな……」
「それでも狂ってるかもしれないのよ、マーク」
「この結界の隠密性……凄いですわね……」
クリスとホリーは結界の隠密性に驚いている。
確かに、前もって結界の存在に気づいていないと、結界内に踏み込んだことにも気づかないだろう。
まるで、誘導するかの様に通り易い方角を避けて進む。
結界内で方角を誤らせるのが目的なら、通り易い方向こそが迷う道になるからだ。
「視られてるな……」
「マークも気づいたか?」
俺と前衛を務めるマークが呟く。
結界内に入った直後から、俺達を監視している視線を感じていたが、マークも気づいていた様だ。
A級冒険者であり、剣の達人でもあるマークの索敵能力は流石と改めて思う。
やはり、魔力探索の魔力に気づいていたんだろう……
二方向から監視されている。
『このまま進んで監視が増えるなら、エルフの里の方角に進んでるってことだよな?』
『そうだな……小声だけど聴かれてると思うが……』
『!!』
俺とマークの目前に矢が放たれた。
飛んできた矢は俺達の目線の高さを通り、横に有るが木に突き刺さる。
「待て、俺達に害意は無い!」
「……」
「集落に入れなくてもいい。少し話がしたい!」
「帰れ。最近、この辺りには土竜が現れてる……」
「土竜なら討伐した!」
「お前達五人でか?……人間にそんなことが出来るとは思えんな」
「これを見てもか?」
俺は異空間収納から両断された土竜を取り出す。
巨大な土竜の骸が俺の前に現れた。
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