【ゾーン】と【神仙術】
ウォルフは自身の持つスキルの謎について考察する……
「うふっ、うふふふふ…」
上気した表情で放心しているホリー……
迂闊だった……
ホリーと二人で積み上げて来た剣が奥義を再現させたことに感動した俺は、何も考えられない状態だったんだ。
そのホリーを囲んだ陣形で俺達は、ハウンドウルフの襲撃を防いでいた。
土竜を両断した時に流れ出た、大量の血の匂いに惹かれ集まったハウンドウルフは絶え間なく襲いかかって来る。
土竜は既に異空間収納に収納しているが、既に地面に染み込んでいる血の匂いまでは消せなかったのだ。
「ホリー、いい加減にしろ!」
マークの叫びもホリーの耳には届いていない。
クリスとユリアも雷撃を付与した剣でハウンドウルフを寄せ付けない様に戦っている。
「ウォルフ、旋風刃は使えないのか!?」
「【ゾーン】が発動していないから無理だ!」
マークが聞いてきた旋風刃は奥義の一つで、衝撃波を放ちながら剣を振るい続ける連撃のことだ。
乱戦時に特化した技で、周囲を囲まれた時にこそ真価を発揮する。
【ゾーン】の発動していない俺が型だけ真似たところで、衝撃波を放ち続ける連撃など再現出来るはずがない。
「群れのボスさえ解れば……」
「私は防ぐだけで……手一杯です!」
「みんな、自分の前に拡げた障壁を張ってくれ!」
叫んだ俺は、自分の限界まで広い範囲で結界を張る。
結界に向けて広範囲殲滅用の炎を放つと、結界の外縁部に沿って炎が拡がっていく。
結界内にいたハウンドウルフの大半が炎に焼かれ、残ったハウンドウルフ達が逃げていった。
森林火災を興さない様に水魔法を発動して、周囲に燃え移った火を消してから結界を解く。
「なっ、何があったんですの!?」
炎の熱がホリーを正気に戻した様だ……
「ウォルフ、あれは危な過ぎるだろ!」
「私も……『死んだ』と思っちゃいました……」
「本来はホリーに俺達を護る結界を張って貰うつもりだったんだけど、あの状況では仕方ないだろ?」
「「「………」」」
三人がホリーを睨む。
「何ですの?」
全く状況を把握していないホリーの、緊張感の欠片もない返答が三人に火をつけてしまった……
原因の一端の自覚がある俺は、気配を消すことに留意してとばっちりを避けることにする。
当然のことではあるが、喧騒に巻き込まれることを避けることは赦されず、俺とホリーは長い時間の吊し上げを喰らった。
「ところでウォルフ、奥義を使った時……ぶっつけ本番だったんじゃないか?」
「そうだな」
「【ゾーン】ってスキルはそんなに万能なのか?」
喧騒が落ち着いた頃、マークが疑問に思っていたことを聞いてきた。
その疑問はみんなも持ってた様で、俺の答えを待ちながら凝視してくる。
「【ゾーン】の効果は前に説明した通り、思考の超高速化と魔力操作の超高速化と精密化だよ」
「奥義を使える程に?」
ユリアの質問が、みんなの興味を深める。
「あそこまでの威力で使えるとは思ってなかったけどね」
あの時、俺は『光刃斬で土竜を斬ることが出来る』という……確信に近い予感があった。
剣理としての知識は持ってたが、それを自分が使えるってこととは違う……
正直、何故そんな予感があったのか俺自身にも解らない。
「リッチと戦った時にも同じ様な予感があったんだよな」
「その時も奥義を使ったのか?」
「いや、リッチの反応を超える速さで斬れるって思ったんだけど、実際に斬ることが出来た」
「やっぱり【ゾーン】の効果ですか?」
「私とウォルフ様、二人の愛の結晶である剣ですのよ? 当然の結果ですわ!」
クリスの質問に、的外れな答えを返すホリーを全員が無視する……
「【ゾーン】の効果は当然なんだろうけど……俺は、それ以外の要素があると思ってるんだ」
「それ以外?」
「『愛』に決まってるますわ!」
空気を読めよ……ホリー……
「リッチとの戦いの時にも思ったんだけど、初めて使う魔術がイメージ通りに発現し過ぎるって気がする……」
「ローレンスってエルフの経験じゃないのか?」
「ローレンスの魔術を応用してはいるけど、その場で思い付いた魔術が簡単に成功する程簡単なものじゃないってことは……ホリーもクリスも解るだろ?」
魔導師団長であるホリー、付与魔法と回復魔法を使うクリス、この二人は新しい魔法を産み出すってことの難しさが解る筈だ。
「叔母様の頃から、魔導師団で研究している魔法も幾つかありますけど……未だに実現してませんわね」
「新しい魔法なんて考えたことも……」
「そうなんだよな。そんな魔法が『使える』って予感に従うだけで使えてる。これが【神仙術】ってスキルの効果が絡んだ結果だと、俺は予想してるんだ……」
「「「「………」」」」
古代竜も教えくれなかった【調律者】の固有スキル。
その効果は自分で探っていくしかないのだが、余りにも都合良く発現する魔術と【ゾーン】の関係……
そこにヒントがあると改めて思った。
お読み頂きありがとうございますm(__)m
拙い作品ですが、皆様のPV、評価、ブックマークをモチベーションとさせて頂き頑張って更新させて頂きます。




