レイスル城の首脳会議
レイスル王国の首脳会議です。
ウォルフ達に巻き込まれ始めた王国上層部のお話になります。
「うちのクラウディアがまた迷惑をおかけしてしまって、ごめんなさいね、スヴェイン卿」
王宮内の会議室。
前魔導師団長のエリー=リーヴァルが穏やかな表情で頭を下げる。
「頭を上げて下さい、エリー様。それに今回のことは勅命と伺っておりますので…」
慌てて、エリーに頭を下げ返すカイルとラルフ。
部屋の中には、国王バルクⅢ世、王太子エリアス、近衛師団長アルフレッド、王国軍事顧問カイル、魔導師団長代理エリー、騎士団第一大隊隊長ラルフ…王国軍事の首脳陣が集まっていた。
「アルフレッドから上申を受けた私がクラウディアに命じたのだ。エリー殿には迷惑をかけるな」
「陛下、勿体無い御言葉を……」
この六名は…
クラウディア魔導師団長が…出奔した後始末のために集まっていた。
エリー前魔導師団長の嘆願により、クラウディアは勅命を奉じてウォルフ達のクランに加入した…という理由をでっち上げるために王国首脳陣が集まったのである…
リーヴァル公爵家は先々代国王の弟の家であり、最上位に位置する貴族家である。
その令嬢が『公務を放り出して出奔』という前代未聞の事態を公にする訳にはいかないと、苦肉の策として『ウォルフ達の国外流出阻止』という理由がでっち上げられた。
この集まりは『口裏合わせ』以外の何物でもない…
表向きにする言葉と現実が混沌とした室内。
『アルフレッド殿下から、ウォルフ様の行き先を教えて頂くことが出来ました。私はウォルフ様のもとへ駆けつけますので、エリー叔母様は引退を取り消して魔導師団長に復帰して下さるよう、お願い申し上げます』
要約すると、こんな感じの書き置きを残してクラウディアは出奔していた…
「身贔屓だと思うけれど…あの娘も普段は優秀って言っても差し支えない魔導師なんですけどねぇ…」
深いため息の後でエリーが続ける。
「幼い頃から、ウォルフ君が絡むと『アホ娘』になってしまうんですよね」
「ウォルフの名前を聞いた瞬間に、私の襟首を締め上げて来ましたからね。クラウディアは…」
アルフレッドがぽつりと呟く。
ウォルフが勘当されたと聞いたクラウディアに詰め寄られたカイルとラルフは黙って俯いている。
それを見たエリーには、スヴェイン道場でも同様なことをやらかした姪の姿が思い浮かぶ。
「不敬罪で処罰されて当たり前の姪のために、皆様に御迷惑をおかけして…本当に申し訳ございません」
改めて、頭を下げるエリーを全員が宥める。
王家の人間からすれば自分の姪、従兄弟といった扱いをしてきた存在であり、スヴェイン家からすれば門下生である。
どちらも自分達の教育不足だったと自分を責めていた…
「いずれ、あの『アホ娘』を連れて皆様にお詫びに伺わせて頂きます。寛大な処置を感謝致します」
エリーの言葉から、彼女の怒りの程を感じた五人の表情が凍りつく。
普段、温厚で怒った顔を見た者がいないエリーは、過去に一度だけ怒りの感情を表に出したことがあった。
それは、彼女の元伴侶である某伯爵に隠し子がいると発覚した時である。
某伯爵の屋敷は半壊し、泣き叫びながら逃げ出す某伯爵の姿が王都中心部の貴族街で目撃された。
その後、某伯爵と離縁し、リーヴァル公爵家に戻ったエリーは、隠し子とその母親に十分な養育費を手当てした。
自身に子供のいなかったエリーは、姪であるクラウディアを可愛がり今日に至る。
彼女は浮気を隠されていたことに怒った訳ではない。
産まれた子供を引き取りもせず、不憫な思いをさせた夫の薄情さに対し、怒りを爆発させたのである。
聖女の様な人格の反面……自身が許容出来ない程の理不尽に対しては容赦が一切ないことを世に知らしめるには十分過ぎる一件であった。
余談ではあるが、某伯爵は領地に引きこもり続けたまま、弟に爵位を譲り食い扶持を貰う生活をしている。
その事件の詳細を知る面々が、エリーの怒りを恐れることは仕方ないといえよう…
それは、王家のトップシークレットであり、アンタッチャブルなのだから…
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