残念令嬢ホリー
お騒がせキャラのホリーが早速暴れます。
「ななっ、何を言ってるんだ、ホリー!!」
「ウォルフ様ったら照れてらっしゃるのですか?」
「何時、お前と婚約したんだ!!」
平然とした表情で、当たり前の様に…とんでもないことを口にするホリーと、慌てて否定する俺…
「あら? こちらの方が気になってらっしゃるのですか?」
魂が抜けきった状態のクリスを見ながらホリーが続ける。
「仕方ありませんわね。私も公爵家の人間です。ウォルフ様が側室をご希望されるなら、寛容な心でこちらの方も受け入れますわ」
「そっ、そうだったんですね…」
「そうじゃない!!」
床に崩れ落ちたクリスと、『ヤレヤレ』といった態度のホリー。
マーク達は呆れた表情で…『触らぬ神に祟り無し』って感じに距離を取っている。
混沌だ……
暫く、沈黙の時間が流れ…
少し落ち着いたクリスにホリーを紹介することにした。
「こいつは、リーヴァル公爵家の二女で魔導師団長のクラウディアなんだけど、幼い頃から『お忍び』でスヴェイン道場の門下生として剣を習ってたんだ」
「『お忍び』ですか?」
「公爵家の人間がスヴェイン伯爵家との繋がりを密にするなんて誤解を、他の貴族達に与えないためですわ」
「まぁ、そういう理由で…『お忍び』用の名前がホリーなんだ」
「そして、私のことを『こいつ』って呼べるのはウォルフ様だけですのよ」
「うっ!」
確かに、公爵家令嬢に対する態度じゃないって自覚はあるけど、幼なじみみたいなもんなんだから仕方ない…よな?
「私が魔導師団のお仕事で忙しくて、道場に顔を出せなかった時に…いきなり家を出られてたんですから」
「勘当されたんだよ……」
「置いてきぼりにされた私の気持ちを解ってらっしゃるのですか?」
「勘当されたことをホリーに許可して貰うっておかしくないか?」
「そういうことを言ってるんじゃありません!」
久々に道場に来たホリーが俺の勘当を知った後、マーク達を含めた門下生は大変な目にあった様だ…
そのマーク達は【リッチ】討伐の後、俺達とパーティーを組んで【王都】を出た。
「マーク達は連れていったのに…私にはお顔さえ見せずに…また、おいていかれましたわ」
「お前は魔導師団の団長に就任って話だっただろ!」
「ウォルフ様がいない世界に意味はありません!」
「お前……少しは、自分の立場ってものを考えろよ。だいたい、団長が居なくて魔導師団は大丈夫なのか?」
「魔導師団は引退された叔母様に代理をお願いして来ましたから大丈夫ですわ」
ダメだ…
ホリーは昔から人の話を聴かないんだった。
「とにかく、私は今度こそウォルフ様と一緒に行きますわ!」
「【バルガナーン大森林】だぞ!」
「ウォルフ様が居ればあの世でも御一緒します!」
「魔導師団長の身に何かあったら、俺の首が飛ぶんだよ!」
「ウォルフ様が危険な処に行くなら、私は治癒魔法で内助の功を果たしてみせますわ!」
「頼むから、話を聞いてくれよ……」
「それは、私の台詞ですわー!!」
叫び、遂には大泣きを始めたホリー。
我儘な性格ではあったが、道理はわきまえてたはずが…
今回は何故こんなに聞き分けがないんだ?
「ちょっ、ちょちょっと、ホリー?」
「うわあああぁぁぁん!!」
「…………」
「ウォルフさん、少し可哀想ですよ…」
「いや、クリス…そうは言っても、連れていく訳にはいかないだろ?」
泣き崩れるホリーの肩を抱いて宥めようとしているクリスだが、ホリーが泣き止む気配はない。
「ウォルフ…これは諦めた方が良いかもしれんぞ?」
「マークまで…」
少し距離を置いた場所でマーク達と小声で相談する。
『魔導師団長の前で…俺の魔術を観せる訳にはいかないだろ!』
『それは…そうだが…』
『国家機密指定間違いなしだぞ?』
『うーん……』
『ウォルフ、ちょっと良いですか?』
『ユリア?』
『あなたはホリーのことを信じることが出来ないんですか?』
『何でそんな話になるんだユリア?』
『私が知ってるホリーは、『我儘』で『残念』で『子供』で『思い込みが激しくて』……』
ユリア…辛辣だな…
『でも、ウォルフの不利になることだけは出来ない娘でしたよ?』
『それは…』
『ホリーがあなたの魔術を見たからといって…あなたが離れてしまう様な選択をすると思いますか?』
『…………』
『ウォルフ、俺もそう思うぜ』
『マーク、悪いんだけど…虫除けの魔道具に使うペンダントを買ってきてくれないか?』
『任せろ!』
マークが部屋から出るのを追いかけてユリアも外に出る。
「クリス、マーク達が帰って来たら…虫除けの魔道具を造るから手伝って貰えるか?」
「はいっ!」
「ホリー……俺が悪かったよ。一緒に行こう?」
一瞬、眼を丸くして俺を見たホリーが大粒の涙を溢す。
大泣きが再開したが、その表情は明らかに違う…
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