クランの遠征
ウォルフはローレンスと古代竜が出会った地を目指すことにする。
「ハッ…ハックション!」
「ウォルフ、いつまでも風呂に入ってるからですよ」
「ユリア、事情は説明しただろ」
「ウォルフさん、今日は無理しない方が…」
昨晩、【創造神グラディアス】様と会話(…念話か?)した後、そのまま風呂で考え込んでしまった俺は風邪をひいた様だ。
劣等感に苛まれて育ったあげく、家から勘当されて平民になった俺には考えられない話なんだから、悩むのも仕方ないと思う。
八階層は昨日ほぼ探索を終えていたので、今日は九階層を探索している。
スカウトのマークと俺が前衛で進むが、マークの奴は風邪を移されたくないと言って俺と距離を置いてる…
「前にワイバーンがいるな……」
「気付かれてるのか?」
危険を察知したマークはスカウトの役割を最優先するので、俺に近づき小声で話す。
「気付かれてはいない」
「ワイバーンか……飛ばれると厄介だから俺が仕留める」
俺はワイバーンの周囲を包み込む様に魔力を展開させた後、収束させていく魔力を冷気に変え周囲ごと凍らせる。
自分に向かう魔力に気付いたワイバーンが翼を広げ飛び立とうとするが、俺の魔術は翼を広げた瞬間にワイバーンを氷漬けにした。
ダンジョンの外で自由に飛ぶワイバーンは、討伐の難易度がかなり高い魔物に分類される。
上空からブレスに近い炎を吐き、その鋭い爪で襲いかかる。
この階層でも天井はかなり高いので、普通のパーティーではかなり苦戦するだろう。
ある程度、攻撃力のある魔法を使えるなら冒険者よりも国の魔導師団を目指すから、冒険者の中では魔法を武器にする魔導師は殆どいない。
剣や弓だけで空の魔物を相手にするのは自殺行為だ…
それだけに、ワイバーンの素材と魔石はかなり高額で取引されている。
「これで旅の資金は大丈夫そうだな」
「そうね、この階層の情報と合わせれば安心だわ」
昨日、風呂から出た俺は3人に提案をしていた。
レイスル王国の北に広がる【バルガナーン大森林】
ローレンスの故郷であり、未開の大森林。
広大な森林はレイスル王国よりも広く、魔物の流入を防ぐための壁が国境に築かれている。
その為、王国の人間がこの大森林に立ち入ることはほぼ無く、この大森林の探索は冒険者が持ち帰る僅かな情報のみだ。
ローレンスの記憶にある大森林の情報も、全域からみればほんの僅かなものでしかない…
その大森林でローレンスは【調停者】である古代竜と出逢ったので…俺の【調律者】という訳の解らない呼び名に対するヒントがあるかもしれないと考えた訳だ。
そのことをく3人に話して、『暫く別行動をとりたい』と伝えた結果、『クランとして大森林の調査に向かう』という話になった。
『俺、個人の都合に皆を巻き込む訳にはいかない』って反論したら…クリスは泣くし、マーク達は怒るし……
俺って周りの人に恵まれているんだと…不覚にも泣きそうになってしまった。
そういった事情で旅に必要な物資を揃えるために【竜の巣】で資金稼ぎをしていたって訳だ。
「まぁ、ウォルフの収納魔法が有れば水、食料なんかを担いでいく苦労はないからなんとかなるだろ」
「そうね。普段の装備だけで探索出来るなら、魔物が出ても対応出来るでしょうから」
「ウォルフさんと一緒じゃ無いと考えられませんよね」
「お前ら…大森林の魔物は【竜の巣】の九階層よりも強いんだぞ。少しは緊張感を持ってくれよ」
「ウォルフはある程度、魔物のことが解ってるんでしょ?」
「全く情報が無い状態なら無謀な話だろうけど、ある程度でも対策が解ってるなら対策は練れるだろ?」
「マーク、スカウトのお前が一番危ないんだぞ」
「大丈夫だろ、即死じゃなければクリスちゃんの回復魔法も有るしな」
確かに、マークのスカウト能力ならいきなり襲われることはないだろう。
軽口を叩いているが、油断って言葉とは無縁な剣の達人でもあるし…
「回復魔法でも治せない怪我は有るんですよ?」
クリスが慌ててるけど、マークが本当に気楽に構えてる訳じゃ無いのは俺もユリアも解っている。
それよりも…
「ユリア…本当に風呂を持っていくつもりか?」
「収納魔法に入るなら、ある程度の快適さは必要だと思うわ。大森林の探索なんだから、心労対策は必要よ?」
「………」
冒険者としての経験はマーク、ユリアの方が長いので考えがあるのは解っているつもりだ…
でも…この風呂に関してはユリアに丸め込まれてる気がする。
わざわざ、鍛冶屋に依頼して家の風呂よりも少し小さめの浴槽を造らせたのも…準備が良すぎるって気がする。
ユリア…風呂好きだしなぁ。
まぁ、クリスも喜んでたので良いか。
【ハルムント】郊外にある俺達の家に転移した後、ギルドに出向いてワイバーンを買い取って貰い、九階層についての報告をする。
旅の準備の仕上げとして、クリスと魔石に魔方陣を付与していく。
いざって時に転移出来る様に多めの魔石を用意しておかないと…
皆の好意に甘えた以上、安全が保証されない事態だけは避けた旅にしたい。
お読み頂きありがとうございますm(__)m
自分の拙い作品をお読み下さる方に感謝しながら頑張っていきたいと思っています。
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