エルフの里
ローレンスの若い頃の話です
里から離れた場所でローレンスは薬草を採取していた。
ポーションの材料、毒消し…幼い頃、産まれ故郷の里で里のダークエルフ達に教えられた薬草だ。
津波の様に押し寄せる魔物の群れが里を呑み込み、幼いローレンスを庇いながら…そして、逃がしながら大人達は魔物に立ち向かった。
里のダークエルフは薬草を使った魔法を生業にしていたこともあり、魔物の群れに抗することも出来ず全滅していった。
壊滅した里に戻ったローレンスは絶望の中で立ち尽くしていたところを、偶然通りかかったエルフに保護された。
ヴェレダと名乗るエルフは自分の里にローレンスを連れ帰り、『里で働くなら置いてやる』と言い、物置として使っていた古く小さな小屋をローレンスに与えた。
ダークエルフであるローレンスは里のエルフ達から奴隷の様に扱われながらも…
故郷の里で学んだ薬草を使った魔法、里を魔物から護るための魔法…
自身を保護してくれたエルフの里の役に立とうと懸命に働き、学んだ。
今日も薬草を集めてポーションを造るつもりだったが、里の方角から荒れ狂う魔力を感じた。
「あ…あああああぁ…」
ローレンスの脳裏に幼い頃、魔物に呑み込まれた里の光景がフラッシュバックする。
薬草を籠ごと放り出したローレンスは里へと駆け戻る。
そこで眼にしたのは怒り狂い里を襲う強大な竜の姿だった。
「やめろー!」
里へ焔を吐く竜の眼前に障壁を張りながら、ローレンスは竜の正面に立つ。
『小賢しい』
竜の強大な魔力は目の前に展開したローレンスの障壁を簡単に破壊する。
ローレンスは更に障壁を多段展開して里のエルフ達が逃げる時間を稼ごうとしていた。
『ぬぅ、邪魔をするか小僧!』
「もう…魔物に里を壊滅させてたまるかー!」
障壁の展開を続けながら叫ぶローレンス。
里のエルフ達の姿が見えなくなり、避難したことを確認したローレンスは魔力の一部を障壁の展開に残しながら炎の槍を形成していく。
『我を魔物と呼ぶか!』
竜の眼が光る。
巨大な炎の槍を竜の首を狙い放つが、竜は平然と炎の槍をブレスで掻き消す。
そのブレスは更に障壁も破壊してローレンスを包み込む。
「くっ!」
咄嗟に自身を包み込む型で障壁を多重に展開させたローレンスだが、ブレスを完全に防ぐことは出来ず、ローレンスの皮膚を焼いた。
『無駄だ!』
『エルフよ、己の愚かさを悔いながら死ぬがよい』
魔力を収束させる竜に向かいローレンスが叫ぶ。
「最上位種である竜が相手でも…理不尽に滅ぼされる云われはない!」
ローレンスも魔力を収束させて周囲に氷の壁を造る。
普段の自身では考えられない規模と厚さの壁が竜の眼前に展開していく。
しかし、竜のブレスは氷の壁をいとも簡単に溶かしローレンスを襲う。
全身に重度の火傷を負いながら吹き飛ぶローレンスだが、魔力は更に高まっていく。
『理不尽だと?』
「我々が何をしたと言うのだ!」
竜の眼が怒りから、興味に変わる。
『ダークエルフか…エルフの里に何故ダークエルフがいる』
「私の故郷は魔物によって滅ぼされた。この里は…そのまま朽ち果てるはずの私を保護してくれた。…私はこの里を故郷と同じようにはしない!」
『……………』
竜は動きを停めローレンスを見詰める。
『貴様の里を滅ぼした魔物の群れは、この里のエルフが造り出したとしたらどうする?』
「なっ、何を…」
『その様子では、何も気付いてない様だな…』
「…………………」
突然の竜の言葉に戸惑い思考が乱れる。
『ヴェレダとかいったか…そのエルフ達は世界樹を護るエルフの里を襲うために魔物を造り出しす研究を続けている』
「…世界樹……実在するのか?…」
『お前の里を襲った魔物も…おそらくヴェレダの造り出した魔物であろう』
「そんな…ことがあるはずない!」
『我は古代竜。神よりこの地の【調停者】の任を受ける者だ。その程度のことが解らぬとでも?』
「なら…何故、私の故郷を救わなかったというのだ!」
『我は【調停者】と言った。世界に影響を及ぼす事柄以外に干渉することはない』
「ならば、ヴェレダ達は世界に干渉する存在だとでも言うのか?」
『世界樹を護るは我々に選ばれし一族。それを害する存在は、この世界を揺るがす存在である』
「そんな……」
「ヴェ…ヴェレダ~!!!」
膝から崩れ落ちたローレンスは地面に手をつきながら怒りに震える。
「古代竜よ!」
「ヴェレダ達は私が…この手で殺す!」
『我に干渉するなと申すか?』
「私が…必ず奴らを殲滅する!」
古代竜は暫く考えた後で答える。
『貴様が殲滅するならば、殲滅してみせるがよい』
「………」
『但し…ヴェレダ達の行いが停まらぬ様なら、我が奴らを滅ぼす。その時は貴様も同様の運命になると知れ!』
「私の邪魔をするならば…古代竜でも殲滅する!」
『我を殲滅?』
『フッ…ワッハッハッハ。面白い…』
古代竜は笑った後で羽ばたき空へ飛ぶ。
『世界樹に影響のない限り、ヴェレダ達は放って置いてやる。貴様が始末して見せよ』
愉快そうに笑う古代竜が去ったエルフの里に残ったのは、怒りに震えるローレンスただ一人の姿だった。
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