ローレンスの魔術
アルフレッドの誘いを断ったウォルフは、その真意をパーティーメンバーに告げる
「お前なあ、生きた心地がしなかったぞ!」
「殿下だから不問にしてくれましたけど、謀叛って捉えられてもおかしくないことですよ!」
アルフレッド殿下達が帰った後、マークとユリアから説教タイムが始まってしまった。
「魔導師がどういう戦いをするのか……1番分かり易い方法だと思ったんだけど?」
「「「常識を考えろ!」」」
クリスまで参戦してる……
『殿下に向けてはない』って言い訳しようと思ったけど、3人の剣幕を見て止めておいた。
3人が落ち着いた頃を見計らって提案する。
「基本的にダンジョンの中の戦いが多かったから機会がなかったけど、ローレンスの魔術は本来違う型で使うものなんだ。見せておきたいんだけど?」
3人の同意を得たので【王都】から出て、旅の途中で見つけていた広い荒野に転移する。
「前に話した様に、ローレンスは殲滅戦を想定した魔術を研究してたんだ」
「広範囲の魔術ってことか?」
「まぁ、見せるよ」
俺は荒野に向かって手をかざすして魔力を操作する。
まず、広範囲に拡がる黒い炎。
続けて、同じように拡がる氷の世界。
「「「なっ、ななななな……」」」
最後に荒野の上空に人の頭くらいの黒い球状の空間を造り出す。
空間は周りの空気、荒野の土、周囲のあらゆる物を凄まじい勢いで吸い込んでいく。
そこに最初に見せた炎を放つと、その炎も拡がることなく吸い込まれていく。
「「「………」」」
3人はポカンと口を開いたまま固まっている。
「軍に組み込まれる訳にはいかない理由はわかってくれたかな?」
無言でコクコクと頷く3人。
「こんな力がバレたら…必ず侵略戦争を考える人間が出てくると思う。普通の魔導師団と比べたら、数十倍の戦果があっという間に実現するんだから……」
「洒落にならねぇ」
「ウォルフ、あなたは……」
「こんな……」
マーク達も俺の真意を理解してくれたみたいだ…
本来スヴェイン伯爵家縁の人間なら、王国の戦力になることを責務と考えるのが自然なので、俺の断り方についてマークとユリアは不自然なものを感じていたはずだ。
俺、個人の価値観の問題ではなく、産まれから来る責務の問題なのだから…
「アルフレッド殿下が近衛師団長ってことを考えると、俺の参入は…後継者争いの基になる可能性もある。最悪な場合、殿下が謀叛の疑いを着せれる可能性すら……ね」
「利害で考えると、王国にとって害の方が大きそうだな」
マークは現在軍に属してはいないが、2年間軍に所属した経験を持っている。
スヴェインの門弟でも期待される実力から、徴兵の対象として父からの命令で近衛師団に所属していた。
その縁でアルフレッド殿下と面識が有り、今回の話を持ち掛けられた様だ。
「アルフレッド殿下自身は、王太子エリアス殿下の近衛として国を護ることを望んでいらっしゃる。それは、近衛に在籍した人間なら誰でも知っていることだが…貴族達の利権争いに巻き込まれると面倒な事態になりかねんな」
「ってことで断ったんだ」
苦笑いしながらマークに答える。
「ウォルフ、お前はそんなに思慮深い性格だったか?」
「ローレンスの知識もあるんだから、それなりにはね」
「魔術って他の人間にも使えるのか?」
「基本的には【魔力操作】を徹底的に鍛え上げることで可能だと思うけど、スキルを持ったローレンスが千年近く鍛練して可能になったものだから……実質不可能だと思うよ」
「お前の身体はエルフになってるのか?」
「いや、身体は俺の身体のままで、ローレンスの魂が融合することで知識と記憶、スキルを取り入れたって感じかな」
「記憶が一緒になって人格は大丈夫なのか?」
「ローレンスの人格は消滅したからね……たぶん?」
「「「たぶん?」」」」
「前例が無いから解らないよ!」
「まあねぇ……」
「ここまでは、子供のころからのウォルフと違い無いですからね」
「ウォルフさんの子供の頃?」
クリスが変な処に食い付いている…
性格は変わっていないと思うが、ローレンスの記憶がある以上、その恨みの根元であるエルフが目の前に現れるとどうなるか解らない。
そこが心配だが、解らないことで悩んでいても仕方ない。
お読み頂きありがとうございますm(__)m
増えるPVを見るたびにやる気が湧いて来ます。
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