新生パーティー
近衛師団長アルフレッドとの会見を終えたウォルフは、クリスと共に【ハルムント】へ帰還する。
後に語られることになる新たな仲間と共に…
「今度の騒動ではお前に助けられたのかな?」
「たまたまですよ。これだけの討伐隊だったんですから」
父と2人でスヴェイン家の幕舎で向かい合う。
長い沈黙の後、父から出た言葉だった。
「現場にいたマークの報告を聴く限り、そんな甘い状況だったとは思えないが?」
「あれから【竜の巣】で鍛練を続けてましたから……」
「何があった? この短期間でそこまで腕が上がるなんてことは普通では有り得んぞ?」
「たまたま出会ったエルフの魔導師に【魔力操作】について訓示を貰えただけです」
「エルフ? そうか……」
再び、父は沈黙する。
空気が重い……
「世間を経験させてから、お前を家に戻そうと思っていたが、今それを言うと、今度の功績をスヴェイン家に……と受け取られかねんな。お前はこの後どうするつもりだ?」
「【ハルムント】に戻って【竜の巣】の深層まで探索しようと思ってます。冒険者ランクも上げておきたいですし」
「……世間知らずは変わってないな。今度の功績から考えて、王家がお前を手放すと思うか?」
「その辺りは、父上が上手くやって頂けると考えてます」
ヤバい……国家権力に縛られるなんてゴメンだ……
「アルフレッド殿下から、お前を近衛師団に入れたいと要請されてるんだがな?」
「父上……俺の性格はご存知でしょ?」
「天の邪鬼は変わらんか……」
「【リッチ】との戦いで魔法と剣に新しい可能性を感じたんですよ。実戦の中でそれを研鑽したいので……」
「ほう、剣よりも魔導師ではなかったのか?」
「それは父上の誤解ですよ。魔導師が剣も一流に使える…魔導師の精密な【魔力操作】を剣士が使う……それが目標でしたよ?」
「そうか、殿下の要請は丁寧にお断りさせて頂いておこう。勘当はしておいたままの方が都合が良いな」
「勝手に母上の姓を使ってますので、母上に宜しくお伝えください」
「全く……【王都】に戻った時には顔を出せ。それが殿下の要請をお断りする条件だ」
「分かりました」
幕舎を出るとクリスとマークが心配そうな表情で待っていた。
「ウォルフさん、お家に帰られるんですか?」
「いや? ギルドで討伐隊終了の手続きをしたら【ハルムント】に戻るつもりだけど?」
「「本当ですか?」」
2人が同時に声を上げるが……嬉しそうなクリスの声と、驚いたマークの声……意味は正反対なんだろう。
「若! 今度の功績なら騎士団や…上手くいけば近衛も有り得るんですよ!」
「マーク、俺はそんなのよりも自由が良いんだけど」
「ハァ……変わりませんね」
呆れるマークは放って置いて笑顔のクリスとギルドに向かう。
面倒なことになる前に、さっさと俺達の拠点【ハルムント】に帰ことにした。
「何でマーク達が一緒にいるんだ?」
「若、自分もA級冒険者ですよ?【竜の巣】の深層を探索なんて聞いたら、ご一緒したいと思いますよ」
「私も普段マークと組んで行動してますから……」
【ハルムント】へ帰る俺達にマークとユリアが加わっている。
ユリアもマークと同じく【スヴェイン家】の門弟でA級冒険者だ。
武器は剣も使えるが、弓を使った後衛からの援護を得意としている。スカウトのマークとは幼なじみで息の合った連携をとる。
「だから!『若』はヤ・メ・ロ!」
「いきなりウォルフさんなんて呼ぶのは難しいですよ」
「『さん』も付けるな!」
「師範のご子息で、氾濫を止めた英雄を呼び捨てなんてムリですよ」
「頼むから……年上でA級冒険者のお前らが敬語を使ってるだけで、俺の素性が疑われるだろ!」
「誇らしい家じゃないですか」
「オ・レ・は『ウォルフ=マークス』だ。『スヴェイン』じゃない!」
物心ついた時から、既に門弟として道場にいたマーク達は最初から俺のことを『若』と呼んでいた。今からそれを変えるのに違和感があるのは分かるけど…
「冒険者としては2人の方が先輩なんだから、そうしてくれ」
「分かりましたよ……」
「……本当は、お前らお目付け役じゃないのか?」
マーク、眼をそらすなよ……
「ウォルフ、マークを責めないでください」
「責めてる訳じゃないよ。次期師範代って言われてるマークを外に出して将来に係わったら申し訳ないんだよ」
「勘違いされてませんか?確かに師範から『愚息のことを頼めるか?』と言われましたけど、あの【リッチ】を討伐した若の成長を見て、冒険者の血が騒がないなら冒険者ではないですよ」
マークが真顔になって答える。
その横でユリアが頷いている。
「クリスちゃんも、E級の実力ではありませんね。聞けば若に鍛練の方法を教えて貰ったそうじゃないですか?」
「マークも知ってるだろ? 方法を示すことは出来るけど、そこから先は本人の努力しか無い。クリスはクリス自身の努力で強くなってるだけだよ」
「自分も、もっと強くなれる可能性を求めたから、若と一緒に行きたいと思ったんですよ。若! お願いします!」
「……とにかく『若』を止めることが条件だよ」
「ヨッシャー!」
これからは4人のパーティーか……賑やかになるな。
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