討伐完了
【リッチ】を討伐したウォルフ。
その功は彼の望まぬ方向へと…
魔物の群れを殲滅しながら、ダンジョンの出口を目指す。
『ローレンスの知識が有ったとはいっても……初めて使う魔法があんなにもイメージ通りに発現するのか?』
今、使っている魔法もイメージ通りに使えている……
いや、表現的には『イメージがそのまま魔法の効果になっている』の方が正しいのか?
『【神仙術】の効果か?』
炎の魔法を付与した剣でグール数体を薙ぎ払いながら進むと、前方から戦闘の気配を感じた。
「グールの後方にいる! 挟み撃ちにするぞ!」
この位置で強力な魔法を撃ち込まれると、俺まで捲き込まれるので、前方にいる冒険者に声をかける。
「ウォルフさん!」
「クリスか?」
どうやら前方で戦闘中の集団の中にクリスもいるみたいだ。
グールを殲滅して冒険者達と合流する。
「ウォルフさん、心配したんですよ!」
「マークは?」
クリスの後ろからマークが顔を出す。
何で笑ってるんだ?
「若が奥に突っ込んだって聞いたら……この調子ですよ」
「そっ、それは!」
クリスがバツの悪そうな表情になる。
「長期戦になるほど不利になるって思ったから」
「だからって1人で行くなんて……」
「まあ、【リッチ】も倒したから氾濫は収まると思うよ」
「若! それは本当ですか?」
後ろでニヤニヤしていたマークの表情が一変する。
「こんな状況で嘘の報告すると思うか?」
「直ぐに、本部に通達して来ます」
マークが報告のために走り去って行く。
「クリス、暫く魔物は出て来ないだろうから、負傷者の治療を今の内に済ませよう」
「あっ、はい!」
クリスと2人で冒険者、騎士団の負傷者を回復魔法で治療して廻る。ポーションでは回復が間に合わない重症者が対象だ。
暫くは最前線で魔物を討伐しながら様子を伺っていたが、氾濫は収まったらしく普段の【死者の迷宮】って感じだ。
「若! 本部から出頭要請です」
「やっぱり……だよねぇ」
「若? どうして嫌そうな顔してるんですか?」
「絶対……父や兄さんがいるだろ?」
「あぁ……いらっしゃいましたね」
勘当した息子が【リッチ】を討伐した……
お互いに気まずいよなぁ……
あぁ、逃げ出したい……
事態の終息の確認が必要だから逃げ出す訳にもいかないよなぁ。
ある意味【リッチ】との戦いよりも嫌だ……
討伐隊本部のテント前で声を出す。
「ウォルフ=マークス、出頭要請により出頭いたしました!」
「君が【リッチ】を討伐したと報告を受けたが、間違いないか?」
幕内に並ぶお偉いさん方、その中で1人だけ若い騎士風の男から声をかけられた。
「これが【リッチ】の魔石と身につけていた指輪です」
ポケットから取り出してテーブルに置く。
「ふむ……鑑定師に鑑定をさせよう。その間にどの様に討伐したか聞かせてくれるか?」
俺は自分の剣を見せて特殊な剣だと説明する。
父が知っているので【ゾーン】のスキルの効果……その効果が有る間は無詠唱で魔法を発現させることが出来るってことにしておく。
「そのスキルは今は使えないのか?」
「訓練次第で将来は可能かもしれませんが、現状は余程の事態に直面しないと難しいです」
「なら、そのスキルが発現しなかったら死んでた可能性も有ったのではないか?」
「今になって考えると、その通りですね。あの状況で無限に湧いてくる魔物を止める方法はこれしかない……と直感的に思ったので突貫しました」
「確かに、君の言う通り厳しい状況ではあったな……」
そこまで話した時、鑑定師の鑑定結果を持って衛兵が戻って来た。
「ふむ……鑑定の結果、【リッチ】の魔石で間違いないそうだ」
「おお! 殿下、討伐完了ですな!」
「流石殿下ですな!」
周囲の人達が祝辞を述べている……殿下?
「私が討伐した訳ではない。こちらにいるウォルフをはじめ皆の功績である。戦った者達を称えよ」
「あれが第2王子のアルフレッド殿下だ」
沸き上がる幕内の中、いつの間にか隣に兄さん達がいた。
「あの方がアルフレッド殿下……ですか」
「それよりもウォルフ、いつの間にそこまで腕を上げたんだ?」
「お前が勘当された後、門弟達にも探して貰ってたんだぞ。今まで何処に居た?」
「【ハルムント】で冒険者をしてましたよ」
「ギルドでレイラから登録名を変えたのは聞いてたが、【ハルムント】を拠点にしてたのか。今度の功績があれば父上も許してくれるだろう……戻って来い」
「……冒険者として世界を周りたいんだ」
父との確執を心配してくれていた兄達は、俺が父を避けていると思っているみたいだ。
「俺は家を出てから……世間知らずだったと思い知ったんだ。剣も魔法も極めてみたい。その為に、冒険者を続けたいんだ」
「その辺も父上と話し合いをしてみろ」
「父上も高弟の方達に……こっそりとお前の動向を調べさせていたんだぞ。本音は心配してたんだな」
心配してくれてたのはありがたいけど……
本音で冒険者をやりたいんだけど……
お読み頂きありがとうございますm(__)m
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