因縁のダンジョンへの突入
ローレンスと出会った【死者の迷宮】で興る氾濫を防ぐため、ウォルフは【死者の迷宮】に再び踏み込む。
300年程前に『死霊遣い』と呼ばれた高位魔導師がいた。
魔導師は長年研究を続けた魔法を使って、自身の身体を不死の存在にしようとしたが……
結果的に、アンデッドの身体に魂が残った状態で不老不死となった。
アンデッドの身体……つまり、腐り続ける自身の身体を魔力で固定することで崩れ落ちない様にしている。
自我と膨大な魔力を持つアンデッド、それが【リッチ】だ。
余りに危険な存在として国家から討伐対象とされた後、姿を消した。
その後、世間からは忘れられた存在となっていたが、国家の脅威として騎士団、魔法師団、国防に携わる貴族の間では警戒され続けていた。
『伝説の高位魔導師で不死の身体を持つ』
とはいえ、アンデッドである以上は討伐の方法が無い訳では無かったんだろう。
300年経って【王都】近郊のダンジョンに現れたということは、討伐されない根拠を持って、復讐の為に現れた…と考えるべきかな。
ギルドが討伐隊参加者に用意した宿でクリスと話をする。
「アンデッドの巣みたいな状態になってるみたいだけど……」
「アンデッドですか。聖水を持っていかないといけませんね」
「聖水はギルドが大量に用意してくれると思う。ホルダーに入れておけば戦闘の邪魔にはならないし……そこは問題無いんだけど」
「何か問題が?」
「際限無く湧いてくるアンデッドとの消耗戦になるはずなんだ」
「そう……ですね」
想像したクリスは不安そうな表情になる。
「状況によっては、クリス1人で撤退してもらいたい」
切り出し難い…けど、大事なことを伝える。
「1人って、ウォルフさんはどうするんですか?」
「俺は元々【王都】の人間で討伐隊にも色々ツテがある。周りと連携して殿とかもすることになる」
「なら、一緒に残ります」
「駄目だ。俺は知った仲だから連携出来るけど、クリスは騎士団や魔導師師団といきなり連携は厳しいだろ?」
「なんとかします!」
「周りの人間の生命も懸かってることだ。気持ちの問題じゃないことは解ってくれるだろう?」
「……」
納得いかない気持ちは解ってる。
でも、いざって時には……アンデッド以上の再生力を持つ俺以外に【リッチ】と正面から対峙出来る人間はいないと思う。
「あくまでも、いざって時の話だから。厳しい戦いになるはずだから、万全の準備をしよう」
「はい」
初めてローレンスの魔術と知識に感謝する様な状況になるかもしれない。
この記憶があれば……
高位魔導師の【リッチ】と同等に戦える可能性がある。
300年以上研鑽を積んだ化物が相手だけど、2000年以上研鑽を積んだローレンスの力なら大丈夫……
と思いたい……
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「どれだけ湧いてくるんだ!」
「武器、体力の消耗したヤツは退がれ!」
「騎士団、あのスケルトンの群れに突っ込むぞ、魔導師団魔法で援護しろ!」
想像していた以上の乱戦になっている。
ダンジョンの1階層で騎士団、魔導師団、冒険者の討伐隊が足止めされる状況になりつつある。
それなりの広さのダンジョンだけど、それは冒険者個々のパーティーレベルの話だ。これだけの軍団単位で動くには狭すぎる。
「クリス、俺が突っ込むからグールが復活しない様に聖水を頼む」
「聖水の残りが少なくなってますよ?」
「わかった。この戦線が落ち着いたら1度退こう」
右手で剣を振るいながら、左手で発動した炎の魔術をグールの群れに放つ。
腐った死体なので体内にガスも発生してるから、グール相手には炎系の魔法は有効だ。
俺は詠唱無く魔法を発動させるから乱戦状態でも隙が出来ない。普通の魔導師なら後方から支援で魔法を使うものだけど、乱戦の真っ只中から魔法を連発する俺の周りにはかなりの数のアンデッドが倒れている。
普段なら、ダンジョンがこれらを吸収して魔力に変えるはずだけど、現在は吸収される前に復活して襲いかかってくる。
『濃密な魔力がダンジョンに満ちている。いや、瘴気か…』
復活する前に聖水を振り掛けて浄化することで、アンデッドの復活は防ぐことが出来る。
しかし、このペースでは聖水も間に合いそうにない。
氾濫は既に始まっている。
たまたま、先に討伐隊がダンジョンに入ったことでダンジョンの外にアンデッドが溢れていないだけだ。
『どうする…このままじゃ決定打が無いまま消耗していく……やっぱり【リッチ】倒さないとこちらが押し負ける』
ムリは承知で【リッチ】の所まで突っ込むしか無いか…
「クリス、1回退いて聖水を補充して来て!」
「ウォルフさんは?」
「まだ、大丈夫。ここで食い止めるから、その間に聖水の追加を頼む」
「ムリはしないでくださいね。直ぐに戻って来ます」
これでクリスは大丈夫
んっ?……あれはマークか?
「マーク!」
「若、ご無事で?」
「頼みがある。聖水を取りに行ったクリスが戻って来たら、援護してやって欲しい」
「若は?」
「ちょっと押してみる」
「なら自分も」
「いや、無理はしないから、クリスの援護を頼む!」
マークならクリスを護ってくれるだろう。
通路を塞ぐグールの群れに炎の魔術を叩き込み、【身体強化】を使い速度を上げて突っ込んで行く。
『周りに気を使わずに魔術も使えるな……遠慮なく行くか』
【魔力探索】で周囲の状況を把握した俺は最短コースを疾駆していく。
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