王都への帰還
王都の異変を耳にしたウォルフは王都への帰還を決意する。
ギルドに依頼を確認しに行くと、雰囲気が普段と違って殺気だった空気になっている。
「何かあったんでしょうか……」
「受付で聞いてみよう」
クリスと受付で確認をすると【王都】近くのダンジョン【死者の迷宮】で氾濫が発生する兆候が有るって話だった。
『【死者の迷宮】って……ローレンスは氾濫には関係無い筈だし、そんな兆候はなかった筈だ……』
ダンジョンは魔力の影響で成長するが、地下に存在する【龍脈】の影響で数百年に1度くらいの頻度で氾濫を興すことがある。
氾濫は【龍脈】の魔力が不安定になることで、集まり過ぎた魔力が大量の魔物を産み出してダンジョンの外へ溢れ出す現象だ。
厄介なのは、普段よりも濃密な魔力が上位の魔物を産み出すことで、討伐もかなり厳しいものになる。
【王都】の近くなので騎士団、魔法師団も駆り出される筈だけど、犠牲者は少なくないことになる。
冒険者ギルドも協力が義務化されているので、討伐参加者を緊急募集しているってことだった。
各個人で【王都】のギルドに向かい、現地で討伐隊に登録、その指示で討伐に協力して下さい……
要約するとそんな感じだ。
「ウォルフさん、【王都】に行きましょう!」
「そうだね、行こう」
クリスと宿に帰り旅支度をし、家賃も3ヶ月分先払いしておく。
何時死ぬか判らない冒険者の部屋は家賃分迄は保証されているが、それを超えた時には大家さんが遺品としてギルドに預けるか、処分するのが一般的だ。
「【王都】に行くんですね。無事のお戻りを祈ってます」
「はい、行ってきます」
「氾濫が長引いてるなら、多少は融通しますから安心して下さい」
『大家さん……本当に人が善いな』
街を出た後はクリスと【身体強化】を使って走る。
【王都】まで歩くと1週間だけど、今のクリスなら2日で到着のペースでも大丈夫だろう。
「氾濫の前はどんな魔物が出てたんですか?」
「スケルトンやグールが主だったね」
「スケルトンの上位……スケルトン騎士くらいは出て来そうですね」
「問題は数だな、数は圧倒的な力だから……」
「騎士団の方達もいれば大丈夫ですよね?」
「大規模な戦いは経験が必要だから、騎士団の人達が訓練の成果をどこまで出してくれるか……次第だね」
「ウォルフさんも集団戦は初めてですよね?」
「冒険者は適材適所にまわされる筈だから、指揮者次第かな」
走り続けながら会話する。
クリスも本当に強くなってきたなぁ……
「レイラ、久しぶり。討伐隊の登録はここで大丈夫?」
「ウォルフさん、帰って来てくれたんですね」
「そりゃ帰って来るよ。氾濫の規模次第じゃ【王都】にも被害が出るかもしれないんだから」
「お家の方に参加しなくて大丈夫ですか?」
「……大丈夫。勘当した息子を頼りにする人じゃないよ」
【王都】のギルドは久しぶりだな。
「あのう、も登録したいんですけど……」
クリスが俺のローブを引っ張りながら小声で話しかけてくる。
「あっレイラ、今パーティーを組んでるクリス。ランクはE級だけど、C級と同じくらいで考えてくれる?」
「はじめまして、クリスです」
「あっ、私ギルド職員のレイラです。失礼しました、直ぐに登録させて頂きますね」
これで登録は終わった。後は情報収集かな?
と思ってギルドを出ようとすると声をかけられた。
「若! ですよね?」
振り向くと【スヴェイン家】の門弟で次期師範代と目されている【マーク=フレッド】がいた。
また面倒なヤツに見つかったな……
「若、何で嫌そうな顔してるんですか?」
「その『若』はヤメてくれない?……勘当されたのは知ってるでしょ?」
「自分にとっては若ですよ」
「面倒になるからヤメてって言ってるんだよ…ウォルフでいいから……とにかく『若』はダメ!」
「じゃあ、ウォルフさん?……【王都】を出たって聞いてましたけど、氾濫に備えて帰って来てくれたんですね」
「うん、まあ……ね」
「やっぱり若は変わりませんね……おっと」
「さん付けもしなくていいから。冒険者としてはマークの方が先輩なんだから」
マークは23才の若手だけどS級も狙えるA級冒険者だ。
【隠密】と【魔法耐性】のスキルを持っていることから、パーティーのスカウトとしても……【スヴェイン】道場の有望株としても将来を期待されている。
そして、性格は悔しいけど……かなり良い。
思い上がることのない性格で、人を惹き付ける。
俺からすると、『お前、少しは欠点らしい欠点ないのか……』って思ってしまう……コンプレックスの対象だ。
「マーク、俺は冒険者ギルドから参戦するつもりなんだけど、今回の氾濫の予兆って何だったか知らない?」
「……やっぱりギルドからですか。残念ですけど仕方ないですね。予兆は……他言しないってことでお願いします」
「……わかった」
「スケルトン騎士の中にあり得ない強さの個体が混じってるって報告があります……」
「それって【リッチ】がいる可能性が?」
「その通りです。【リッチ】の存在はまだ確認されてませんが…最悪の場合、その可能性があります……」
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