一宿一飯の恩義
「タケルです。刀士で体術も少々……」
「カガミと申します。陰陽師としてシズカ様にお仕えしています」
「コダマです。カガミ姉様と同じく陰陽師としてお仕えさせて頂いてます」
「カナデ……刀士よ……」
改めて、シズカのパーティーと自己紹介をしていく。
陰陽師ってのは、俺達の国の魔導師と同じ役割の人間らしいが、それに占い師の役割を足した感じらしい。
シズカ本人はグラノスが【刀神】って呼んでた通り、ダナトス皇国随一の刀の遣い手ということだ。
シズカは皇国の有力領主の娘ということで、護衛として付けられたのがこの四人だそうだ。
精悍な見た目のタケル、しっかり者って感じのカガミとのんびり者って感じのコダマ姉妹、口数が少なそうでクールな印象のカナデ……が初対面での印象だ。
先程のオーガ討伐で俺達の実力を認めてくれた様で、硬化していた雰囲気も柔いてくれたみたいだ。
俺達は転移を使っているし、異空間収納もあるからバルガナーン大森林でも不自由な思いをしていないが、シズカ達はかなり苦労していたみたいだった。
「物質の補給は大丈夫なのか?」
「それは……正直厳しい状態ですね」
「俺達と同行するなら、レイスル王国内に入ることも出来るけど、冒険者登録をした方が良いと思う」
「私達は……この森林地帯に直接入ったから、長城から入国すれば密入国扱いになってしまうと思うの……」
女神様からの神託に従って船で大陸に渡る予定だったが、嵐で船が座礁してしまい小舟で海を渡ったそうだ。
よく無事に辿り着けたものだ……
辿り着いた陸地が岸壁だったが、他に移動するよりも安全と判断して岸壁を登った先がバルガナーン大森林だったということらしい。
つまり、入国許可も大森林への探索許可もない状態であるが、女神様の神託の内容を話す訳にはいかないと判断した結果、長城から入国することが出来ない状態となっていたそうだ。
「そこは問題ない。冒険者登録をすれば国境については余程の事情がなければ越えられるし、何よりも冒険者はお互いの素性を詮索しないからな」
「それは入国出来たらでしょう。入国することが難しいから困っているのよ!」
「で、俺達と同行するのか?」
「……他に方法はないわね」
パーティーのリーダーであるシズカの了承を取り付けた俺は、全員を集めて転移を発動する。
目の前の光景が、森林地帯から部屋の中へと切り替わったことにシズカとその仲間は呆然とする。
「此処は、俺達の拠点だ。とりあえず風呂の用意をして来るからクリスに案内して貰ってリビングで待っててくれ」
「「「「「……」」」」」
「みっ、皆さんこちらへどうぞ」
案内するクリスの後ろを放心状態で歩く五人。
ホリーと眼が合うと黒い笑いを浮かべている……
マークとユリアも似たような表情だな……
案内をクリスに頼んで正解だったよ。
本来なら、転移は俺達以外には秘密だが、同じ【調律者】ってことだし大丈夫だろう。
グラノスと同じことが出来るってことを知ってくれてた方が、敵対する確率も減ると思うし。
「まさか、お風呂に入ることが出来るなんて……」
風呂上がりのコダマが嬉しそうな表情で呟く。
シズカとカナデ、その後でカガミとコダマ、現在はタケルが風呂に入っている。
シズカ、カガミ、タケルが二十歳前後、コダマは十代後半、カナデが二十代半ばといった年齢層に見える。
パーティーの年齢層としては俺達よりも上くらいだが、若さと比例しない戦闘力は【調律者】ならではだろう。
「夕食はオークのステーキですけど、大丈夫ですか?」
クリスが調理を始める前に確認する。
地域によっては禁忌とされる食材も存在するので、一応確認した上で調理を始めるつもりなのだろう。
この辺りの気遣いがクリスらしい。
「森林地帯で食べられる物は何でも……って感じでしたので、どの様な料理でもありがたいです」
シズカが答えるが、みんな遠い眼をしている辺りに苦労の跡が伺えるなあ……
オークのステーキをメインに、サラダ、スープ、パンの夕食だったが、シズカ達五人は上品ではあるが……凄まじい食欲で追加の料理をクリスとユリアが作っていた。
「私の国では『一宿一飯の恩義』という言葉があります。この度の御恩は決して忘れません!」
「いや、夕食くらいで大袈裟な……」
「困窮している時に手を差し伸べて下さる方こそが、信頼に足る方だと思っていますので」
シズカと一緒にパーティー全員が頭を下げてくる。
出逢って直ぐに戦闘態勢をとった人間と同一人物とは思えない変わりようだ……
っていうか、夕食だけでこれだけ感謝してくれるなんて……かなりチョロいな。
「冒険者登録して生活拠点を確保出来るまでは、此処で生活して貰って大丈夫だから」
「重ね重ね、申し訳ないです」
そこまで頭を下げられると調子が狂うが……
案外、世間知らずな印象を受ける五人との共同生活が始まった。
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