東の皇国
話を終えたグラノスが俺達を元の場所へと転送した。
俺とシズカが転移したことで、お互いの仲間同士は睨み合いの状態で事態を把握することになっていた。
心配していた事態ではなかったことに、俺とシズカは一安心ってところだ。
「……ってことだった」
それぞれの仲間にグラノスの話を説明していく。
「ウォルフさん以外にも【調律者】ですか?」
「【刀神】ってスキルは【剣聖】と同等なのか……」
「なら、【大賢者】本来の力がある分、ウォルフ様の方が強いってことですわね」
「一概に言えないでしょうが……魔力増幅炉のことを考えれば、パーティーの力は上になるでしょうね」
別にシズカ達と戦う訳じゃないんだけど?
どちらが上なんて話じゃない様な気がするんだが……
【刀神】ってスキルに対して対抗意識が出ているのか?
「ウォルフ殿、少しお話させて頂いても?」
一人、歩み寄って来たシズカが穏やかな口調で告げる。
「まず、私達の無作法を詫びさせて貰います」
シズカが俺以外の仲間にも頭を下げてくれたことで、マーク達の警戒心も緩んでくれたようだ。
「神竜様が仰っていたウォルフ殿の力……それを見せて頂くことは出来ませんでしょうか?」
「俺の力ですか?」
「先程、対峙した時に感じた圧力で、皆さんの力が私達のパーティーを超えることは理解しています。しかし、私達が神竜様の下へ行っていた間にうちの者達が感じた圧力は、自分達と互角か、僅かに上くらいだったと申しています」
確かに、シズカのパーティーも達人級の集まりなのは見ただけで判る。
それぞれが放つ気がそれを物語っているのだ。
それだけに、マーク達の実力も量ることが出来るんだろう。
剣に関しては間違いないんだろうけど、ホリーやクリスは魔法も使うから実際はどうだろうな……
「御存知ないかもしれませんが、俺達は【剣聖】ガーランド=スヴェインの流派に属した人間です。剣についてはレイスル王国内でも有数と言って差し支えない仲間です」
「【剣聖】スヴェイン卿の御名前は存じ上げています。皆さんはその流派だったのですね……うちの者達が、自分達よりも上と申したのも納得です」
スヴェインの名前はそんなに広まっているのか?
「今更ですが、私はこの大陸の東にある島国【ダナトス皇国】の者です。神託を受けた私は、帝の命で女神様からの御依頼を果たすために海を渡りました」
「ダナトス皇国の方でしたか」
ダナトス皇国は俺達の住む大陸の東にある島国だ。
海を隔てた地域であるため、大陸とは違った独自の文化で栄えた国だと聞いている。
違いは文化だけではなく、剣の代わりに刀と呼ばれる片刃の武器を使うそうだが、彼女が持つ武器がそれだろう。
「力を見せるとは……どのように?」
「剣については神竜様が仰っていた通りなのでしょう。その神竜様から想定外と言われるお力を拝見させて頂ければと思いまして」
彼女の仲間を納得させるためなのか?
それならばと、俺は魔力探索で周囲の魔物を探すと期待通りにオーガが二匹近くにいる。
「オーガがあちらにいますので、それを相手に」
シズカ達を伴ってオーガのいる場所へと向かう。
彼女の仲間は警戒心が残っているのが伝わって来るが、それを押さえるためにシズカ本人が俺の横を歩く。
後ろからホリーの威圧を感じるが……
『ウォルフ様に近付くのなら……』
何やら、不気味な声が聞こえる気がするが無視だ。
『邪魔者には……死を』
ホリー……心の声がダダ洩れだ。
頼むから、面倒は起こさないでくれよ?
せっかく穏便に終わりそうなんだから頼むよ……
俺達に気付いたオーガは問答無用に襲って来た。
しかし、距離が縮まる間を与えずに俺は魔術を発動させる。
目の前に展開させた魔方陣から、収束された太陽光が圧倒的な熱量でオーガを包み込んだ。
周辺の樹木ごと消し飛んだオーガ達……
それを見たシズカ達は眼を丸くしたままで声もない。
ホリーが全員を保護するために結界を展開してくれていたから、熱い思いはしていなかったと思うが……
「流石ホリーだ。阿吽の呼吸だったな」
「当然ですわ!」
打ち合わせ無しで結界を展開してくれたのは、流石としか言いようがないよな。
ホリーも実力を示したことで満足してくれたようだ。
「なっ……」
「これって……魔法ですよね?」
「無詠唱で!?」
「なんて威力……」
シズカの仲間は驚きを隠せない状態だな。
「ウォルフ殿の魔法もですが……当たり前の様に結界で熱量を遮断する連携が信じられませんね……」
シズカは更に踏み込んで状況を把握しているみたいだ。
仲間の実力に驚いてくれるのは、俺の魔術に驚かれるよりも嬉しい気分になる。
ローレンスっていう反則技を持つ俺と違って、仲間の実力は本人の努力が全てなのだから……
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