相互協力
ハルムントの冒険者ギルドへシズカ達を案内する。
身元保証人っていうか、俺達が紹介すれば問題無く登録して貰えることを期待してだ。
「はい、この書類で登録は完了しました。それでは、あちらの部屋で研修を受けて頂きます」
特に心配する必要が無かったな……
あっさりと冒険者登録が終わり、冒険者として最低限の規則やマナーに対する講習が始まった。
ギルドは実力さえあれば深入りすること無く冒険者を受け入れる風潮がある。
魔物や盗賊を相手に命を賭けて依頼に望むことが多々あるので、人材に対し寛容な部分があるのだろう。
「お待たせしました!」
冒険者登録が終わり、認識票を受け取ったシズカ達五人が俺とホリーに駆け寄って来る。
マークとユリアはバルガナーン大森林での手応えを身体に染み込ませると鍛練している。
クリスは昼食と夕食に備えて買い出しに出掛けた。
ホリーはシズカ達が俺に唾をつけない様に監視すると言って、俺の横から離れない……
「この街にはダンジョンがあるそうですね?」
「【竜の巣】ですね。グラノスが最下層に居ますよ」
「グラノス?」
「昨日の、偉そうな古代竜の名前ですね」
「神竜様に対して……」
昨日は『無作法者』扱いされたけど、居候に近い立場の現状では強く出られないみたいだな。
義理堅いことだ……
「当面の生活のこともありますので……厚かましいお願いだとは思いますが、その【竜の巣】についてお話を聞かせて頂けませんか?」
「ギルドで素材や魔石の売却をしていくってこと?」
「それが一番現実的かと……」
「なら、俺達と一緒にマッピングもしていけば、更に収入は安定すると思うけど……どうする?」
居候って立場のままじゃ辛いだろうってことで、一石二鳥の収入アップ方法を提案してみる。
大陸に渡る船が座礁した時に持ち出せた物質は自身の装備以外は殆ど無かったみたいで、普通に生活して行くことすら難しい状態みたいだからなあ……
装備の手入れ、探索に必要な物質と、先立つ物が無ければ彼女達の目的を達することが不可能だし。
物語の世界じゃないんだから生活力無しでは生きて行くことは出来ないよな……
「何故、そこまで?」
「最終的に討伐する対象が同じだから……かな?」
彼女達も、グラディアス様からヴェレダ達の討伐を頼まれたって話なんだから、全てを俺達が背負う必要がないって状況は俺達にとってもありがたい話だ。
将来的な話って程ではないが、協力出来る範囲は相互に協力出来る方が効率が良い。
「正直、ウォルフ殿の魔法を拝見させて頂いて……私は思い上がっていたことを思い知らされました。狭い世界で最強と思い込んでいたことが恥ずかしいです……」
「……」
「是非、私達を一緒にお連れ下さい。ご迷惑になることがない様に努めて行きます!」
いや、そんな丁寧な態度は止めて欲しいんだけど。
剣と刀の違いはあっても、ダナトス皇国を代表する強者を相手に偉そうな態度はとりたくないんだよ。
「帰ってから、ゆっくり話をしようか?」
「はいっ!」
だからぁ、対等な関係でいたいんだよ!
シズカの方が年齢的にも上なんだから、俺を相手に敬語を使うのは止めてくれ!
クリスが用意してくれた昼食の後、少し時間をおいてホリー、クリスと鍛練を始める。
魔力操作の鍛練なので見た目は座っているだけだが、体内の魔力を循環させながら、任意のタイミングで任意の魔力を一点に集中させる。
魔法の行使は勿論、身体強化や障壁の展開速度、その強度にも影響する鍛練だ。
「剣士と思ってましたけど、魔導師だったんですね」
鍛練の様子を観ていたカガミが驚いた表情で呟く。
「精神統一と思ってましたが、違うようですね」
眼を閉じて座ったままの俺達の額から流れる汗に気付いたコダマがカガミの方を見て言う。
「あの剣筋で魔導師って……ウォルフ殿以外も化け物ね」
カナデと鍛練をしているシズカも驚いている。
この反応から考えると、陰陽師の二人は刀を遣うのが苦手なのかな?
接近戦になった時に大丈夫なのか?
休憩中のホリーとクリスに、カガミとコダマが話し掛けている。
魔法文化の違いに興味があるのだろう。
でも、ホリーとクリスは一般的なレベルじゃないから、レイスル王国の魔法について誤解されそうな気が……
ホリーもダナトス皇国の魔法に興味津々って感じで、二人から色々と聞いている。
最初に出会った時の険悪な空気は微塵も無くなっていることに安心していると、シズカが話し掛けて来た。
「ウォルフ殿の魔法は彼女達の魔法と違うと感じたのですが、やはり【大賢者】の効果でしょうか?」
それは間違っていないんだけど……
そもそも、ローレンスが研鑽したエルフの魔法が大本って感じだから、説明が難しいんだよな。
【大賢者】の効果ってことにして、濁しておこう……
他人が使えない魔法も多いんだから、嘘ってことにはならないだろうし。
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