再びバルガナーン大森林へ
「エルフの集落に行くんじゃなかったのか?」
転移したのは前回のバルガナーン大森林探索時に土竜を討伐した場所だ。
魔力増幅炉の鍛練と実戦訓練を考えると、同行者がいない状態の方が望ましいと考えたからだ。
「それで食料の準備が少なかったのね」
ユリアの言う通り、エルフに同行して貰いながらの探索用としては、料理済みの食料をあまり異空間収納に収納せずに転移して来たのだ。
「暫くは鍛練の続けながら、別の方向へ探索ってことですか?」
「使える魔法の種類に制限がある中での鍛練ですわね……連携を含めてとお考えですね?」
クリスとホリーの予測通り、バルガナーン大森林という環境に合わせた鍛練をメインにしながら、探索範囲を広げて行こうと考えている。
「エルフの集落で食料を集るつもりじゃなかったってだけで安心だわ」
「俺も、それを心配してたんだよ」
マークとユリアは俺のことをどんな目で見てるんだ?
「オオオオオオオォォォォッッッ!!」
岩肌の様な表皮と、鋭く突き出した牙を武器にした魔物『ロックボア』にマークが一人で挑む。
魔力増幅炉の効果と限界を試すためにというマークの意志を尊重したからだ。
スヴェイン道場で俺が使った技、障壁を足場に方向転換しながらの連擊をロックボアに叩き込む。
普通なら剣を弾く硬度を誇るロックボアの表皮を簡単に斬り裂くマークの剣……
『ゴアアアアアァァァッッッ!!』
たまらず雄叫びをあげるロックボアだが、マークの連擊は止まる気配がない。
自身に斬擊を見舞った直後に展開した障壁を足場に上下左右へと跳ぶマークを捕捉出来ないロックボアは、逃げ出すことすら出来ずに力尽きた。
「マーク、凄い連擊だったな!」
「これなら、魔法を使えない俺やユリアも戦力としてやっていけそうだ。ウォルフ、ありがとうな!」
あれだけの連擊を放った直後に息切れしていないマーク。
普段の鍛練がどれ程の密度なのかを物語っているな……
俺と同じように剣に特化したスキルを持っていないマークが、『次期師範代』と目されていた理由だ。
綺麗な剣筋だけでなく、非常に濃い鍛練の密度がマークとユリアの剣を支えている。
剣に関しては、本当に尊敬出来る男だ。
「魔力が枯渇する心配がないってのがありがたいな。障壁と身体強化にあれだけの魔力を注ぎ込んでも余裕があった。おかげで剣にも魔力を回せたよ」
身体強化の延長で剣に魔力を注ぎ込むことで、ロックボアの表皮を簡単に斬り裂いたってことか……
勿論、剣筋に乱れがあれば、あれ程綺麗に斬り裂くことは出来なかっただろうけどマーク相手にその心配は無用だろう。
巨大な鎌を振るうグレートマンティス。
昆虫系の魔物に多い硬度の高い殻による防御、複眼が可能にする動体視力を兼ね備える強力な魔物だ。
次は自分だとユリアが前に出る。
「ハアッ!!」
迫るグレートマンティスの鎌をユリアの剣が弾く。
相手を撹乱する動きを重視したマークと対称的に、最小限の動きの中で相手の隙を突く戦い方だ。
それはグレートマンティスも同じで張り詰めた緊張感が空気を冷たくしていく……
張り詰めた空気を切り裂いたのはグレートマンティスだった。
左肩を狙い振るわれた鎌に対し、ユリアは後ろに下がるよりも前に出ることを選択した。
上段から振り下ろされる鎌を電光石火の動きで潜り抜けたユリアの剣が、グレートマンティスの頭を跳ばす。
頭を失ったグレートマンティスはその場で両前足の鎌を振り回し続けていたが、やがて動きを止める。
「良い緊張感だったわ」
「あの速度で動かれたら堪らないだろ」
「この速度なら、お二人もエルフが詠唱に使う時間を潰すことが出来そうですわね」
「私達が詠唱する時間も安心出来そうです!」
魔法を使えないことを気にしていた二人だったが、今後の戦いに手応えを感じているみたいだ。
今回、ユリアは剣で戦ったけど、弓を使ったとしても連射速度が上がるのは間違いないだろうし。
ヴォクオーンが纏めるエルフの集落から東へと探索を続ける中、ホリーの探索魔法に魔物の反応が現れる。
「前方、十時の方向に魔物の反応ですわ。……魔物だけじゃない?」
「どういう事だ!?」
目視出来ない距離をカバーするための魔力探索だ。
その為、探索を行っているホリー以外は状況が把握出来ていない。
「魔物と戦っている……人間がいますわ?」
「この深部に人間ですか!?」
「エルフの間違いじゃないの!?」
未開と言われているバルガナーン大森林の深部まで探索出来る人間が俺達以外に?
当然のことだが、人間の集落など存在する筈がない危険な地域だぞ!?
直ぐ、魔力探索で状況を把握したが間違いない……
オーガを相手に戦っている人間がいる。
大森林深部で生息出来るオーガを相手に戦っている五人分の魔力反応に俺は驚愕した……
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