自由と裁量権
「グラディアス様に古代竜、果ては世界樹ですか。実感が湧かないお話ですが、ウォルフ君のスキルや魔法を見る限りは本当なのでしょうね」
エリー様は話の内容を受け入れてくれたようだ。
自分で言うのもなんだけど、突拍子もない話だから信じて貰えないことも覚悟していたから助かります。
「グラディアス様との契約と言ってましたが、これはウォルフ君が契約したってことでいいの?」
「……クランで受けました」
怒られるよな……
ホリーもクランの一員だ。
可愛い身内をそんな話に巻き込んだなんて、エリー様が許してくれる筈がない。
「そう、ウォルフ君にしては良い判断ね」
あれ?
「あなたがクラウディアを放って何処かに行くって言ったら、怒らないといけないところでした」
いや、その『何処か』ってのが、かなり危険なところなんですが……
本当にそれで良いんですか?
「不思議そうな顔をしてますね。あなたがクラウディアを置いて何処かに行ってしまったら……また、クラウディアが逐電してしまうでしょ?」
「その通りですわ!」
エリー様がドヤ顔のホリーを睨む……
当たり前だよ、逐電するって自慢気な顔で言う貴族の令嬢なんて初めて見たぞ。
「ラスガカーン帝国の諜報員が多い王都を拠点にすると、ヴェレダ達に俺達の動きが伝わる可能性が高くなります。コーラル王国で逃がしてしまったヴィンズから、俺達の情報は伝わっている筈ですから」
「しかし、君達が拠点にしているハルムントはラスガカーン帝国から離れ過ぎで不便ではないか?」
「だから、俺達の情報も流れ辛いと思っています」
「グラディアス様から依頼を受けたという話が本当なら、レイスル王国の都合で縛ることも出来ないか……」
陛下も理解してくれたようだ。
今は新婚生活なんて状況じゃないんだ。
国の利益も大事だろうけど、ヴェレダ達の企みは世界の問題に発展する危険があるんだし……
「スヴェイン伯爵、君の息子は我々が利用することが出来ない存在になってしまったようだな。創造神様や幻想種と関わりを持ち、世界樹に関わる問題を一任されたという話が本当なら、我が国どころか世界の未来に関わる存在だ」
「愚息ではありますが、根拠の無い嘘で保身を謀ることはないと断言させて頂きます」
「そうでなければ、この者が持つスキルも説明がつかないしな」
俺のスキル【神仙術】は【調律者】の固有スキルって古代竜が言ってたし、【大賢者】に至ってはグラディアス様の祝福で授かったスキルだから嘘じゃないという説得力を持っているんだろう。
「世界樹を狙うエルフ達を討伐か……冒険者の立場で不都合はないのか?」
「冒険者だから良いんですよ。冒険者ギルドと良好な関係は維持していますが、俺達は独立したクランです。自分達が行動の裁量権を持っています」
「君達の活動に口を挟むなということか……さすがに口外出来る話ではないので仕方ないな」
よしっ、陛下からの自由裁量権ゲット!
最初に婚姻なんて言われた時はビックリしたが、俺達の立場を理解して貰えたことは大きい!
これ以上面倒な話を持ち出される前にと、俺達は早々に王都から退散することにした。
王都から少し離れた森からハルムントの拠点に転移した俺達は、今後について相談する。
「ウォルフ、とうとうバラしてしまったな」
「仕方ないだろ。王都で王家だけじゃなく、ラスガカーン帝国を含めた諜報員から監視されてたんじゃ何も出来なくなってしまうんだから!」
「ウォルフ様の自由を守るタイミングとしては最高でしたけど……私達の婚姻がああぁぁぁっっっ!!」
「ホリー、暫くは我慢なさい」
「ホリーさん、ウォルフさんと一緒にいることが公認されたって考えましょう!?」
今後の話じゃなかったのか?
「もう一度、バルガナーン大森林に行ってみるか?」
「エルフの里ですか?」
「いや、あの大森林に世界樹の手掛かりがあると思わないか?」
「バルガナーン大森林は地表に形成されたダンジョンという仮説もありますわね……」
「ダンジョンだと!?」
「頭の悪いマークでも理解出来る様に説明して差し上げますわ」
バルガナーン大森林はレイスル王国、ラスガカーン帝国という二大国家よりも広大な広さを持つ。
それだけの森林地帯を各国が放置せざるを得ない理由は、通常の地域よりも強力な魔物が跋扈しているということだけではない。
この大陸の半分を占める広大な森林地帯は海岸線からの侵入を許さないと云われている。
海岸線沿いは断崖絶壁であり、そこをなんとか登った人間が帰って来た前例がないのだ。
つまり、バルガナーン大森林の南部にあたる長城側からのみ侵入を許されている地域ということになる。
そんな地域は世界中探してもバルガナーン大森林のみであり、その特殊性はダンジョンと同等の力が働いていると考える人間も少数ではない。
「あれ程の森林地帯を維持するためには、広大な流域面積を持つ大河の存在が必要になりますが、その様な大河の存在は確認されてませんのよ」
「確かに、そんな大きな河川は無かったな……」
「かと言って、雨が多い訳でも無かったわね……」
「そんな状態であの森林地帯を維持しているのは超常の力が働いていると考えるしかないのですわ!」
そう、ホリーが説明した『超常の力』こそが世界樹ではないかと思っているのだ。
あの大森林にエルフがいるってことが、仮説に説得力を持たせている。
「ローレンスの記憶にも世界樹の場所はないんだ。選ばれたエルフの一族以外のエルフ達も正確な場所は知らないと思う」
「それはヴェレダってエルフ達もか?」
「知らないだろうな……」
「先手を打って、護りを固めるってことですか?」
「可能ならそうしたい。もしくは……何等かの連携を取ることが出来ればと思ってる」
「他のエルフとも協力出来れば心強いわね」
エルフって種族は、自分達の存在理由は世界樹を護ることだと思っている。
排他的な性格もそこから来ている。
他の種族が自分達のために世界樹を利用することがない様に、世界樹を護るために他の種族を排除するのだ。
俺達の目的も世界樹をヴェレダ達の手から護ることである以上、エルフ達と協力することも不可能ではない筈だ。
「話を聞いてくれたら良いな……」
「マーク、弱気だな?」
「エルフの人間嫌いは有名だろうが」
「ウォルフ様は何かお考えが?」
「考えって程じゃないけど、ヴォクオーンの集落に行ってディレイトに協力を頼もうと思ってる」
「あの自警団を率いてたエルフか?」
「あいつは俺達に対して好意的な雰囲気だっただろ?」
別れ際の挨拶も『またな!』だったんだ。
会いに行っても冷遇はされないだろう……
「確かに、あの集落のエルフはローレンスに好意的っていうか、恩義を感じていたな……」
「でも、エルフは集落毎に独立してるから、他のエルフとの繋がりは期待出来ないんじゃないの?」
「ユリアの心配は解りますが、最初に悲観的な考えで可能性を否定するのは悪手ですわよ」
「あなた達みたいに楽観的に生きて行けたら……人生は楽しいでしょうね」
「まず、会いに行ってみましょう」
クリスの一言が、険悪な空気を醸しつつあったホリーとユリアを止めてくれた。
クリスが空気を読んでくれるので助かるよ……
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