俺の意志は!?
陛下からの使者に連れられて俺達は王城へと向かう。
使者は王城警備の騎士だそうで、スヴェイン門弟の集まりである俺達に憧れの眼を向けていた。
剣を志す人間に対して門は常に開かれているんだから、スヴェイン道場に入門すればいいのに……
「いやぁ、スヴェイン伯爵様の纏われる空気を知った今は、自分程度が門弟になどとは……」
「師範は剣に関しても厳しいが、本当に厳しいのは人間性に対してだ。それは御自身にも徹底されているんだから、本気で剣を志すなら無下にされることはないぞ!」
「そうですよ。私やマークは平民ですが、他の門弟と差別されることなく教えを受けています」
「そうなんですか!?」
「スヴェインの開祖、初代は平民だぞ」
「そんな、剣聖様に対して畏れ多いことをっ!」
「あぁ、こいつは師範の三男だ。自分の先祖の話だから無礼って訳じゃないんだ」
「しっ、失礼しましたぁっ!!」
「いや、俺はスヴェイン伯爵家から勘当されてるんだ。ただの平民だから普通に接してくれ」
この騎士は名前をバルンガというらしい。
独学での鍛練の末に騎士として警備の職を得たそうだ。
周囲の騎士は剣の手解きを受けた者ばかりで、自身の剣にコンプレックスを持っていた。
そのコンプレックスを克服したいと思っていたが、スヴェイン道場に入門することが出来るなんて信じられないと思っていたそうだ。
「初代ガーランドも平民だったんだ。貴族の出自じゃなくても人々を護ることが出来るってことはスヴェインの人間が一番解っている。あなたが人々を護りたいと思っているなら、道場を訪ねてみたらいいよ」
「ありがとうございます!」
伯爵家って立場が誤解を産んでいるんだろうな。
道場に入門すれば平民だろうが、貴族だろうが一切関係ない鍛練が待ち受けているんだが……
バルンガの先導で案内されたのは……お馴染みの会議室だった。
入室した俺達を待っていたのも、いつもの面々だ。
嫌な予感しかしないんだが……
「クラン【黒狼】、陛下のお召しにより参上つかまつりました」
「今更だろう、気楽に座ってくれ」
確かに、陛下の仰る通り『今更』だよなぁ。
あれだけの無礼をした後に、規範に沿った様な態度なんて何の意味もないだろう……
「さて、君達に来て貰ったのはクラウディアとウォルフの婚姻についてのことだ」
「えっ!?」
「「「「えええええっっっ!?」」」」
「これで遠縁とはいえ、君はレイスル王家に繋がる存在となる訳だ」
ニヤリと笑う陛下と無表情の父上……
まさかとは思うが……俺を政争の道具にしたのか?
「勘違いはしないように。スヴェイン伯爵に強制した話ではないぞ。理不尽なことを私が言い出した時に、この男が私の言うことを聞く筈がないだろう」
ありゃ、表情に出てたか?
父上、睨まないでくださいよ……
「君達のクランとしての拠点、そしてクラウディアとの新居となる屋敷を用意してある。これからは王都を拠点として活動するといい」
ちょっと待ってくれ……
俺は安穏とした生活が出来る状態じゃないんだ。
「陛下、決して口外なさらないとお約束して頂けなければ話すことの出来ない話があるのですが……」
ここまで暴走されると、グラディアス様との契約を含めて話すしかない……っていうか、そうする以外にグラディアス様との契約を守る手段がないじゃないか……
「約束しよう。今度はどんな話が出て来るのか恐ろしいがな」
陛下は気楽に恐ろしいって言われてるけど、内容が内容だけに本気で恐ろしい話になりますよ?
「まず、グラディアス様から祝福を授けられたことで俺のスキルが【大賢者】になったとお話ししたことを覚えていらっしゃいますか?」
「勿論、覚えているぞ」
「その時にグラディアス様から依頼を受けることになったのです。具体的には、ラスガカーン帝国と繋がりがあると思われるエルフの一派の討伐です」
「グラディアス様から依頼だと!?」
「はい、ヴェレダというエルフ達は世界の理を歪めているので討伐するように……と」
「ラスガカーン帝国と繋がりのあるエルフということは、この前の一件と関わりがあるのか?」
「たぶん、その通りだと思われます」
「ウォルフ、『たぶん』とはどういうことだ!」
完全に軍事が関わる話になってしまったから、父上も傍観する訳にはいかないよな……
「グラディアス様から【調停者】の任を受けている古代竜でも探知出来ない隠蔽技術で隠れている一派です。そう簡単には尻尾を出さないでしょう」
「古代竜とは……あの幻想種のことか!?」
「古代竜と何処で会ったのだ!?」
「クラウディア、ウォルフ君の言ってることは本当ですか!?」
陛下と父上だけじゃなく、エリー様も参戦か……
「古代竜とお会いしたのはウォルフ様だけですわ。私達は古代竜の声だけは聞いていますが」
「古代竜は何と!?」
「『次にトカゲと呼べば消し炭にしてくれる』と仰ってましたわ」
「ウォルフ、お前は古代竜を怒らせたのか!?」
「あいつが俺のことを『アホ』って繰り返すから『トカゲ』って言っただけですよ」
「「「「「アホかあぁぁぁっっ!!」」」」」
陛下、父上、エリー様に加えてエリアス殿下とアルフレッド殿下までが突っ込みを入れてきたよ!
とりあえず、馬鹿殿下にアホ呼ばわりされるのはどうかと思うんだが……
「グラディアス様だけでなく、幻想種である古代竜とどういった関係なのだ!?」
「グラディアス様がこの世界を管理される存在だとすると、それを実行するのが【調停者】である古代竜らしいです。その二人から俺は【調律者】と呼ばれています」
「グラディアス様や古代竜と並ぶとでも?」
「いや、そんな大それた存在じゃないと思いますよ。実際、『好きなように生きろ』って言われてますし」
そういえば、俺の自由はグラディアス様のお墨付きだったんだよな。
国王陛下でもグラディアス様の意思に反することは出来ないんじゃないのか?
「話が本題からズレていってますが、俺はヴェレダ達を討伐しないといけませんので、申し訳ないですが王都で管理下に置かれる訳にはいかないんです」
「しかし、そのエルフがラスガカーン帝国と繋がっている以上、我が国と目的が一致するのではないか?」
「ヴェレダ達の目的は世界樹を手中に納めることです。その為には魔法の研究が必要ですが、古代竜の眼を誤魔化し続ける必要があるのでラスガカーン帝国内に潜伏しているだけだと思われます」
「では、そのエルフ達はラスガカーン帝国をも利用しているだけだとでも言うのか?」
「その通りだと思われます」
「それよりもウォルフ、お前が言う世界樹とは……伝説の世界樹のことなのか!?」
博識なエリアス殿下の興味は世界樹なんだな。
世界樹は実在が確認された訳ではない存在だ。
実在が確認されていないのに、世界中で伝承だけが残っている神秘の存在……
古代竜グラノスが居た領域の様に、特定の存在に認められた人間しか立ち入ることの許されない領域に存在するんじゃないかと予想しているんだが……
古代竜は教えてくれないからなぁ……
「いきなり……とんでもない話が出てきたものだ……」
陛下、だから口外しないって約束して貰ったんですよ。
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