絶望との闘い
その時は、突然やって来た。
「うお」
校舎が揺れる。
地震だ。
俺が前いた世界の日本では、結構地震は多かったからな。ここの世界の人に比べれば、慣れたものだ。
しかし壊れる危険性があるので、皆は外に避難した。
すると、外に出て初めて気がつく。
「な、なんだ......あれ......?」
そこには、世界の終わりを表すような光景が広がっていた。
地面は抉られ、岩や土などが浮かび上がっている。
空は黒い雲で覆われており、所々で雷が流れている。
風は吹き荒れ、まるで台風。
「どうなっているんだ......」
その中でただ一つ、得体の知れない何かが見える。
白い、何かだ。
大きさは、トラックくらい。
しかし、それは四角い形では無い。
「この世の終わりのような演出......四神か」
白虎。
白い虎の形をした、伝説級モンスターだ。
すごく遠いが、オーラはハッキリと見える。
「鉄虎ワイガー......見てのとおり、四神よ」
間違い内容だな。
名前は鉄虎ワイガー、今までのは自然を操る能力を持っていた。
なら、このワイガーも持っているに違いない。
「名前のとおり、鉄を操るモンスターよ。金属ならなんでも自由に動かせる。鎧なんて無に等しいわ」
なるほど、そいつは厄介だな。
映画で、人間の体の鉄分からパチンコ玉を作り出しているのを見たことがある。
そんなことをされては、防御のしょうがない。
「ねぇ、待って!」
「嘘......でしょ......」
「死んだ......」
生徒達が、何やら騒がしくなる。
ワイガーの登場によって、一旦静まり返っていたのが、またザワザワと話し始めた。
何やら絶望を感じているらしい。
そして、俺もその絶望を目にする。
「まじかよ......」
地を歩くワイガー。
その上空には、暗い空の中で特別目立っているものが見える。
赤い。
まるで炎だ。
「炎鳥ミリード......そんな馬鹿な......!?」
一度に二体の四神。
前代未聞のことだった。しかし、よく考えてみれば、一体ずつ来てくれた今までのが都合良すぎたのだ。
一度に四神全てを相手する場合があっても、おかしくはなかった。
「四神の中でもトップであるミリード......この世の終わりね」
だが、例え絶望的状況であっても、闘うことから逃げたりはしない。
どうせ死ぬなら、足掻いてから死にたい。
俺は闘う。
「それでも、俺は闘う。例え四神二体が来ようが、絶対に生き残ってみせる」
「ライルくん......」
もしかしたら、死ぬかもしれない。
いくら魔王でも、一度に伝説級モンスターを二体も相手するとなれば、タダじゃ済まないだろう。
少しづつ近づいてくる二体。
ワイガーは、歩いた地面の周りから砂鉄を纏っている。
黒い竜巻。
ミリードも、ワイガーの上空を飛んでいる。
燃え上がる身体は、まるで太陽のようにメラメラと熱さを撒き散らしている。
地面からほぼ雲に近い位置まで、離れているのにも関わらず、ここまで熱さが伝わって来る。
「まぁ、今回はいつものようにはいかないさ」
「どういうこと?」
前回の準備不足を反省して、いつ来ても対処できるようにしていたということだ。
ロナもリリアもレイラもイリスも、そして他のみんなもだいぶ強くなっているし、俺自身も相当強くなった。
そして何より、今回は作戦が立ててある。
いくつかの作戦のうちの一つに、四神が二体同時に襲ってきた場合もあった。
「準備万端ってわけだ」
ただ、正確な攻撃手段や強さまでは分からなかったので、そこは柔軟に動きたいところだな。
しかし四神はもうすぐそこまで来ている。
時間はない。
「まずは二手に分かれよう。片方を先に倒すとか、呑気なことを言っているほど時間に余裕はない。同時に倒すぞ」
「はいっ!」
「うん!」
俺達は半分に別れた。
ワイガーは、アルス率いるアルファチーム。
アルス、ロナ、レイラだ。
そして、ミリードは俺のベータチームが相手をする。リリアとイリスがこちらのチームメンバーだ。
とにかく遠距離や中距離、火耐性のある奴をミリードに。
近距離や高火力、タンクはワイガーのアルファチームにした。
これで上手く分隊出来たはずだ。
「それにしても随分と遠いな」
「ええ、しかしあの距離でもこの感じるオーラは半端じゃないわ」
「どれくらいの距離で攻撃をしてくるのでしょうか......?」
おそらく、もっと近づいてからだろうが、やはり闘ってみないと分からないな。
今はだいたい数キロ先にいる。
こちらに着くまでもう後数分ってところだな。
俺の目を使わなくとも、他の人にも見えているようだな。
それだけ四神の力が強大過ぎるということだ。
「まだ時間はある。落ち着くために、一旦中へ入ろう」
俺達は校舎に戻った。
さっき、ルアンナ先生が国家騎士団を呼んでくれていたので、四神が来るより先に到着することだろう。
そうすれば、戦力も大幅に上がるはずだ。
「ライルくん......」
「ん?」
リリアが、心配そうな表情で呼んできた。
「勝てるのでしょうか......?」
「絶対に勝つさ。国家騎士も来るんだし」
「でも......」
分かっている。
国家騎士と言えど、さすがに四神には歯が立たない。
そのことは、過去に闘った国家騎士の人から聞いことがある。
何せ何百人といた騎士達が、全く傷すらも入れられなかったそうだ。
まず、俺達が四神のうち二体も倒せていることが、まずおかしい。
奇跡なのだ。
俺は、リリアの頭にポンと手を乗せる。
そして優しく撫でてやった。
「大丈夫だ。俺がいる。いつだってそうだろ?」
リリアは、少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、ホッと胸をなで下ろした。
「そうですよね。ライルさんがいたから、私もロナもここまでこられましたし。四神だって倒せました」
「さんじゃなくて、くんだろ?」
「あ、そうでした」
あははと、二人で笑った。
他人が見れば、こんな時に何呑気に笑ってるんだと怒られそうだ。
「別に俺はそんなにすごい人じゃあねぇよ。ロナもリリアも、自分でここまで来たんだ。俺がいなくたって上手くいってたさ」
「そ、そんなことは!」
「だけど」
俺は、笑顔でリリアに
「ありがとうな」
感謝した。
ありがとうと、伝えた。
その言葉を聞いた途端に、リリアは赤面した。
こうやって面と向かって言われると、結構恥ずかしいものだ。
「えへへ、そんな風に言われると照れちゃいますよ......」
リリアは、デレデレした顔をシャキッと戻して息を整えると、俺を真っ直ぐ見つめてきた。
「こちらこそ、ありがとうございます!」
俺達は、四神が来るまでの少しの間。
王都の危機が迫っているのにも関わらず、楽しくお喋りをしてしまっていた。




