アシッドスネーク再び
突然、地響きがした。
ゴゴゴゴゴという、よく漫画でありそうな音だ。
「なんだ?」
学園が仕掛けた罠のようなものだろうか。
すると、「キャー!!」という悲鳴が聞こえた。
奥の方からだ。
「下級モンスターくらいで大袈裟な」
「行こ、ライル」
それでも、どうせ他にやることも無いので、見に行くことにした。もとい、助けに行くことにした。
「おーい、大丈夫かー?」
え......?
そこで俺達が目にしたのは、下級モンスターなどでは無かった。
俺達はこの顔をよく覚えている。
「大きい......へび?」
「そうか、レイラは見るのが初めてだったな」
まさかこんな所にもいるとはな。
前に洞窟で見た時よりも、随分と大きな個体だ。
「アシッドスネーク」
それが奴の名前だった。
来ていたのは俺達だけではなかった。
先生も、他の生徒達も急いで駆けつけていた。
「アシッドスネーク!?何故こんな所に!?」
え?俺はその先生の言葉を聞き逃さなかった。
何故こんな所に?ということは、つまり意図的ではないということだ。
「どういうことですか?」
「ライル君も、来てたのね。説明するわ。ここにいるモンスターも、学園が作った人工のモンスターなの。でも、こんなの作った覚えはないわ」
つまり、予想外。予定外。
アシッドスネークは、自然に産まれたモンスターだということだ。
「おそらく、何らかの原因によってここに住み着いた。しかし、自然にモンスターがここに住み着くなんてありえないわ」
「今はそれより、このアシッドスネークを倒すことが優先じゃないですか?」
モタモタしていると、アシッドスネークに溶かされてしまう。
「そうね、各自戦闘態勢!アシッドスネークを狩るのよ!」
おー!と、ここに集まったチームは一斉に武器を抜いた。
「ただしライル君達はここにて待機。しばらく様子見で」
え、まぁ一度倒したこともあるからな。
それにアシッドスネークぐらいなら、俺達が出る幕も無いだろう。
アシッドスネークは上級モンスターとはいえ、当時学園の生徒ですら無かった俺達でも倒せたのだ。
「それにしても本来ここのボスを役目とするモンスターが居ないわね」
俺は、ふとアシッドスネークの口元に目をやる。
あー、血が垂れてるな。これは食われたわ。
俺達がモンスターに遭遇しなかったのは、単にこいつが食べたからかもしれない。
「うわっ!」
「ぐあ」
それにしてもまずくないか?
皆はアシッドスネークの硬い鱗に、武器は弾かれ、尻尾に叩かれ、溶解液を避けるのに必死だ。
「なんだコイツ......」
「つ、強い!」
確かに前俺達があった時のアシッドスネークよりも、少し大きな個体とはいえ、これだけの人数差で負けるとは思えないが。
現状はかなりピンチ。
このままでは死者が出るかもしれない。
「まずいわね......ライル君?お願いしていい?」
思ってたよりも強いようだ。
ルアンナ先生は俺に助けを求めた。
「あの時よりもどれほど強くなったのか、試させてもらうよ」
俺は武器を構える。
懐かしいな。
あの時はまだ王都に来たばかりで、ルアンナ先生からの依頼で洞窟まで行ったんだったな。
まぁ、アシッドスネークと闘うのは想定外だったが、当時は何とかして倒せた。
どうやら、今回は前よりも強いようだな。
こんなに皆が手こずってる敵を、俺が出ただけでなんとか出来るとは考え難い。
「ルアンナ先生、もし危なくなったら皆を避難させて下さい」
「ええ、でも無理はしないでね」
「了解です」
さて、行くか!
「ふん!」
俺は思いっきり地面を蹴っ飛ばし、アシッドスネークの頭まで飛んでいく。
ブラータス戦で学んだ、鷲掴みの攻撃だ。
特に蛇のようなモンスターに有効の技。
「はぁ!キイィイイイック!!」
ボッ!
という音と共に、俺は空中へと放り出された。
何が起こったんだ?
アシッドスネークに蹴りをしたつもりが、俺は宙にいる。不思議なことに、アシッドスネークの姿が確認できない。
「え?」
後ろを振り返ると、そこには大きな風穴を開けたアシッドスネークの姿が。
俺、アシッドスネークを貫通し、通り抜けて奥まで飛んでいってしまっていた。
俺は、一撃でアシッドスネークを倒してしまったのだった。
「......!?」
皆は驚きのあまり、口をポカーンと開けたまま動かない。
俺自身も驚いている。
まさか、こんなにあっさり倒せてしまうとは......
「え、えーっと......」
どうしよう......数人がかりで闘っても倒せなかったやつを、わずか一撃で倒してしまった。
このままでは疑われてしまう。
「いやぁ、皆が体力減らしてくれたおかげだよ。ははは......」
皆は顔を見合わせて、「そ、そうだよな!」
「なーんだ」などとお互いに言い合って安心する。
一方で、「俺の手柄を横取りしやがって」と怒る輩もいた。
そんな奴に限って、俺が名前も知らないような生徒なんだけれどな。
まぁ、これでとりあえず難は逃れた。
「驚きました......ライルさんはやっぱり強いですね!」
「イリス。だからさっきも言ったが、皆がダメージを与えてたからだって」
「え、今ライルって言った?」
ん?
今ライルって言った?って言った?
ここにいる殆どの人が俺とは違うクラスなのだが、なぜか俺の名前を知っているようだ。
あ、いや俺一位だったな。
「え!?ライルって、あの?」
「あの伝説級モンスターのブラータスを倒したっていうライルか!?」
そうだった。
ルアンナ先生が隠蔽工作をしてくれたのだが、どうしても目撃者を口止めすることが出来ず、学園内ではすっかり有名になってしまっていた。
しかしいくら一位だとは言え、勇者でもないような学生が、伝説級モンスターである四神を倒せるとは信じ難いようで、たたが噂程度の事だったがな。
「アシッドスネークを倒したってことは......やっぱり本当!?」
「本当に四神を倒したの?」
俺は質問攻めにあう。
が、そんな状況は長くは続かず、ルアンナ先生が止めてくれた。
「みんな、質問したいのは分かるけれど、ライル君はあまりそういうのが好きじゃないの。代わりに私が答えるわ」
皆がは、それで満足してくれたようだ。
だが、俺の力は学園中で話題となっている。
これはバレるのも時間の問題だな。
まぁ、仕方がないだろう。
「とりあえず、ダンジョンクリアってことでいいですか?」
「ええもちろん。クリアよ!」
やったー。
あまりダンジョンって感じはしなかったけれど、一応クリアでいいんだな。
それちしても、アシッドスネークをあんなにも簡単に倒せるなんてな。
俺は相当強くなってしまったらしい。
いや、元々これほどの強さなのだろう。
何せ俺は、魔王の力を持っているからな。




