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攻撃魔術

ブラータスに剣は上手いこと刺さっていたようで、どうやら偶然にも急所に命中していたようだった。

そしたら、後は簡単。

もう仕留めたようなもので、弱っているブラータスをひっくり返し、剣が刺さって出来た傷から魔術を撃ち込むだけだった。

こうして無事、では無かったのだけれど、なんとか水亀ブラータスを討伐することが出来た。

王都に平和がもたらされたのだ。


「そうだ、レイラ!」


レイラは大丈夫なのか?

ブラータスを倒したことによって、俺の傷も完全に癒えたのだが。

俺は急いでイリス達の元へと行く。


「レイラ!」

「あ、ライル」


レイラは何事も無かったかのように、座っていた。

その姿を見て、俺はほっとした。

大丈夫そうだな。

見たところ背中の傷も治っているようだし、安心した。


「ヘラルドも、傷治ったかな」


レイラは、自分の命が危なかったって言うのに、他人のことを心配し始めた。


「今は人のことはいい、レイラは安静にしていてくれ」

「ライルさんも人のこと言えませんよ。ライルさんこそ安静にしていて下さい」


振り返ると、リリアがいた。

たしかにリリアの言う通りかもしれないな。俺も今回は相当魔力を使って、疲れてしまったな。


「またしてもやってくれたな。ライル君」

「ライオネル王」

「お疲れのようですまないが、礼を言わせて欲しい」


王は俺に、礼を言ってくれた。

そんな、当たり前のことをしただけだってのに。


「君には何度救われることか」

「いえいえ、そんな大したことございません」


それよりなによりアルスだ。

俺がアルスを守った後、すぐに治療してもらったはずなのだが、大丈夫だろうか。

俺と一緒に壁に打ち付けてしまったので心配だ。


「アルスは?」

「アルス君なら大丈夫、命に別状はないそうよ」


ルアンナ先生が答えてくれた。

それを聞いて、俺はまたほっとする。

良かったぁ、これで心配ごとは無くなった。

俺達は休息のために、一旦寮へと帰った。

王様に、このことはくれぐれも他言しないように頼んでおいた。

しかし、後から個人で表彰はされるらしい。

まぁ、それくらい貰ってもいいかな。


「しかし、残念ですね。学園祭」

「あぁ、そうだな」


今回の一件で、学園祭は中止。

俺がせっかく頑張って作ったものも、全てブラータスに壊されてしまっていた。


「またいつかやれるといいな」

「はいっ!」


イリスは嬉しそうに、飛び跳ねていた。

全く、元気なやつだ。

俺達は寮で休んだ。

本当はこれから反省会みたいなものを開きたかったのだが、丸一日寝てしまった。

そして、次の朝にはスッキリと目覚める。






「ライルさん」

「ん?」


いつも通りの授業。

実技の最中に、珍しくリリアだけで俺に話しかけてきた。

いつもはロナやレイラがいるのに、今日はリリアしかいない。


「どうした?」

「私に、魔術を教えて下さい!」


これは驚きだ。リリアには、過去に一度個人で教えたことがあるが、もう既に結構強いと思うのだ。

ロナよりも魔力量は多く、レイラよりも多彩な魔術を使える。

汎用性の高い、柔軟な動きが出来るのがリリアなのだ。


「それにしても、なぜいきなり?」

「ブラータス戦で、私は役に立てた気がしませんでした。ロナは盾でみんなを守って、レイラはブラータスと闘って、イリスちゃんも回復をして......私は強化ばかり」

「強化だって立派な闘い方だぞ」

「そういうんじゃなくて、私ももっと役に立ちたいです......」


そうか......自分で闘っている気がしないのか。

たしかに、ブラータス戦ではリリアの力を生かしきれていなかった気がする。

もっとリリアを前線に出すべきなのかもしれないな。

それにブラータス戦での後悔は、事前準備をしていなかったことだ。

いつまた残りの四神が攻めてくるかは分からない。今のうちに対策を練っておこう。


「よし、分かった。鍛え直してやるから、覚悟しとけ」


そう言うと、リリアは満面の笑みを浮かべて


「はい!」


と大きな返事をした。

いい笑顔だ。

だが、俺は厳しいぞ?そんな覚悟で大丈夫なのか。


「なら早速教えよう。リリアは何が得意だ?」

「はいっ!私は魔術系統が得意です」

「なら、今度は魔術で攻撃をしてみるか」


リリアにはいつも、拘束系魔術のバインドや、強化魔術ばかり教えていたからな。

これらを駆使して有利に立ち回り、攻撃魔術で敵を倒す方法を教えよう。

一人でも倒せるようにしないといけないな。


「細かいのは後々教えるとして、まずは高火力の殲滅型魔術を教えよう」

「せんめつ......」


殲滅型。

簡単に言うと、大量の敵を一度に倒す程の高威力の魔術だ。

例え敵が大量でなくとも、高威力には違いない。


「リリアの魔力なら、何発も撃てるはずだ」


いくつかあるのだが、リリアが使うならこれかな。


「バーニング・エクスプロージョン」

「ばーにんぐ?ですか?」


この技は、前方に広範囲の爆発を起こさせるというものだ。

威力が半端じゃない代わりに、詠唱が長い。

だから相手が動けない場合や、高速詠唱のバフをかけていなければ、ほぼ実践では使えない代物。


「リリアの強化魔術と、その魔力量が無ければ使えないものだ」


さっそく教えてみる。


「まずは魔力を意識して、あそこのダミー人形に向かって放つイメージをするんだ」

「イメージ......」

「爆発のイメージだ」


リリアは目を瞑り、集中する。

そして急にカッと開いたと思えば、技名を叫んだ。


「バーニング・エクスプロージョン!!」


杖を振り上げて、声を上げる。

いや、まだ詠唱教えてないし。

これはしばらく恥ずかしくなるパターンだな。

俺は、リリアを慰める方法を考えようとしたその時。

ダミー人形の地面に、魔法陣が現れた。


「なっ!バカな!?」


そして、魔法陣のあるダミー人形の真上から、大きな炎の塊が落ちてきた。

轟音と砂埃に包まれる。


「リリア!」


俺は翼を生やし、一扇ぎして砂埃を消し去った。

中からは驚いて目が点になっているリリアの姿があった。


「あの......私......」

「あぁ、まさか撃てるとは思ってなかった......」


もしかしたら、リリアは俺よりも強い魔法使いになれるかもしれない。

天才ってやつか?

よく分からんが、とりあえずバーニング・エクスプロージョンは習得出来たようだ。


「や、やりました?ライルさん」


聞くまでもない。出来てたに決まってるだろ。


「もちろんだ。しかし、無詠唱とは驚いたな」

「なんか、イメージしたら出来ました」


この世界で、上級魔術を使うには詠唱が必要だと思っていたが、それはもしかして勘違いなのか?

皆そう信じ込んでいるだけで、全て無詠唱で出来るのでは無いだろうか。

これは調べが必要だな。


「これでもう習得出来たな。また他のも教えてやるのだが、その前に」


ずっと気になっていたことがある。

それを、今ここで言うとしよう。


「なんかリリアは、未だに俺に対してさん付けなんだよな。よそよそしくないか?」


それを聞いた途端、リリアの顔は赤くなった。


「いえ、あの!それは......だって......ライルさんはなんか......は、恥ずかしいですし」


ん?

意味がわからん。もうだいぶ一緒にいるから、今更さん付けなんていらないと思うのだが。


「呼び捨てにしてもいいんだぞ?」

「で、でも......」


リリアは少し考えた後、何かを決意したようで。


「が、頑張ってみます!」


そもそもその敬語からいらないんだけどな。

もう同じチームなんだし、呼び捨ての方が気楽な気がするが。


「ラ、ライル!ひゃん......」


さんって言っちゃった。

しかも噛んだ。

可愛い。


「やっぱり無理です......」

「あー......まぁ、無理にとは言わないからさ。せめて今は『君』でもいいんじゃないか?」


リリアも、一応さん付けは出来ればやめたいようで、頑張っている。

頑張るようなことではないと思うが、初めてあった日からずっとそう呼んでいるからな。

くせが抜けないのだろう。


「じゃ、じゃあ......ライル......くん?」


なんで疑問形なんだ。

まぁ、悪くは無いな。


「ライルくん!」

「それでいいんじゃないか」


えへへ、と嬉しそうにしているリリア。

ロナは最初から呼び捨てだし、レイラも無感情で呼び捨てだ。

イリスは......お嬢様だから仕方ないか。

呼び捨てだと変だしな。


「それじゃあ次の魔術いくぞ」

「はい!よろしくお願いします!ライルくん!!」


なんだか慣れない気もするが、良しとしよう。

俺は、リリアが使えそうな魔術を片っ端から教えた。

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