悪夢再来
ブックマーク登録ありがとうございます!
加筆しました。
少し訂正があるので、最後の方だけでも読んでいただけると幸いです。
よろしければ、感想などをいただけると励みになります。
試験当日。
俺達は、試験官の前に立っていた。
試験管では無く、試験官だ。そこは間違えないで欲しい。
などと、自分の中で冗談をかましている。
そうしなければ緊張が解けないからだ。
昨夜、緊張しないと言ったな?あれは嘘だ。
朝起きて、今日のことを考えただけで緊張した。
俺は本番に緊張するタイプなのかもしれない。
「それでは始めてください」
と、試験が始まった。
試験内容は簡単。
レイラと二人でモンスターを倒すというものだけ。
ギルドの特別闘技場で行われるものなのだが、ここが割と広くて、大きなモンスターも飼える。
そして今回の試験モンスターは、大きな牛だった。
「あの巨大蟹くらい大きいが、小回りが効かなそうだな」
「ん、ライルと一緒なら倒せる」
まぁ、試験だから超危険なモンスターでは無いと思うし、二人なら勝てるだろう。
「よし、行くぞ!」
まずは散開。
牛なら一直線にしか攻撃して来ないはず、ならば二手に分かれて、かく乱作戦だ。
俺は背後に回って一太刀入れる。
皮が硬いと予想し、少し魔力を込めた。
すると背中に大きな傷が、思ってたよりも深く入った。
そしてダウン。
巨大な牛は、俺の一撃によって倒された。
「あれ?」
なんか意外とあっさり倒してしまい、試験官を驚かせてしまった。
こんなはずでは無かったのだが......レイラも攻撃すらしていない。
「ええと......」
恐る恐る試験官の方を見る。
驚きで空いた口が塞がらない試験官達の隣で、笑いを堪えるランベルトさんの姿が見えた。
「あの」
「だっはっはっはっはっはっ!!」
あんな大笑いするランベルトさんは初めて見た。
なんか腹立つな。
「いやぁ、さすがだよライル君。君ならそうしてくれると信じていた」
どういうことだ?まるで、俺が一撃で倒してしまうことを予測していたような言い方だな。
「いやいやすまない。実は、ライル君の特訓をしているうちに気付いてはいたのだが......楽しくなっちゃってね」
楽しくなっちゃった?一体何がだ?
確かに俺は魔王の力を持っているが、さすがにこんなに強かったわけでは無いぞ?
「君、強くなりすぎ」
強くなりすぎていた。
「確かに君は最初から強かった。けれど......そうだな、例えるなら刃物を持った子供のようだった。闘い方を知らない。だがそれを教えたら、剣を持った兵士」
そんなに変わったのか。
自分では、あまり気が付かないものだな。
ちゃんと俺は強く慣れていたようだ。
少し安心して、自身も持てた。
「よし、気を取り直してもう一度だ!」
連携もクソもなかった。こんどは強いモンスターを出して欲しい。
あと、俺ももっと手加減をしよう。また一撃で倒してしまっては、めんどくさいからな。
「やる必要はありません」
「え?」
「強さは充分伝わりました。次もどうせ一撃です。なら何も問題はありません。元々、勇者の息子であるランベルト様の弟子を、疑うつもりはありませんでしたし」
こうして、俺達は合格した。
なんかすごく呆気なかったが、自分の自信にも繋がって、いい経験になった。
やはり俺は、俺が思っている以上の力を持っているな。
これなら魔王も倒せそうだ。
俺が魔王なんだけど。
「ライル、強くなった」
「あぁ、そうみたいだな」
俺達は学園へと帰る。
最近は学園よりもランベルトさんの所にいる方が多かったからな。
なんだか久しぶりにリリア達に会う気がする。
「おーいロナ、リリア、イリスー」
学園ではちょうど昼食の時間だったようで、三人はご飯を食べていた。
が、その手を止め、飛んで来た。
「ライル!」
「ライルさん!」
ロナとリリアが胸に飛びこんでくる。
「うおぅ!?」
そんなに喜ばれるとは思ってなかった。
正直嬉しい。
「寂しかったぁあ」
ロナは鼻水が汚い。そして俺の服にこすりつけんな。
「あ!いや、あの......その......」
リリアは俺の顔を見た瞬間、一瞬で顔を赤らめて体を離した。どうしたんだ?
すごく恥ずかしそうにしているが、何かあったのだろうか。
そして
「イリス」
「はひっ!?」
イリスはなぜか緊張しているようだ。
一向に近ずいて来ない。
ロナはいい加減、鼻をかめ。
「どうした?」
「いえ......私は......」
何か言いたそうにしているが、上手く聞き取れない。
するとリリアがイリスの所へ近ずいていった。
「何やってるの?イリスちゃん。ちゃんとおかえりって言わなくちゃ」
「リリアさん......は、はい!」
「一緒に行こ」
リリアがイリスの手を引っ張ってくる。
なんだ、イリスは恥ずかしかっただけなのか。
どうやら、イリスもリリアも仲良くなったようだし、良かったな。
「せーのっ!」
「「「ライルさん、レイラ、おかえりなさいっ!!!」」」
三人は声を揃えて言った。
レイラはすぐに「ん。ただいま」と言ったが、俺はすぐには言えなかった。
嬉しかったのだ。
こんなふうに、ただ単に「おかえり」と言われることが少なかったからかもしれない。
だから、驚いてしまった。
俺は、少し間を開けてから微笑んで言った。
「ただいま」
その日の夜は、よく眠れた。
朝のホームルームで、ルアンナ先生は珍しく真剣な表情をしていた。
魔術大会以来だ。
「みんな......魔術大会並のことがあるわ......」
は?
「魔術学園祭よ!」
いえーーーい!!と、周りの人は喜んだ。
凄く盛り上がっている。
なんだそれ?学園祭?この世界の学園にも学園祭というものがあるのか。
というか魔術大会から早くないか?
まだ終わったばかりだと思っていたのに。
「あ、イリスちゃんは学園祭知らないんだっけ?」
「は、はい」
「まぁ他にも忘れてる人がいるでしょうし、説明するわね」
魔術学園祭。
それは、俺のいた世界で文化祭とも言う。
しかし、やることは違う。
魔術によるショーを代表生徒何人かで競い、それを他の生徒が見るというマジックショーのようなものだ。
中にはクラス全員でやるものもあるそうで、俺のいた世界とは違って、屋台などが無い。
それでも、結構楽しいそうだ。
「それじゃあ、このクラスは何かやる?」
そうルアンナ先生が言った瞬間、全員はアルスの方を見た。
凄い一体感だ。
「し、仕方ねぇな。まぁ俺は勇者の孫なわけだし、すっごい魔術を見せてやるよ」
おー!だの、わーきゃーわーぎゃークラス全員が騒いだ。
確かに、アルスのショーは見てみたいものだ。
闘うためではなく、人々を魅了する魔術。
楽しみだ。
そう、楽しみにしていたのに、ホームルームが終わった途端俺はアルスに呼び出された。
「ライル!助けてくれ!」
「何を?」
アルスが助けを求めてきた。
勇者の孫ともあろうものが、モンスターである俺に一体なぜ助けを求めるのだろうか。
「調子乗ってショーをやるとか言ったが、全然わからん!頼む!教えてくれ!」
聞けば、アルスは人を喜ばせるのが苦手で、モンスターを倒すことしか脳が無い。
故に、俺に助けを求めたわけだ。
俺だって異世界の出し物なんて知らねぇよ。
なぜ俺に頼んで来たのかは知らないが、力になることは出来ない。
まぁ自分でやるって言っちゃったんだから、自業自得だ。
俺のいた世界だったら、バンドとかが人気だったな。
ロックなやつを、学校で弾くというギャップ。
あの盛り上がりと言ったら、そのためだけに文化祭をやっていると言っても過言ではない。
「あ、じゃあバンド組む?」
「ばんど?」
ランベルトさんのところで鍛えた魔力、そして創造力。
とくとご覧にいれてやる。
ということで、めっちゃ頑張ってギター、ベース、ドラムを創造した。
大変だったのが、ハードロックという音を拡張させる石を、アンプに改造することだ。
アンプの仕組みなんて知らないから、とりあえずギターをぶっ刺して、それっぽい音が出るようにして......と、凄く頭を使った。
結果、なんとかそれっぽいものが出来上がる。
「ほう、面白そうなものが出来てますね」
「ライオネル王」
王様が直々に見にこられた。
「お父様!わざわざ来なくたって......」
「はっはっはっ、いいじゃないか。可愛い娘の頑張りを見たいのは、王様でも同じだよ」
もう!と言って恥ずかしそうに怒るイリスも、これまた可愛い。
そして、俺達は早速練習にとりかかる。
と、言いたいところだったのだが......
「この胸騒ぎ、どうも落ち着かないな」
「どうかしたんですか?」
イリスが、俺の身を案じて水を持ってきてくれた。
さっきから作業にあまり手がつかない。
予感。
俺の第六感が、全力で危険を知らせていた。
「何か、嫌な予感がするな」
すると、見張りと思われる一人の兵士が、急いで走ってきた。
「申し上げます!水路に謎のモンスターが現れましたァ!」
「なにィ!?」
謎のモンスター?
しかしこの焦りよう、そして俺の胸騒ぎ。
本当に嫌な予感しかしない。
「ライル君」
「少し見に行ってきます」
「こ、こっちです!」
俺は、兵士の人に案内をしてもらい、その様子を見に行った。
近づくに連れて、どんどん気配が強くなっていく。
この感じ、前にも感じたことがある。
そう、忘れもしない、あの感覚。
圧迫されるような、まるで神様でも相手にしているかのような気分にさせられる。
「ここです!」
着いたところは水路。
王都は水源が遠く、大きな水路を作って水を引っ張ってきている。そしてその大きな水に、所狭しと収まっているモンスター。
大きな亀だ。
そしてその体には、大きな蛇が巻き付いている。
しかしどちらも喧嘩しているわけではなく、まるで共生しているかのようだ。
「遂に来たか」
前が青龍なら、今度は玄武。
四神の一つ、伝説級モンスターのお出ましだった。




