ユニオン加入試験
ユニオン研修最終日。
今日は、ランベルトさんに教わる最終日だ。
そして、上手く行けば将来入ることになるであろうユニオンの研修最後の日だ。
「今まで、ありがとうございました!」
「ライル君、君は物凄く強くなった。というか元々結構強かった。お疲れさん!」
え、それだけ?
「流石は魔王の力を持つだけのことはあるな」
......え?
「今......なんて?」
「君、魔王なんだろ?正確には魔王の力を持ったモンスター」
どういうことだ......ランベルトさんは、俺が魔王の力を持っていることに気付いていた!?
「いや、違いま「まぁ待て安心しろ。君に害が無いことは充分、分かっている」
俺はそれを聞いて胸をなで下ろした。
今まで隠して来たのに、ついにバレてしまったかと。殺されると思った。
「実は、君をユニオンに呼んだのは勇者候補のためではなくてね。試すためだったんだよ」
「試す......?」
「そう。前の大会の時に、君の剣に見覚えがあった。その腰から下げている剣にね。それは魔王しか扱えない、魔王専用の剣だ。そんなものを持っている人間がいるわけがない」
そ、そうだったのか......通りで普通の人には扱えないわけだ。
この剣は俺の魔王の力に惹かれて出会ったというわけか。
それを全てお見通し、さすがは勇者の息子だ。
やはりランベルトさんは侮れないな。
「でも、見た感じ悪くなさそうだし。思い切ってユニオンに勧誘してみたんだ。その結果、問題はない事が分かった。それで、どうせなら勇者候補にしてしまえと」
「それはあまりにも強引すぎです......」
「ま、他言は絶対にしないからさ。気が向いたらなってみるのもいいかもね」
気が向いたらな。
絶対向かないと思うけど。
「それと、もう一つ。ライル君は私のユニオンに入らないでくれ」
「え?」
「むしろ私が入る」
何を言っているのかさっぱり分からない。
ユニオンに勧誘しておいて入らせない?
まぁ、そういうこともあるだろうけど、急になぜ?
「君は強い。私よりもね。だから、私のユニオンより、自分で作った方が良い。そしたら、そのユニオンに私を入れてくれ」
「い、良いですけど......」
そんなのありなのだろうか。
勇者の息子を、自分のユニオンに入らせるだなんて。
勇者ファンの人から苦情が来そうだな。
まぁ、それだけ俺の実力を認めてくれたということか。
「それで、テストをやるんだが......もう既に済ませてある。この前の君からふっかけてきたやつだ」
え、あ、あれがテストだったのか。
勝手にテストされていた。
「後は、何かモンスターを狩ればそれで合格なんだが」
「どうなやつを狩るんです?」
「中級モンスターだ。私が監督のもと、数人チームで狩ってみせる」
数人チーム?
そっか、普通は勧誘は数人。俺が一人だけ呼ばれたということ自体、異常だったんだ。
それに、練習でもう既にモンスターを狩っている。ということは、これも無しか?
「残念だが、こればっかりはやらなくてはならない。私だけではなく、ギルドの者も見学に来る。それで合格して、初めてユニオンへ加入することが許される」
なんだ、そうなのか。
それなら仕方が無いな。
「君なら一人でも大丈夫なんだが、それを決めるのはギルドの方でね。やはり、どうしても二人または三人でチームを組まなくてはならないそうだ。ということで、私の知り合いから取ってくる」
そう言って、その知り合いという人に馬車で会いに行くこととなった。少し遠い。
どうやら知り合いの人もユニオンの長をやっているらしく、一人だけ勧誘したそうだ。
条件は俺と同じ、どうせなら一緒に組もうということだ。
「着いたぞ。ここが奴らのユニオン拠点だ」
「おぉ......」
随分と大きな家だ。
中には訓練場まである。
「こっちだ」
俺は、ランベルトさんについて行く。
訓練場に行くようだ。
俺と組むということは、そこそこのチームワークも見せなければならない。
たとえ一人でモンスターを倒せたとしても、おそらくチームワーク皆無ということで合格にはなれない。
出来れば俺と同じくらいの実力だと良いのだが......
「やぁ、ヘラルド。来たよ」
「お、ランベルトか」
あの人か。
なんだか、体つきはそんなに良くないように見える。
細マッチョって感じか?そして頼りなさそうな雰囲気だ。優しそうとも取れるけど。
というか剣みたいなのが肩に刺さってるな。
変なファッションだ。
ところで、学生と思わしき人が見当たらないのだが。
「お前が噂の学園一位ね。話はきいてる。よろしく」
「ライルです。よろしくお願いします」
「ライル!?」
ん?なにやら名前を呼ばれたぞ?
すると奥の方から見覚えのある人が顔を出した。
「レイラ!?」
ここでお世話になっいる人は、レイラだった。
「なんだ知り合いだったのか。レイラ」
「うん。同じチーム」
レイラもユニオンに勧誘されたのはもちろん知っていたが、まさか一人だけだったとはな。何たる偶然。
勇者の息子で、さらにレイラを勧誘する見る目がある。やはり相当な実力者なのか?
そうは見えないが。
「俺はヘラルド。ヘラルド・ペタンだ。まぁ、レイラもライルもお互いに知り合い、というかチームなんだし教えることは少なそうだから、ちゃっちゃと済ませてしまおうか」
場所を移動した。
先にランベルトさんとヘラルドさんが見本を見せてくれるらしい。
レイラと組むのは初めてでは無いが、ちゃんと連携出来ていたとは言い難い。
「じゃあ、本番よりも少し弱いが、ジャイアントクラブを狩ろう」
ジャイアントクラブ。見た目と名前からして、明らかに蟹だ。明ら蟹だ。
しかもすごく大きい。
一本の脚が電信柱三本分ほどの大きさだ。
つまり、爪はほぼトラック。尖ったトラックに挟まれるようなもの。
しかしその分、その身に詰まっているものは高級なのだろう。
「ヘラルドはあぁ見えて見た目通りだ。全く参考にならないから、気にすんな」
ボソッとランベルトさんが俺にこっそり教えてくれた。
見た目通り?つまり弱いのか......?
それでよく組めるな。
「よし、組むのは久しぶりだがいけるか?」
ランベルトさんは剣に手をかざし、構える。
「あぁ、久しぶりだな」
ヘラルドさんも武器に手を......いや武器が無い。
「あれ?俺の剣しらない?」
「あの......刺さってますけど......」
「あぁ、これだこれ。ありがとう、最近忘れっぽくてね」
ヘラルドさんは肩から剣を抜いた。
少し血が飛び散る。それ武器だったんかーい。
というか剣が刺さってること忘れるってどういうことだよ......
「よし、じゃあ始めようか」
「行くぞ!」
二人は左右に別れて、蟹を挟み撃ちにする。
ハサミに挟まれないよう、挟み撃ちにする。
「ふんっ」
スパッスパッと華麗に脚を切り落としていく。その切り口は綺麗に真っ平らだ。
蟹の動きを封じているのだろうが、そんなことよりむき出しの身がぷりっぷりで美味そうだ。
俺は滴るヨダレを我慢しながら、ふとヘラルドさんを見る。
「あぁあ、あぁあ、ぁあ」
なんか挟まれてね?
蟹のハサミは、見事にヘラルドさんの腹に食いこんでいる。そして振り回されている。
「ヘ、ヘラルドさん!?」
「大丈夫気にすんな。もう慣れた」
慣れた?いやいや、慣れちゃダメでしょ。
でも確かに顔は苦痛の表情をしていない。
普通の表情だ。
「あーこれだめだ抜けねぇわ。一旦切れる」
え?
その時、俺は目を疑った。
ヘラルドさんの肉体が、上半身と下半身に分裂したのだ。
つまり、切られた。見事に真っ二つ。
「ヘラルドさーん!!」
「はいよ」
またまた俺は驚かされる。
ヘラルドさんから返事が来たのだ。
普通人間は、いやモンスターもほとんどが、身体が真っ二つに切られれば死ぬ。
にもかかわらず、ヘラルドさんは生きていた。
それどころか上半身と下半身をくっつけて、みるみるうちに回復していくではないか。
「よっと」
あっという間に元通り。
傷跡すらも残さず、ヘラルドさんは元気に立ち上がった。
俺は、驚きを隠せない。
「ヘラルド、トドメはやる」
「どうも」
ヘラルドさんは蟹の脳天に剣を突き刺した。
結局、ヘラルドさんがやったのは、蟹のヘイトを貰っただけだった。
戦闘後。
「いやぁ、やっぱキモイね。ヘラルドのその能力」
「まぁな」
皆で、蟹を食べながら会話をしている。
俺のいた世界とは違って、無言にはならないようだ。てか美味しい。
「すまないライル君。驚かせてしまったな。ヘラルドはこういう能力を持っているんだ」
「正確には能力じゃないけどね」
ヘラルドさんは、固有魔法リジェネの持ち主。
リジェネは、ダメージが完全回復するまで永遠に治り続ける能力で、四神の攻撃は死ぬまでダメージを負い続けるというもの。
それにより、即時回復が常時続いている。
つまり、死ぬ前に回復してしまう。
不死身だ。
最初は痛みがあったが、もう慣れてしまったせいか、刃物が刺さっていることにすら気が付かないらしい。
「まぁ、四神との相性が悪かったってことかな」
「絶対に死ねないんですか?」
「そんなことはないと思うよ。跡形もなく焼かれたり、消しさられたらさすがに死ぬんじゃないかな?」
自分でもよく分からっていないらしい。
「それで、全く参考にならなかったと思うが、 明日までには必ず君達のチームワークを向上させる。絶対に合格して来てくれ」
「もちろんです!」
「ん」
それから俺達は、二人での闘い方を学んだ。
基本はどちらかがヘイトを貰っている間に、片方がダメージを与えるというやり方。
さらに行けば、ヘイトを迷わせることで、一方的に攻撃できるやり方など、いろいろと教わった。
試験は明日。
俺はユニオンに入るわけでは無いが、ユニオンを作れるようになる。
レイラとなら大丈夫だろうと、あまり緊張しない夜だった。




