ユニオン勧誘
「えー、この後ライル君は先生のところまで来なさい」
え?
俺は久々に呼び出しをくらった。
何かしたか?
「最近、ユニオンの勧誘が始まっているのは知っているわね?」
もちろん知っている。
魔術大会で優勝したことで、興味を持たれた人はユニオンから勧誘が来る。
凄ければ凄いほど、勧誘は多いのだ。
例えばアルスは、五十件近く来ている。
みんな、アルスのような実力者が欲しいのだ。
俺達のチームからは、レイラが高階級のユニオンに行っている。
それに比べて俺は0件。
おそらく派手に転んだのが原因だろう。
土壇場で足を引っ張られるのは困るとか、そんな理由か?
過去にも、一位の生徒に一件も勧誘が来ない例は無かったそうだ。
「それが、今更になって来たのよ。一件だけ」
「え?俺にですか?」
「そう」
驚いた。まさか、茶化しだとかは無いだろうな?
ユニオンに呼ばれた生徒は数日間、プロの冒険者のチームに仮で入り、その闘い方などを学ぶ。
学園で学ぶよりも、より実践的だし、プロに教えてもらうことが出来る。
簡単に言えば、インターンシップのようなものだ。
ただ、この場合はユニオンから勧誘が来る。
あちらが選ぶ側なのだ。
もちろん何件も来たら、その中から選べる。
しかし俺のように0件、または一件の場合は、当たり前だが選ぶも何も無い。
まぁ、その一件がすごい人からの可能性もあるっちゃあるんだが、その期待は出来ない。
「どこのユニオンからですか?ある程度なら調べましたから、知っていますけど」
お恥ずかしながら、俺はすっかり勧誘が来る気分でいた。
それにレイラのユニオンもあるし、一度しっかり調べておこうと思い、ギルドを廻っていたのだ。
「それが......」
ルアンナ先生は頭を抱える。
酷く悩んでいる様子だ。
そしてルアンナ先生は何かを決意したかのように、勢いよく俺の方を向いた。
「ランベルト・クレイオス」
聞いた事無いな。
小規模なユニオンなのか?
「知らないって顔ね。まぁ無理もないわ、彼はユニオンというか、チームすら組んでいないもの」
どういうことだ?
個人から来たって…...ことか?
「はぁ......正直、あなたには勧めたくないのだけれど......まぁ、ライル君なら大丈夫だと信じるわ」
何?何?何か危険なのか?
そのランベルト・クレイオスってのはどういう人物なんだ?
全く見えてこない。
「いい?何があっても、絶対に正体を晒しちゃダメ。名前に聞き覚えがあるでしょ?」
名前......ランベルト・クレイオス。
ランベルト......クレイオス......クレイオス?
クレイオス。
あ!
「アルス・クレイオス」
「そう。アルス君のお父さん、勇者の息子よ」
俺は、少しの間固まってしまった。
バインドもされていないのに、まるで動けないでいた。
そんな大物がなぜ俺なんかに?
アルスは?
様々な疑問が浮かぶ。
正体を晒しちゃダメってのは、勇者の息子だからか。
勇者と対立する魔王の力を持っている俺、そんな俺が鳥の姿にでもなれば、すぐにバレてしまうことだろう。
ランベルト・クレイオス......一体なぜ俺に勧誘を?
「それじゃあもう今日だから。早速行ってらっしゃい」
ルアンナ先生は手を振ってくる。
え?今日?
今から?
「え」
「ほら急いで!もう学園の門で待ってるらしいから」
早っ!?
どんだけ俺が待ち遠しいんだよ。
まぁ、優しさってことか。
俺は急いで準備をし、門へ向かった。
「いた。あの人か?」
それらしい人発見。
思ってたよりも若く見える。
「あの」
「ん?あぁ、ライル君か。待っていたよ」
優しそうな人だ。
アルスとは大違い。本当にお父さんなのか?
「私はランベルト。君を勧誘、というか呼んだ人だよ」
「はい、この度は呼んでいただき感謝します。して、なぜ俺を?」
「まぁ、まずは場所を移そうか」
そう言ってスタスタと歩いて行った。
場所とはどこの事なのか分からないが、とりあえずついて行く。
着いたのは、森の奥地だった。
「それで、なぜ君を呼んだのかという質問だったね」
「はい」
「それはね、単純に気になったからさ。君の力が」
その言葉を聞いた途端、俺は寒気がした。
力。
正体。
魔王。
「あの時、転んでしまったからなかなか勧誘が来なかったのかもしれないけれど、私にはちゃんと見えていたよ。君がハメられたのも、君の実力も」
それを聞いて安心した。しかし、この人は凄いな。あんなに隠してたつもりだったのに、俺の力を見破るとは......まさか本物の勇者の息子か
「自己紹介が遅れたね。私はダイヤ級冒険者であり、一人でユニオンを作っている」
ダイヤ級......ゴールド級の上のプラチナよりも、さらに上の最上階級。初めて見た。
「あの、一つ質問良いですか?」
「一つと言わずいくつでも。私は君にその実力を生かして欲しいんだ。故に闘い方を学んで欲しい。そのためだったらいくつでも質問は歓迎だよ」
「それじゃあ......あなたは勇者の息子さんですか?」
「......」
俺の言葉を聞いた途端、ランベルトさんは黙った。
さっきまでの明るい笑顔は、どこか引きつったような笑いに変わり、声のトーンも低くなった。
「そうか、ルアンナか......」
ボソッと聞こえたが、ルアンナ先生の名前が出た。知り合いみたいだな。
「まぁ、昔そう呼ばれていたこともある。それよりも特訓を始めよう。私のことよりも、今は君だ」
これは......あまり触れちゃいけない話題のようだな。
なぜだか分からないが、あまり勇者の息子とは言われたくないらしい。
アルスのことを聞くのはやめておこう。
「特訓と言っても、ほぼ実践だがな」
その後、俺は色々と説明を受けた。
どういうモンスターがいるのか、どういうモンスターに対して、どのような攻撃が有効なのか。など、口頭で説明されたり、実際に闘ったりした。
たった一日で、たくさんのことを教えて貰えた。
まぁ、ほとんどが知っている事だったけど。
「明日もまた来てくれ。君にはやはり才能がある」
「えぇ、ありがとうございます。是非学ばせて下さい」
明日はモンスター狩りで、技をいくつか教えてくれるらしい。
俺は、いつのまにか楽しんで学んでいた。
このまま強くなって、魔王をも超えられるといいな。
などと、密かに思うのだった。




