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イリス

大会の優勝を祝って、学園長が食事会パーティーを開いてくれた。学園長はとても生徒思いな人だ。

大会の優勝記念だが、俺達にとってはレイラの無事を祝ったものでもある。

しかしまだ残党を探さなくてはならないのだが、手がかりも無く、今すぐに探す必要は無いだろう。

今は、このパーティーを楽しんでいたい。


「食事も豪華だし、楽しいなこれ」

「ライルさん!これ美味しいですよこれ!」


リリアが何かの肉を取ってきてくれた。

この世界の食事は、どれも美味しい。

とてもボリューミーで、おフランスな感じだ。まぁフランス行ったこと無いけど。


「たまには日本食が食べたいなぁ......」

「何か言いました?」

「いや何も」


そうだ。今度何か作ってやろう。

この世界に無いものを作って、案外人気出ちゃったりするんじゃないか?

などと、結局パーティーでは無く今後のことを考えてしまう俺だったが、パーティーは大いに楽しんだ。



そして翌日。

俺達は、またいつも通りの日常を過ごす。

と思っていた。

だが違った。俺は新王となったライオネル・ベリー王に呼び出されていた。


「これから学園だというのに、申し訳ありません」

「いえいえ、なんなりとお呼びください」


たしかに朝早くから呼ばれたのには驚いたが、ちゃんと学園に通っていることを考慮して、授業の始まる前にしてくれたのはありがたい。

ライオネル王は、旧王であるブラムとは違い、国民に顔を見せている。当たり前だけど。

このように人柄が良いのだ。


「しかし、もうライオネルさんは王になられたのですから、敬語なんて使わなくても」

「いえいえ、助けて頂いた恩は忘れません。ですが、確かに少し堅苦しいですね。なら、これでどうだ?」

「あぁ、一段と王らしくなりました!それでよろしいかと」

「うむ......少し恥ずかしいけど、まぁ王のように振る舞うのもまた王の仕事か」


ライオネル王は真面目だ。


「それで、なんの御用でしょう?」

「ああ、実は私に娘がいてですね。この前の出来事を伝えたのですが、どうやらライルさんに興味を持ったらしく、お会いしたいと」


娘さんか。

というかもう言葉使いが戻ってるし。

まぁ別に、合わない理由は無いが......


「構いませんよ」

「では。イリス!」

「は、はい!」


王が呼ぶと、部屋の端っこからちょこちょこっと出てきた。

恥ずかしがり屋なのか、あまり堂々としていない。

しかし見た目は相当な美人で、思わず見入ってしまう。


「は、初めまして。イリス・ベリーです」


なんだか、ロナ達と初めてあった頃を思い出す。特にリリアは、初めの方は緊張していて、いつも「は、はいっ!」って感じだったなぁ。

今ではもう成長して、とても元気に振舞っているけどな。


「それで、あなたにお願いがあるんですが」

「なんでしょうか?」


王の言うことならなんでも聞こう。この王なら、そう思える。

しかしなんだろう。案外、「握手をしてくれ」だったりするのではないだろうか。

それだったら可愛いもんだな。

俺はそんな予想をしつつ、王の言葉を待つ。


「娘と結婚してくれ」

「あ、良いで......え?」


それは、俺が予想していることより何十歩も先を言っていた。

聞き間違いだろうか?もう一度聞いてみよう。


「失礼ながら、今なんとおっしゃいましたか?」

「結婚です。結婚。私の娘と結婚して欲しいのです」


う〜ん......何度聞いても結婚にしか聞こえないな。


「王家は必ず結婚をしなくてはなりません。しかし、普通なら他の国の長男などの、同じ王の息子を婿とします。しかし、そんなどこの馬の骨かも知らない男には渡したくないのです」

「は、はぁ......」

「そこで、あなた。ライルさんなら信用出来る。あなたは恩人です、レイラを助けてくださり、この王国を救って下さりました」


それで俺か。まぁ経緯は分かった。

だが、他の国にもっと良い男なら沢山いるのでは?


「娘さんの意思はどうなんです?他の国ならもっといい男がいるでしょう」

「私は、ライルさんが良いなぁなんて......」


おいおいマジかよ......そんな早く決めちゃって良いのかよ。まだお互いのことも知らないんだぞ。


「申し訳ありませんが、もう少し考えさせて下さい。嫌というわけではありませんが、他の男の人が見つかるかもしれませんし、まだお互いのことも知りません。ですのでこの話はお預けに」

「そうですか......たしかにそうですね。今すぐにでもというわけでもありませんし」


良かったぁ......本当に嫌という訳では無い。むしろ喜ばしいことだ。

だが、ちょっと俺には早すぎるな。

高校生の時に死んで、彼女いない歴イコール年齢だった俺からしたら、結婚だなんていきなりすぎる。

まだ三分経ってないのにカップ麺を食べ始めるようなものだ。

いや、それは違うか?

とにかくまだよく分からない。


「なら、せめてお近くにでもいさせてください」


イリスさんが頼んできた。

う〜ん......お近くにって言ってもなぁ。


「だめ......ですか?」


ライオネル王は俺に娘さんを預けて、護衛も兼ねてのお考えだろう。

たしかに俺なら心配は無いからな。

それにしてもイリスさん本人の、この強い推しはなんだ?嫌じゃないのか?


「まぁ、別に構いません」

「やった!」

「おお!それではこれから、娘をお願いします!」

「え?」


お願いします?


「え?」


話はその後の学園まで飛ぶ。

俺は、そこでやっと「これから娘をよろしく」の意味がわかった。


「イリス・ベリーです。よろしくお願いします」


にこやかな笑顔だ。

クラスの男子も、女子も、みんな見とれている。

先程、王の娘だと聞いた時の静けさとは大違いだ。「可愛い〜」なんて声を漏らす人もいる。


「それじゃあ、席はあそこね」


そう言ってルアンナ先生は、俺の隣を指さした。

いつの間にか空いている。

おいこれ絶対ライオネル王の仕業だろ!


「よろしくお願いしますね、ライルさん」


か、可愛い。じゃなくて、おい。

なんで転校してきてるんだよ。なんで俺と同じクラスなんだよ。なんで俺の隣の席なんだよ。

しかし、それらの考えは彼女の笑顔によってかき消されてしまった。

授業が終わった後、俺はロナ達に連れていかれた。

その間イリスさんはクラスメイト達に質問攻めにあっていたが、そんなに困った様子では無いので大丈夫か。


「で、何あの子?」

「なぜ俺に聞く?」

「あの子、自己紹介中もほとんどライルさんのこと見てましたよ。それに朝もライルさん居ないし、何かあるならライルさんです」


なかなか鋭い奴らだ。困ったな......別に内緒にしろとは言われていないが、なぜか今その話をすると俺の身が危ない気がする。

ここはなんとか誤魔化しておこう。


「えーっとだな......イリスさんは......」

「婚約者ですっ!」


どこからともなくイリスさんが現れた。

そして、そのセリフがいけなかったのか、ロナとリリアの顎が外れる。


「こ、こここ、ここここ」

「婚約ちゃ....婚約者ですか......?」

「む」


顎は外れていなかった。大丈夫なようだ。

それにしても焦りすぎだろう。

まぁ、俺も最初は焦ったけど。


「あ、あの......イリスさんじゃなくて、イリスと呼んでください!もっと気軽に話しましょう!」

「そ、そうか?なら、イリス」

「はぁい」


なんだこれ。

これがデレと言うやつか。初体験だ。


「え、あ、あの......」

「本当?」

「いや、俺はお断りした。さすがにいきなりの事だったからな」


それを聞いた途端に、三人は安堵の息を漏らした。

なぜだ。


「えっと、それでも学園についてきちゃったわけですか」

「まぁそんなところだろうな」


さすがはリリア。物分りのいいやつだ。

そして、ロナもレイラも分かってくれたようだ。


「よろしくお願いしますね、イリスさん!」

「うぇっ!?あ、よ、よろしく......お願い......します......」


すっごい緊張っぷりだ。

おそらくこの感じだと、今まであまり友達とかいなかったのだろう。

ずっと城に閉じこもっていて、あまり同年代の子と話したことがない。

それは、イリスを取り巻く環境なわけであって、仕方の無いことだった。

しかしこうして、俺がいることで外に出られるのであれば、俺はそれだけで充分役に立てているだろう。


「おそらく、俺と一緒に行動するのであればということで外出を許可されたんだろ?」


するとイリスはコクコクと頷いた。

つまり、俺と一緒にいるなら心配は要らないと、相当気に入られているようだな。


「なら、今日からイリスも仲間だ。それでいいだろう?三人とも」

「もちろん!」

「はい!」

「ん」


決まりだな。


「それじゃあ、改めてよろしく!イリス」

「はい!よろしくお願いしますします!皆さん!」


こうして、イリスが新たな仲間に加わった。

これでまた、一段と学園生活が楽しくなることだろう。

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