一件落着
レイラは小さい頃、王様に引き取られたらしい。
どういう経緯かは分からないが、物心ついた時にはもう王のものだった。
王ブラムは、レイラを最強の戦士へと改造した。
かつて勇者が四神と闘った際に落とした、四神の一部をを体内に埋め込み、無理やり魔力増強、強化をした。
地獄のようなトレーニングを強いて、運動能力を上げた。筋肉がブチブチと音を立てようが、もう立ち上がる体力すら残されていなかろうが、回復魔術で治してはまた訓練させた。
そんな非人道的なことを繰り返しているうちに、最強の戦士へとなっていったのだ。
ブラムが最強戦士を作った理由は、四神から身を守る為である。
四神は、伝説級のモンスターである。
勇者ですらも手を焼くという、魔王にも匹敵するほどのモンスター。
そんなものがこの世界に存在する限り、安心して暮らすことは出来ない。
いつどこで来るのか分からない恐怖があるのだ。
だから最強の戦士を作ることに決めた。
いないのなら人工的に作ればいいと。
しかし、その計画は失敗に終わった。
いくら人工と言えど、ゼロから作ることは不可能。よって、人間を強化することにした。
それがいけなかったのだ。
人間は、完全に支配することが出来ない。
その証拠に、レイラは逃げ出して来たのだった。
そして盗賊として生きていたところを、俺が仲間に引き入れる。
しかし、王はまだ計画を諦めてはいなかった。
レイラから採取したデータを元に、もう一度挑戦した。
そして成功したのが、ノクディ・オロンという生物だった。
だがノクディだけでは、やはり四神は倒せない。
もう一度ノクディのようなものを作り上げるにはコストがかかりすぎる。それに、時間もかかる。
なら、もう完成しているレイラをもう一度引き戻し、利用するのが一番だと考えたのだろう。
「なるほどな。だから今更レイラを取り戻しに来たのか」
「うん......私は対四神用の兵士、私がいれば相当な戦力になるはず」
「国のために......か」
国のためにレイラが必要。
つまり、俺がレイラを側に置いていることで、国は危険になる。
だが、そんな話が飲めるわけがない。
そんな非人道的なことを、許せるはずがない。
「俺が倒してやる」
「え?」
「俺が四神を倒せば、国は救われるし、レイラだって無理して闘わなくてもいいだろ」
アジュードラだって倒したんだ。
残り三体も倒せるはず。俺は魔王の力を持っているわけだし、勝てないということは無いだろう。
「でも、私が城へ戻れば......」
「駄目だ。もうお前は俺達の仲間なんだ、あんな王の所に戻る必要はないんだぞ」
その俺の言葉を聞いた途端、レイラは泣き出した。
今まで、どんなときもリアクションが薄かったレイラだが、今は大いに泣いている。
こんなレイラ初めてだ。
「お、おい」
「ライル......ライル......」
レイラは、涙と鼻水でぐしょぐしょになった顔を擦りつけるように抱いてきた。
仕方が無いので、そのまま抱き返してやる。
「もう大丈夫だ。安心しろ。俺が勝って、お前を自由にしてやるからな」
「ライル......ありがとう......」
「馬鹿、それは勝ってから言えよな」
しばらく、レイラを抱いてやっていると、一通の手紙が俺の元に届いた。
見てみると、王からの手紙だった。
『場所は城。お前が「レイラ」と呼んでいるそれも持ってこい』
と書いてあった。
「レイラを物みたいに言いやがって」
ノクディ、お前は絶対に倒してやる。
待っていろ。
俺は城へと来ていた。
レイラと二人っきりでだ。
ロナとリリアも一緒に行くと言って、言う事を聞かなかったが、危険な目に合わせるわけにもいかない。
人質にされたりでもしたら、たまったもんじゃないからな。
だから、ルアンナ先生に任せてある。
「さてと、早速城の中へと入っていくわけだが......」
「ん」
準備は完了のようだな。
よし、行くぞ。
俺は大きな声で叫んだ。
「すみませーん!エイブラッド学園のライルですがー!開けて貰えませんか!」
実の所、城への入り方をよく知らない。
というか、入ったことない。
まさかこの大きな扉を自分で開けて入れとは言わないだろう。
これが見せかけだとは思えないし。
よくアニメや漫画で見るのは、この大きな扉が開いて、馬に乗った兵士達が出ていくところだ。
あの人達は自分では開けていない。
だからここもそうなのかなと思っていたが......俺の声が届いたのか、大きな扉はゆっくりと開き始める。
扉の向こう側には、一人の男が立っていた。
「お待ちしておりました。ライル様」
「ライオネル!」
レイラは、その人の元へと走って行った。
知り合いなのか?
まぁ城にいたのだから知り合いでもおかしくはないが、あんなに嬉しそうにするという事は、悪い人では無いのか。
「お元気でしたか。レイラ」
「うん!あの、ライルが助けてくれた」
優しそうな人だ。この城にも、レイラの味方がいるってことか。
「あのねライル、ライオネルは私を助けてくれたの!逃げるのに手伝ってくれて、私に名前も付けてくれた。良い人」
「えぇ、この子の境遇はあまりにも可哀想だと思いまして。王に使える身でありながら、こっそりと手助けをさせてもらいました」
「なるほど、そうだったのか」
「引き取って下さったのがあなたで良かったね......王達の話を聞いただけですが、どうやらあなたは良い人のようだ」
そんなことはない。俺は当たり前のことをやっただけだ。
困っている人を助けるという、当たり前のことをな。
だが、それがわからない人もいる。王のような、むしろ人を傷つけているような奴にはな。
「どうか......」
ライオネルは、俺の元へと近づいて来る。
そして、俺の目の前でしゃがみ、俺の手を取る。
「どうかレイラを救ってやって下さい......」
俺は、お願いをされた。
いい大人が、子供にするほどの事だろうか。
そんなことわざわざ言う必要は無い。
「当たり前だ。必ずレイラをすくってやる。だから安心して待っててくれ」
ライオネルは顔を上げて喜んだ。
「ありがとうございます、ありがとうございます」と、繰り返し感謝の言葉を口にしていたが、そんなことしなくてもいい。
俺が助けたいから助けるだけだ。
わざわざ頼もれなくても、やっていたさ。
「行くぞレイラ」
「ん」
俺は、城の中へと入って行く。
エントランスでは、ノクディが待ち構えていた。
「やぁ、懐かしいだろう?お前の育った場所だ」
「うるせぇ、悪いが今日は勝たせてもらうぞ。ノクディ・オロン」
ノクディは薄ら笑いを浮かべた。
大会での爽やかさはどこにもない。
「ついてこい。闘技場へ案内する」
俺達は、少し警戒しながらもついていった。
ノクディ・オロン、ディアノラ学園においてトップの成績を誇る。
だが、その実態は強化人間。
人間であって、人間ではない。
しきしそれはレイラも同様に、身体の一部がモンスターだ。
「ここだ」
目的地の闘技場。
学園のとは特に代わりはないが、見物席に王ブラムが座っている。
その顔、後で一発ぶん殴ってやるからな。
「再起不能になった方が負けだ。別に殺しても構わないが......」
「いいだろう。そちらも殺す気でかかってこい」
もちろん殺すなんてするわけがないが、死ぬほどの痛みは味わってもらうことになりそうだ。
ノクディ、手は抜けない相手だ。
「それでは、行くぞ!」
ノクディは剣を抜き、高速でこちらへと向かってきた。
剣は一度見たことがある、レイピア。
俺もすかさず剣を抜いて受け止める。
「そぅら!」
は、速いっ!なんて速い突きなんだ。
俺は少し押され気味になるも、全て剣で促している。
「さすがは強化人間、普通の人とは段違いの強さだ。だが、思ってたのより大したことないな」
「ほざけ!」
今度は俺から斬り出す。
横一線に、一度だけ斬る。
ノクディの連続技に対し、俺のは一発だけだ。
しかし威力が違う。剣はノクディには命中しなかったが、後の斬撃が飛んで行き、ノクディは弾かれた。
「ぐっ」
レイピアではガードが出来ない。
よって、速さと攻撃力のあるノクディよりも、速い攻撃を繰り出せばいいだけのこと。
ノクディは、自分よりも強い人がいるとは思っていなかった。
「クソがぁ!」
ガイィンと鳴り響く音。
ノクディは、たったの一撃でキレてしまった。
自分が一番強いと過信していたのだ。
故に、経験が少ない。
無理やり強化した肉体で、モンスターの破片から作った魔力。
そして、
「はぁっ!」
大会の時と同じ魔術。
全くの無詠唱で、技名すらも分からないが、レイピアを発光させて突きの威力を格段に上げるということは知っている。
「だがその技は既に見た!」
俺は、剣で横に流す。
火花が散り、ノクディのレイピアは俺の真横へと差し出された。
つまり、ノクディの身体はガラ空きだと言うことだ。
そして、俺は剣の柄を離した右手をノクディに向ける。
「イーグル・クロー」
これは、プロレス技で言うところのアイアンクローそのものだ。
右手でノクディの頭を鷲掴みにする。
そしてアイアンクローと違うのが、鷲掴みにしてから、地面に叩きつけるという所だ。
俺はノクディの頭を思いっきり叩きつけた。
「っ!」
声も出ていない。
それほどの威力を食らって、ノクディは動かなくなった。
そんなノクディより、俺は王の方を見た。
「お前の最強戦士は、こんなものか!」
しかし反応は無い。
悔しそうな素振りすらしない。
まるで、ノクディにはあまり期待していなかったかのようだ。
すると王は、下に降りてきた。
俺とノクディのいる所へ。
「このポンコツがッ!全っ然使えないやつだな!恥をかかせおって!!この!」
そう言ってノクディにそう罵声を浴びせた。
めちゃくちゃ怒ってるな。
もちろん、ノクディは俺が気絶させているので聞こえてはいるわけがない。
「お前はスクラップ行きだ!消えろ!ゴミが!!」
王は倒れているノクディを介抱しようとはせず、むしろ踏み潰そうとしていた。
「ショット」
「ぐへっ!?」
「お前なんかに、ノクディを罵倒する資格は無い」
軽く魔力ショットを飛ばした。
少し遠くまで勢いよく飛んでいくが、こんな痛み大したことないだろう。
「さてと、一件落着だな」
「うん!ライル、ありがと」
こうして、レイラは助かった。
ノクディを倒し、王を倒した俺は、ブラム王を騎士達に受け渡した。
今まで見つからなかった証拠を、俺の魔術で見つけ出したのだ。
「充分反省するといい」
しかし、そうなるとこの国の王がいなくなってしまう。
そこで、レイラを逃がしてくれたライオネルさんを王とした。
王の側近だったこともあって、王としての仕事は分かっている。
良い、新しい王様になりそうだ。
「しかし、旧王が心配なさっていた四神についてが、まだ未解決のままです」
「心配すんなって、俺達でなんとかするからよ」
「なんてったってライルは、アジュードラを倒した」
「!?」
ほう、それはすごいと、ライオネル王は感心していた。
これで一件落着だ。
しかし、ブラムが一人でレイラとノクディを作り上げたという可能性は低い。
まだどこかに残党がいることだろう。そいつらを見つけ出さない限りは、まだ完全に解決とは言いきれない。
絶対に許すわけにはいかない。
「それじゃあ王、また来ます」
「あぁ、ありがとうな。レイラも、またいつでも遊びにおいで」
「うん!じゃあね、ライオネル」
俺達は、ゆっくりと学園へ帰って行った。




