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ノクディ・オロン

「なんでノクディが......?」


ノクディ・オロン。

出るなら、模擬戦のところだと思っていたんだが......まさかこんなにも早くお出ましとはな。

実力を見ることが出来るのは嬉しいのだが、正直言って、勝てるかどうか怪しいところだ。


「あれ?歓声が少ないな」

「おそらく、ノクディ様が模擬戦で出ると予想していて、ハントで出たことに驚きかと」

「なるほどね。でも別に僕は模擬戦に出るだなんて一言も言ってないよね。そんな勝手に驚かれても困るなぁ」


ハントでノクディを出てきたのか。

ハントは逃げ回ったり、時には攻撃してくるモンスター達を素早く狩るという競技だ。

いかに速く、沢山のモンスターを狩れるのかが勝負。


『それでは、開始して下さい』


ゴングが鳴る。

それと同時に、大量のモンスターが放たれた。

ロナは、モンスターの弱点を発見するのが得意だ。

だが、決定打となる一撃を持っていない。

そこでロナの魔術、アサルト・インパクトを強化した。


「フィアス・インパクト!!」


ロナは、一撃でモンスターを倒す。

速い!

この調子なら一位を目指せる!

だが、やはり強敵となったのはノクディだった。

ノクディは、見たこともないような魔術でレイピアを光らせ、一度に二体のモンスターを貫く。


「頑張ってロナ!!」


リリアも必死に応援をする。

だが、ノクディの歓声に掻き消されてしまう。

気が付けば、ノクディはもう二十体目へとさしかかっていた。

これが天才か......俺は痛感した。しかしロナはまだ諦めていない。


「ロナ......」


今のところロナは二位だが、一位のノクディとの差は激しい。

少しでも気を抜くだけで、どんどん差を広げられてしまう。

それでも、ここにいる誰よりも勝てないことを悟っているロナ自身は、まだ諦めていない。

少しでも多く、少しでも速く。

もはやハントは、ただの作業と化していた。

モンスターの血に塗られながら、ロナは狩りを続ける。

それに比べてノクディは、血の一滴すらも付いていない。


「くッ!」


ロナは頑張る。

その差が縮まらないとしても、諦めない。

もう二位のロナと三位の差は、十体をゆうに超えている。だが一位と二位の差はもっとだ。

そのせいで焦り、剣さばきに雑味が出てくる。

だんだん荒っぽくなってきているのだ。

そして、金属のぶつかる音。

その重い響きが、会場中に反響した。


「......!」


ノクディとロナの剣が、ぶつかってしまったのだ。

思わずロナは尻餅をついてしまった。


「危ないだろ。気をつけろ」

「......」


ロナはその後も動かないまま、ハントは終わった。

その時間は、ほんの数分しかなかった競技の中だが、とても長く感じられた。

周りの人は、口々にロナの悪口を叩く。


「ノクディ様になんてことを」

「ノクディ様を邪魔する作戦だわ、ありえない」


あぁ、これがノクディ・オロンか。

ロナは二位だったのにも関わらず、絶望した表情で帰ってきた。

その足取りはとても重い。


「ロナ......」

「私......絶対勝てると思ってた......ライルにも教えて貰ったし、必ず優勝出来るって、自分の実力を信じてた」


けれど違った。

ロナの言葉は止まってしまったが、俺にはそこまで聞こえるようだった。

まるで勝てない。そう言いたそうだった。


「......ロナ」

「ロナ!!」


俺がロナを慰めようとする前に、リリアが飛んで抱きついた。

そのまま強く抱き締める。


「良いんだよ、二位でも。ロナは充分頑張った......これから強くなれはいいんだよ。だから......ね?」


ロナは泣いていた。

リリアの優しい言葉で、涙を流してしまったのだ。

そう、ロナは頑張った。


「悔しい......悔しいよぉ......」


リリアも、つられて泣きそうになっている。


「ロナ、その悔しさをバネにして強くなれ。今回はこれで充分だ。後は、レイラやアンドレ達に任せよう」


そう、まだ優勝は不可能なわけじゃない。

ロナが二位で耐えてくれたからこそ、まだ希望は残っている。


『続いては、レースです。該当の生徒は待機所へ』

「レイラ、優勝して来い」

「ん、分かってる」


ロナのためにも、ここで優勝するんだ。

そうすれば、なんとか同点まで行けるはず。

レースは、言わば障害物競走。

少し特殊な障害物を魔術でクリアして、ゴールしたものから順位が決まる。

至ってシンプルだが、毎年どんな障害物があるのかは分からないそうだ。


『それでは、準備をしてください』


レースは模擬戦に次ぐ人気の種目だ。

そして優勝の得点もそこそこ高い。

レイラは足が速いから、上位には行けると思うが.......


『それでは、開始します。レディ、ゴー!』


開始の合図は英語と同じなんだな。

そしてそれと同時に皆は一斉に詠唱しだした。普通のレースと違うのは、魔術を使えるということ。

各々、強化魔術を駆使して走り出す。

コースは結構広めで、どんな大きな障害物が出てきてもおかしくないくらいだ。


「!?」


レイラはスタートダッシュを成功させ、今のところは上位三位に食い込んでいる。

だがここでさっそく床から棒が出てきた。

いくつも伸びて来て、真っ直ぐ走る走者を邪魔する。

瞬発力のいる障害物だ。

しかしレイラは難なくかわしていく。さすがだ。

そこからは、ありとあらゆる障害物のオンパレードだった。

滑る床や、細い道での横から押し出してくる壁、もちろん落ちたら失格だ。

そしてさらに壁を走らなくては進めないようなコースまであった。

これは......思っていたのよりもハードだな。

しかしレイラは、どれも軽やかにかわしていき、もう二位にまで張り詰めている。

後は一人抜かすだけだ。

しかし、予想外の自体が起きた。


「おっと、すまねぇ」

「!?」


レイラが転んだのだ。

だが俺の目には見えていた。

明らかに一位のやつが、レイラの足を引っ掛けたのだ。

悪質な奴だ。だが、俺以外だれも気づいていないようで、ただレイラが転んだだけのようにみられている。

クソッ、最低な奴らだ。

それでもレイラはすぐに体勢を立て直し、再び走り出す。

もう既に二人には抜かされてしまった。


「くッ、もう使うしかない!」


レースはもう終盤戦。

ゴールが見えてきた!しかし、後三人抜かさなければならない。

体力は、スタミナ回復魔術でなんとかなるが、他の人もラストスパートにかかっている。


「ソニック・ファスト!!」


レイラはグンッと加速した。ラストスパートの魔術だ。

あらかじめ俺が教えておいたやつで、クイックリー・ムーブメントの上位互換だ。

常人ならすぐに魔力切れになってしまい、五歩ほど歩けば倒れてしまうのだが、レイラは魔力量が半端じゃない。

だからこそ使える技だ。

その力で、追い抜いていく。


「なに!?」

「は、速っ」


一人、二人と抜いていき、最後の一人。


「クソッ!」


もうゴールは目前だ!

あと少し、もう少しだけだ!


「うぉおおおおおおおおおお!」


ゴールテープをちぎったのは......


『一着、エイブラッド学園。レイラ!!』


レイラだった。

俺達は、大喜びをする。


「うぉおおおおしゃぁああ!!」


うわぁあああっと歓声が上がり、拍手喝采だ。

最後はすごく盛り上がったからな、他の学園の生徒も見入っていた。

そして何より、レイラが嬉しそうにしている。

何をしてもあまり表情が豊かとは言えないレイラだったが、今回ばかりは喜びに満ちている。

しかしそれ以上に疲れたのか、フラフラしている。


「大丈夫か?レイラ。ちょっと見て来る」


リリアにそう伝え、レイラの元へ駆けつけた。


「あ、ライル!私、頑張ったよ......えへへ」


レイラは倒れた。

もう少し遅かったら、俺はキャッチすることが出来ていなかったかもしれない。

それぐらいギリギリで受け止めることが出来た。


「大丈夫か?レイラ」

「うん。少し疲れただけ......ちょっとだけ休ませて」

「もちろんだ。だが危ないから、医務室へ運ぶぞ」


俺はそのままレイラを運んだ。

相当頑張ったもんな。それにしても一位は凄いぞ、レイラ。

だが、体調が悪いのはレイラだけではなかった。

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