練習
ここは何処だろう?
俺は、知らない場所にいた。何も無い空間。
しかし魔王の空間では無く、どこか寂しいような所。
ロナとリリア、そしてレイラが奥に見える。
なんだ三人とも、俺はこっちだぞ。
三人は俺に背を向けている。
おい、どうした?
三人は、俺に見向きもしないまま走り出した。
『おい!ちょっと待ってくれ!まだ俺は......!俺は!』
......はっ!!
目が覚めた。さっきのは......?
なんだか体が重たい。
俺は上体を起こし、重たい理由を発見した。
「レイラ......」
俺の上に、重なるように寝ているレイラの姿があった。
おいおい、ここは男子寮だし、アンドレとバリガもいるんだぞ。
だが、さっきの寂しい夢のことは、このレイラのおかげで少し安心することが出来た。
なぜあんな夢を見たのかは謎だが、今はこうして俺の側に居てくれている。
「レイラ」
俺は優しく頭を撫でてやった。
あまりにも気持ちよさそうに寝ているので、なるべく起こしたくはないが、今日も学園大会の練習がある。
早めに校舎へ行かなくてはならない。
「ん......」
「起きたか」
レイラは、眠気まなこをこすりながら、俺におはようと言う。
「駄目だろ?こっちへ来ちゃ」
「ライル......なんだか最近頑張ってばかり」
心配してくれたのか。
少しでも俺の側にいてくれようとしたのか。
俺はもう一度頭を撫でてやる。
「ありがとうな、レイラ」
「えへへ」
なんか、猫みたいだな。
首とか撫でたらゴロゴロ言うのかな。
「でも男子寮へは来ちゃダメだぞ。規則は守る」
「ごめんライル......」
俺は優しく叱ってやった。
でもそうか。俺は頑張りすぎなのか?
リリア達の種目が確定し、放課後に練習をし始めてからというもの。たしかに俺は人一倍張り切っているのかもしれない。
自分が出られないから、出る人をサポートしようと、バフを考えたり、魔術を教えたりしている。
そんな俺の姿に、ルアンナ先生は
「ちょっとライル君、教師の仕事まで取らないでくれる?」
と、少し顔をこわばらせて言っていた。
それを見て、他の先生は笑っていたが、俺は少し出しゃばり過ぎてるかもしれないな。
あんまりやり過ぎると、目立ってしまうのでいけない。
「連れて行くから、女子寮まで戻るぞ」
「ん」
俺は、レイラを連れて女子寮まで行く。
レイラは、ロナとリリアと同じ部屋だ。
ついでに武器を持っていくか。
俺は、ロナとリリアの武器を、大会に備えて強化していたのだ。
「おーい二人とも、起きてるか?」
部屋に入る。
他の人を起こしてしまわぬように、静かに扉を開けた。
見つかるとやばいしな。
「うぅ......ライル......さん?」
「起きたばかりで悪いが、強化しておいたぞ。また後で試しておいてくれ」
「分かりますた」
おいおい、ろれつが回ってないぞ。
ロナに至っては起きない。
「じゃ、また後でな」
「うん。あまり頑張り過ぎないでね、ライル」
あぁ、とレイラに返事をした後、俺は一足先に部屋へと戻った。
「あれ?さっきライルさん居なかっ......た!?」
「いた」
「うぇえええええ!!!」
「うぅん......リリアうるさい。あと顔赤い」
「起きなさいロナ!もう朝だよ!」
いつも通りの授業が終わった後、俺達は自主的にも練習をする。
いつもは、リリア達三人を一人づつ見ているのだが、今日はアンドレだ。
アンドレは、超がつくほどの心配性で、緊張し過ぎてアバターになってしまう。
「だから、今日はみっちり特訓するぜ」
「おう!任せた!」
普段はこんなに元気が良いってのにな......
まぁ、実力があるなら、あとはそれを引き出すだけだ。
「まず、緊張するのには理由がある。プレッシャーや、心配など色々だ。そして、お前は緊張をめっちゃする。ということはどうすればいいか、分かる?」
「分かりません!」
「そう、自信をつけることだ!」
受け答えが正直でよろしい。
「自分は出来るんだ。勝てるんだという自信さえ持てば、心配なんてしない。まぁそれが出来ればもうやってるんだろうけどな。だからこそ、今からの特訓だ!」
「はい!」
ノリがいいやつだ。やっぱりなかなか気が合いそうだな。
まぁ、それは別として、特訓をするわけだが。
具体的には、とにかく練習あるのみだと思っている。
「本当はアルス達とチームを組んで、実際の模擬戦の模擬戦をするのが一番効率いいと思うんだけどな......」
何せアルスだ。練習すらしないで、放課後はすぐに帰ってしまう。
くそう、やる気あるのか?あいつ。
「だから二対二になるが、バリガと組んで俺とレイラと闘う。まずは戦闘になれることだ」
「バリガ、よろしくな」
「ふん、まぁ良いだろう。ちょうど暇だった所だしな」
バリガは、こんなことを言っているが、何気に今までもずっと付き合ってくれている。
こんな実力者が練習に付き合ってくれるというのは、とても心強いし、頼もしい。
「それじゃあ、レイラの練習時間も取っちまうけど......」
「私、速いから。ちょっとぐらい、いい」
レイラはレースだからな。このバトル内でも速く動く練習は出来る。
「それじゃあ、武器を構えて。教えながら闘っていくか」
「おう!よろしく頼む!」
もう既に少し震えてないか?
なんか、見てるこっちが心配になってきたが......俺は構える。
それに言わせて、他三人も構えた。
「仲間の一人に索敵魔術を持った奴がいたからな、お前はたぶん闘うことだけ考えればいいと思うぜ。ただひたすら目の前の敵を倒す、バーサーカーにでもなればいいさ」
「バーサーカー......」
そう、バーサーカーは何も考えない。
何も考えずに全てをぶち壊す。
だが、アンドレはそんなタイプではない。むしろ真逆だ。色々なことを深く考えすぎて、頭がいっぱいになってしまう。
「だから、そう深く考えるな。相手はお前ほど作戦を考えていないぞ?ただ、一歩や二歩先を考えれば良いだけ。それでもダメならもう一歩と、相手に応じて変えて行けばいい」
「なるほど、柔軟な頭が必要なわけか」
「そうだ。だが、それを活かせなければっ」
俺は話の途中だったが、勢いよく前へ跳んだ。そして、アンドレの目の前へ。
「作戦を実行できるほどの力を付けなければいけない」
ボディーブロー。
食らったアンドレは、顔を歪ませながら後ろへ吹き飛ぶ。
「俺の指導は厳しいぞ?」
「それは、先に言えよ。まぁ、ドンと来いだけどな」
「これが一位か......なんだかワクワクしてきたぜ」
バリガも乗り気のようだ。
今日は、疲れ果てるまで特訓をした。
そんなら日がいく日か続き、気づけばもう、大会当日にまで迫っていた。
俺達の練習の成果を見せる時だ。




