魔術学園大会
「魔術学園大会があります」
突然だった。
俺達が入学して、そろそろ一週間も経つ頃。
早くも魔術学園大会が始まろうとしていた。
って何?魔術学園大会って。
「魔術学園大会とは、皆知っての通り、この国にある魔術学園が集まって行う大会よ。各学園の代表生徒数名で、競技をするの」
つまり、超大規模な運動会みたいなものか。
しかし運動会と違うのは、ただの学園内でのお遊びでは無く、学園別に本気で挑む大会だということ。
そう、絶対に勝たなくてはいけないのだが......
「あなた達問題児はダメ」
ホームルームが終わり、久しぶりに先生に呼び出しを食らったと思ったら、いきなりそんなことをルアンナ先生に言われた。
何せ入学前に冒険者になっているからだ。
しかも、あのアジュードラを倒したとかいう伝説も持っている。
そのくせそれを隠してまでこの学園に通っている。
もう訳がわからないそうだ。
「ロナちゃん達はなんとか出せるけど、あなたは無理よ。あなたに出てもらえば優勝は間違い無しなんだけれど、あなたはモンスターの件もあるし、不正だって言われてめんどくさくなりそうだもの」
あー、それは否定しません。
たしかに俺としても、目立つことは避けたい。
よって今回は、丁度いいというわけだ。
「なら、俺は出場しません」
「えぇ、悪いわね。でも、裏方はちゃんとやってちょうだいね?あの三人は、あなたがいれば最強なんだから」
もちろんそのつもりだ。
しかし、出来ればどれでもいいから競技に出てみたかったなぁ。
前世では、運動会が嫌いだった。
そういう人が沢山いる行事が苦手で、いつも仮病を使ったり、調子の悪い振りをしていた。
しかし、こうして楽しみに待つのも、いいかもしれないなと思うようになった。
俺も、異世界に来て成長しているのかな。
「それじゃあ、明日にはそれぞれ出る競技を決めてもらうから、伝えておいて貰えるかしら?」
「はい。分かりました」
伝えておきます。と言って、俺は職員室を出ていった。
向かう所はリリア達の場所だ。
「あ、ライルさん!」
「おう」
俺は、三人に出たい競技について聞く。
それぞれ、自分の得意不得意を知っているからな。それに実力も充分。
だから大会に出してもらえるのだろう。
大会には、だいたいは上位の人が出ることが多い。
アルスはもちろんのこと、一位である俺を出したかったのは当たり前なのだ。
しかし、ルアンナ先生がなんとかして他の先生を説得して、俺の出場を中止にしてくれた。
「う〜ん......私はやっぱり『ターゲッティング』ですかね。精密に魔術弾を撃つのなら、今までも練習してましたし」
リリアはターゲッティングか。たしかに合っているかもな。
ターゲッティングは、動く的に向かって魔術を撃つという競技だ。
制限時間内に、どれだけ多くの的を射抜くか、そしてその的の中心を狙うという正確性。さらに、的は三百六十度全ての方向に出てくる。それを素早く狙うという俊敏さを競う。
「私は『ハント』かなぁ。タンクで耐えて、急所を突けば、最速間違い無しっ!」
もあ勝った気でいるロナは、ハントに出るのか。ハントは、競技場に中級モンスターを放って、一対一で闘うというもの。
制限時間内に倒すのだが、その早さを競う。
「じゃあ、私は『レース』にする......かな?」
俺に聞くなよ。
レイラはレースな。
レースは、その名の通りのレースだ。
ただし、乗り物に乗ったりするのではなく、自らの足で走るというもの。もちろん魔術を使ってだ。
道中に様々な障害物があるらしいので、それを乗り越えて、一番早くゴールをした人の勝ち。
しかし、毎回ゴールしきれない人が続出するらしい。どんだけ過酷なんだよ。
他にも、単純な力量だけを競う、タックルをし合う競技や魔術ありのサッカーみたいなものまである。サッカーと違って、オフサイドとか、そういう細かいルールは無いみたいだ。
あとは、魔術発動までの速さを競うものや、魔術の距離。魔術の威力まである。
俺が出てみたいのがたくさんあるが、仕方ない。大人しくしていよう。
「俺、出場しろって言われちゃった」
「おお!まじか!!凄いじゃねぇか!」
寮。
俺は、忘れ物を取りに寮へ帰ったのたが、俺とルームメイトである二人もいた。
アンドレも忘れ物を取りに来ていて、バリガはサボりのようだ。
ちなみに二人は、試験の時に俺と組んだのだが、違うクラスになってしまい、ルームメイトだけは同じなのだ。
「それで、アンドレは何に出るんだ?」
「あぁそれが......模擬戦、なんだ......」
模擬戦。
本当の闘いを想定した、練習みたいなものだ。だがこの大会においては、本気の倒し合いと同類。
ルールは簡単、各学園四人で一チームの、合計九チームで戦うというもの。
なんでもありだが、殺しは無し。それと、外野からの支援も無し。
場所は、専用に作ったステージ。そこに全チームがバラバラに配置され、生き残ったチームが優勝となる。
いわゆるバトルロワイヤル形式だ。
俺としては一番出てみたい種目なのだが、アンドレはとても残念そうにしている。
「俺......勝てる自身が無いんだ......」
その理由の一つとして、アンドレは極度の心配性である。俺が、アンドレの名も知らない時にブルーフェイスと呼んでしまうほどに、顔は青ざめ、緊張して本来の実力の三割ほどしか発揮することが出来なくなる。
そのことを本人は分かっている。
だからこそやめたいのだ。
模擬戦は、一番シンプルで実践的な競技。
つまり、一番注目されている人気の種目なのだ。
「もし俺が失敗してよ、後一歩のところで優勝出来なかったら......俺せいでみんながユニオンに入れなくなる......そう考えると嫌なんだよ」
ユニオン。連合のことだ。
ギルド内ではチームというのがある。チームは、例えば俺と、ロナとリリアとレイラでチームだ。
それに対してユニオンは、もっと規模が大きい。
例えば、一人の強い人がいる。その人とみんなチームになりたがるけれど、もう既にいるので入れない。しかし、その人のコミュニティに入ることは出来る。それがユニオンだ。
つまり、チーム同士で組もうというわけだ。
言ってしまえば、チームとはユニオンをさらに細かく分裂したもの。ユニオンは、流派みたいなものでもあるな。
そう、そしてこの学園大会はギルドから様々なユニオンが来ている。
ギルドというのも、一つの国にいくつも点在していて、その中にユニオンが沢山ある。
アジュードラ戦闘でも、なんか人が多いと思っていたが、近くのギルドから駆けつけてくれていたらしい。
「でもよォ、そんなんで緊張してるような奴には、そもそもユニオンからお誘いなんて来ないんじゃねェか?」
ユニオンにも、上位のチームが運営しているものがある。
それらのユニオンは、こういう学園大会などを見に来て、使える人を欲しがるのだ。
そして学園に通う生徒側も、強いユニオンに入りたい人が多い。
だからこそ、大会で優勝することによって、その可能性が高まるわけだ。
「チッ、出られるだけでも羨ましいってのによォ......そのチャンスを無駄にするんじゃねェ!!」
うわっ!怒った。
すぐキレるなぁ、バリガは。
まぁ、一理あるけどな。
「バリガの言う通り、せっかくチャンスを貰ったんだから、無下にしちゃもったいないよ。俺がめっちゃバフかけておいてやるからさ、出なよ」
「そうだけどさぁ......」
まだ残っている心配。それも俺は知っている。
勇者の孫。アルスと同じチームで出場するという事だ。
たしかにアルスの実力は本物だし、大会に出れば優勝は難しく無いだろうけど、一緒にチームだというそのプレッシャーは半端じゃないだろう。
「アルスと一緒なのは、たしかに俺も嫌だな......」
色々な理由で。
「そうなんだよね......まぁ、とにかく頑張ってみるよ。まだ期間はあるわけだし、足を引っ張らないように練習する」
「よし!その意気だ」
俺も陰ながらに支えよう。それが、出場できない一位の役目だからな。
「それで、バリガは何に出るの?」
「あ?俺は出れねぇよ」
え!?バリガの実力なら、てっきり出られるものかと思っていたのに......口は悪いし顔も怖いけれど、中身は相当優秀。
ただ、チームプレイが苦手だけれど、それでも強いと思うけどな。
「普段の態度が悪いんだとよ」
あぁ、今もサボってるしね。
それは仕方がない。
「そ、そっか」
「てめぇは?」
「え?俺も出ないよ」
は!?と、二人は息を合わせて驚いた。
言ってなかったっけ?
「俺は出られない。遅刻が多いしね。あと、入学前にちょっとね......」
詳しくは伏せておいたが、二人は何となく分かってくれたようだ。何かあったということは察してくれたのだろう。
まぁ、そんなわけで俺はみんなを裏からサポートしよう。俺に出来ることなら、なんでもするぜ。
「それじゃあ、チャイムがなる前に教室に戻ろっか。大会までの時間は、無駄にしたくないしね」
おう!といい返事が返ってくる。
俺達は、少し急ぎめに教室へと戻って行った。




