先生
下着姿。
着替え途中。
てかなんで俺の部屋で着替えてるの?
「えーっと、すまん......」
「いや、別にいいよ......」
ブルーフェイス。
同じ部屋割りだったな。
おそらく、俺と同じように早く来てしまって、ここで着替えていたところに俺が来たというわけだろう。
ブルーフェイスは、静かに服を着終えた。
「そういえば、まだお前の名前聞いてなかったな」
「あ、そうだったね。俺はアンドレ・ファラー。アンドレって呼んでくれ」
アンドレは、昨日のような真っ青な顔では無く、爽やかな笑顔を見せてくれた。
そして、右手を差し出す。
握手だ。
俺はその手を強く握り返す。
「ライルだ。俺も呼び捨てで構わない。よろしくな」
「おう」と、力強い返事が返ってくる。
まるで別人だな。
「ところで、なぜ着替えていたんだ?」
「いや......恥ずかしくて言い難いんだが、裏表逆に履いていたらしくてな......」
きっと、朝は緊張してここまで来てたんだろうな。と俺は察した。
まぁ、こうして俺と会っているが、別に緊張しているようには見えないし、おそらくただの心配性だろう。
「そうだ。そういえばライルは、確か一位で入学したんだったよな?」
「ん?まぁそうだが」
「おめでとう。先生との試験でもそうだったが、君はすごい人だな!」
素直に嬉しい。
話してみると、こんなに良い人だったのか。
やはり見た目では分からないものだな。
「そんな君と一緒の部屋だなんて、喜ばしいことだよ。良かったら何か一つ、魔術でも教えてくれないか?」
「あぁ良いぜ。これも何かの縁だし、なんでも聞いてくれ」
それに、俺も教えて欲しいことがあるしな。
俺の魔術を教えて損は無いだろう。
まぁ、問題は使いこなせるかどうかだけど。
「なぁ、早速教えてくれないか?」
「え、今か?今は......」
チャイムが鳴った。
へぇ、俺がいた世界と同じようなチャイムなんだな。
って、ヤバい!時間だ!
「遅れちまう!急ぐぞ!」
「お、おう!」
俺達は、走って教室まで向かった。
しかし案の定、遅刻だった。
初日からやらかしてしまったのは、これで二回目だ。
やっちまったと思いながらも教室に着くと、勝手に扉が開いた。
そして中から先生が飛び出して来たのだが
「あなた達初日から遅刻なんて......ぶはっ」
なぜか吹き出した。
顔を見あげると、とても見覚えのある顔が......って
「ル、ルアンナさん!?」
「ライルくん!?」
教室の中は、少しザワついてしまった。
主に男子。絶対ルアンナさんを狙ってただろ。
「えー、ということで。全員揃ったことですし、自己紹介をしましょうか。私はルアンナ・ウルクッド。魔術理論を担当します。よろしく」
パチパチパチと、拍手が起こる。
そっかぁ、ルアンナさん......じゃなかった。ルアンナ先生が担任だったのか。
それにしても、俺がこの学園に通うって知らなかったのか。
「それじゃあ、今日からみんな、頑張っていきましょう!解散!」
と、ルアンナ先生がこれからの予定を話終えると、ホームルームが終わった。
知っている先生というのは、果たして有利なのか、不利なのか。
「もう、ライルさん遅いですよぉ」
「悪い悪い」
俺は三人の所に来るやいなや、リリアに怒られてしまった。
たしかに、少しゆっくりしすぎていた。
もう学園生活は始まっているんだ。
気を引き締めよう。
「次は初めての授業っ!あぁ、楽しみ!」
「ロナ、はしゃぎすぎ」
「いいじゃないのレイラ。あなたも楽しみにしなさい」
「あはは......」
たしかに初めての授業だったな。
さて、この学園のレベルはどれほど高いのかどうかを、確かめさせてもらうとしよう。
一位だったからって、気を緩めていては先を越されてしまう。
頑張ろう。と、やる気を出していたというのに、
「ちょっと」
と、後ろから肩をガシッと鷲掴みにされる。
ルアンナ先生だ。
「借りていいかしら?」
なぜロナ達に聞く?
お前らも頷くな。
というか、聞く前からもう引っ張られているのだが。
そして俺は、誘拐されてしまった。
職員室まで。
「はぁ......あなた、なぜこの学園に?」
「魔術を学ぶためですよ」
はぁ、とルアンナ先生はまた大きなため息を吐いた。
「あのね、あなたほどの実力者が通う必要無いのよ?実際、あなたは一位で通ってるし。なんか聞き覚えのある名前だと思ったら......まさかね」
そのまさかだったみたいだな。
だが、悪いが俺は通わない訳にはいかないんだ。
それに、こっちだって驚いている。
たしかに教えるのが上手いし、だがまさか教師だったとはな。
「まぁいいわ。あなたには逆に教えて貰うことになりそうだけれど、これからよろしく」
「ええ、よろしくお願いします。先生」
その「先生」という言葉が、ルアンナ先生には嫌味のように聞こえたらしく、苦虫を噛み締めたような顔をした。
「それじゃあ以上だから。最初の授業は、私の授業よ。先に行ってなさい」
ルアンナ先生は、自分で呼んだのにも関わらず、シッシッと追い払うようにした。
嫌な先生だな。
まぁ、仕方が無いので俺は職員室を出て、教室へと向かう。
初めて来たから、迷わないように気をつけなくてはな。
と、辺りを見渡している俺に、ルアンナ先生は後ろから
「あと遅刻はもうしないでよ」
と言った。
俺は「はーい」と後ろ手に返事をしておいて、廊下を歩く。
今度はちゃんと、チャイムに間に合った。




