試験
「えー......ここ、エイブラッド学園では......」
エイブラッド学園。そう、ここが俺達がこれから通うことになる学園だ。
そもそも学園と学校の違いは、学園は主に小、中、高校といったような、複数の学校を持っているものを指す。
つまり、兄弟校が多いというわけだ。
しかし俺達は、途中から学園に入るということなので、かなりレベルの高い方人がゴロゴロいる中で学ばなくてはならない。
ロナ、リリア、レイラは学園長の話を、ソワソワしながら聞いている。
ついにこの時が来たか。
魔術学園。
今日は、そのエイブラッド学園の始業式みたいなものだ。
「えー、エイブラッド学園は数々の英雄達を生み出し......」
しかし、普通は受験に合格してから学校に通うのに、この学園では入学式をしてから、テストがあるようだ。
不思議だなと思ったが、どうやらテストに落ちたとしてもサポートなどで活躍出来る可能性もあるらしい。
そもそも、実力者以外はこの学園に通おうとしないみたいだけどな。
それに、兄弟校だからと言って、必ずこの学園に入れるとは限らないらしい。
だからこそ、レベルの高い学園なのだ。
「えーということで、ここで勇者様の孫である、アルス君を紹介しましょう」
ん?勇者の孫?
学園長が舞台から降りると、代わりに俺達と同じくらいの歳の男の子が舞台に上がった。
あいつが勇者の孫なのか?
「どうも、アルス・クレイオスです」
やけに落ち着いているな。はやり、勇者の風格がある。
「先程紹介して頂いたとおり、勇気の孫です。えー、先に言っておきます」
アルスは、少し間を開けて息を整える。
すると無表情で、まるで本心であるかのように。
「俺の足を引っ張るな。以上です」
とだけ言って降りて行った。
いや、きっと本心なのだろう。
本当に、足を引っ張るなと言っているのだろう。どういうことだろうか。
教師を含め、会場内の人はほぼ全員が驚いた顔をしていた。なるで理解ができないと言ったような表情だ。
こうして、異様な空気に包まれた始業式は幕を閉じた。
次は、魔術の試験だ。
俺達は全員着替えて、外に出される。
学園のグラウンドでやるようだ。
まるで闘技場のような作りだが、相当な広さだ。
「あぁああ、緊張しますぅ......」
「大丈夫!大丈夫!私がついてるよ!」
「ロナは大丈夫かもしれないけど......」
「リリアならいつも通りやれば、大丈夫だから」
「レイラ......うん、ありがとう。頑張るよ!」
まぁ、三人は心配無さそうだな。
問題は俺だ。
果たして、姿を隠したままで試験を突破できるのか?
なにせ合格点とか、どれくらい出来れば合格とかが全く分からないからな......もしかしたら、アジュードラ戦並の魔力を出さないといけない可能性もあるしな。
「よし、みんな頑張ろう!」
「はい!」
「おっけー!」
「うん!」
それぞれが返事をする。
「最初は遠距離のテストです。皆さんこちらへどうぞ」
俺達は、言われるがままについて行った。
修練場。らしいなここは。
ターゲットの、人の形をした板が立ててある。
すると講師の人がそれを指をさし、
「あの板に当てろ。距離は約十メートルだ。魔術、または魔法以外の遠距離攻撃は許さん」
ひえー、いかにも体育会系って感じの講師だ。
厳しいだろうなぁ......などと思いつつも、俺はどの魔術を使うかに悩んでいる。
順番的に俺達は後の方だし、他の人のを見てから決めるとするか。
まぁ普通に使うとして、俺だったらアロー系かな。
無難だし、何より正確性があるからな。
今回は板のどこに当てようが、特にポイントは変わらないだろうけど、そもそもポイント制なのかも分からないけれど、まぁ正確に決めて悪いということは無いだろう。
「では、始めっ」
「は、はいっ!」
一番手か......だいぶ緊張するだろうなぁ。
離れて見ていてもそれが伝わってくるほどに、ガタガタと震えていた。
「......ショット!」
え?
ビシッと、板に光る何かが命中した。
もしかして、魔力の弾を発射したのか?それにしても威力低すぎでは無いか?
「遠距離魔術を使えるのは結構だが、ちなみに勇者の孫であるアルスは、三十メートル以上離れた位置からでも板を破壊したぞ」
おい何だそれ。なぜ俺達にプレッシャーをかけてくるんだ?今の人なんてそもそも板を少し傾けた程度の威力しかないぞ。
まぁ、恐らく基準なのだろう。
アルスの記録をわざと言って、越える気で頑張らねば落とすという意図があると俺は予想する。
つまり、この人は今のところだと厳しいのだ。
「まぁ、最初は緊張するだろう。一人チャンスは二回までだ。もう一度やれ」
「は、はい!」
もう一度やった。
同じことを。
つまり、威力も距離も変わらずだ。
「はい次っ!」
そして、順番は刻一刻と迫って来た。
皆、各々の魔術で攻撃をする。
炎だったり、雷だったり、氷だったり、さまざまだ。
しかしある人は届かず、ある人は三十メートル以上の距離でも届き、またある人はそもそも遠距離魔術すら使えなかった。
そして、ついに俺の番が来る。三人よりも先に終わってしまうので、すぐ次の場所に向かわなくてはならない。
三人のテストを見ることが出来ないのだが、まぁ心配は要らないだろう。
俺は俺の心配をしよう。って、さっきも言ったな。
「次」
「はい」
俺は、片手の平を前に突きだし、集中する。
使う魔術はもう決めた。
よし、行くぞ!
「ショット!」
そう、最初の人と同じ魔術。見たところあまり威力は出なさそうだし、俺の魔力で撃てば丁度いいと思ったからだ。
まぁ正直なことを言うと、アローを使っている人が一人もおらず、なんか禁止でもしてるのか?ってぐら誰も使わないので怖くなってしまったのだ。
一度使われているものなら問題は無い。
ただ、最初の人と比べられてしまうのが困った所なのだが......どうにかあの人にも合格して欲しいものだな。
と思っていたのだが......
「まじかよ......」
俺の魔術は十メートルの板をも貫通して、奥にある壁まで届いてしまっていた。
水路かと思うほど地面を抉り、さらに奥の壁にもクレーターを作ってしまった。
やってしまった。
正直自分でも、ここまでの威力が出るとは思っていなかった。
周りの反応は予想通り、ポカーンとしている。
「えーっと......アルスを越えた記録は初めてですね!うん!」
先生が開き直った。
みんなごめん......そんなつもりじゃなかったんだ。
次からは気を付けようと、反省しながら次の会場へ向かった。
「次の試験は、武器での戦闘を想定したものです。そこの机に並べてある武器を使って、ダミー人形を撃破して下さい。武器は、剣から順番に使っていって下さい」
なるほど、自分に合った武器を探せるってことだな。俺が使っているのは剣だが、良い機会だし、この際色んな武器を使ってみるか。
右から順に片手剣、両手剣、槍、斧、ハンマー、メイス、弓だ。
恐らく、武器はこれで全てでは無いだろう。
現に、ロナは短剣を使っていたからな。今は盾の練習をしているが。
「ここでは、魔術を使うことを禁止しています。魔術を使わない、または使えない時のバトルを想定した試験です」
たしかに、俺はともかく普通の人なら、常に魔力を使い続けることが出来ない。
なら、自然と武器に頼ることは仕方が無いのだろう。
まぁ素手でモンスターとやり合うほど、人間は馬鹿では無いという事だ。
俺は、先にやっている人を見た。
が、今回ばかりは参考にならない。なにせ、ほとんどが素人だからだ。
「そもそも刃物なんて持ったことがない」
なんて声まで聞こえてくる。
それに比べれば俺達は実戦経験豊富で、武器など使えて当たり前なので、多少は有利というものだ。しかし、リリアは普段から魔術を使っているので、少し不利かもしれない。
「それでは始めて下さい」
俺は構えの姿勢を取る。もちろん、そんなもの習ったことも無いので、何となくだが。
よし、やるだけやってみるか。
何せ正解がない。試験官が見て、良い動きだと判断すれば良いだなんて、そんな曖昧なもの、対策の仕様がない。
「ふんっ!」
だから俺は、いつも通りやった。
剣を片手で持ち、ダミーを敵に見立てる。
この形は人型なので、少し大きめのゴブリンを想像する。
どこを斬れば致命傷になるのか、どこに隙が出来ているかを良く考えながら連撃を繰り返す。
「おぉ......それでは、次の武器へ」
なんだ今の「おぉ」って良いってことなのか?
まぁよく分からないが、次の武器を取る。
両手剣だ。
あれ?俺がいつも使っている剣よりも、軽い気がするな。
使っていても、少し片手で扱ってしまった場面もあったが、バレてないよな......?
まぁ、そんな感じで全てを使い終えた。
使った感じは、やはり片手剣が一番かな。
大きな武器だと、小回りが効かない。
それに、鳥の状態だと邪魔だろうしな。
「すご......あ、そ、それでは次の試験会場へと移動して下さい」
はい。と俺は返事をして、次の会場へと向かった。
道中、周りの人がコソコソと俺を見ながら会話している姿がチラホラと見えた。
俺、何かしたか?悪いことなんて少しもしていないと思うが......気にし過ぎか。
あまり気にすると集中出来ないからな。
今は試験のことだけを考えていよう。




