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戦いの後

『おいおい、もう使っちまったのか?』


目覚めると、目の前に見覚えのある人が立っていた。

俺は確か......そうだ、アジュードラを倒して......それで......


『今こうして起きたんだよ。いや、厳密には起きてないな』


見覚えのある人は親切に教えてくれた。

たしかに、言われてみるとここはどこなのか分からないし、意識もハッキリとしているとは言い難い。

夢だと言われれば、そうだと思うし。いくら異世界と言えど、気絶するように眠ってしまうだけで、こんな真っ暗で何も無い闇のような世界に飛ばされるということは無いだろう。


『そうだ、ここは貴様の中だ。あと、その見覚えのある人ってのもやめろ。我を忘れたか?』


見覚えのある人ってことだけは覚えているのだが......何せ意識がハッキリとしない。寝起きの気分だ。

というか、俺の心を読まないで欲しい。


『ん?ハッーハッハッハ!面白いことを言うな。貴様の心にいるってのに、心を読むなとは。それが人間で言うところのシャレと言うやつか?』


なんでこの人こんなに上機嫌なんだろう。

いや、正しくは人じゃなく


「魔王イーヴル」

『ほう、ようやく我を思い出したか』


思い出したも何も、忘れるわけがないだろう。しかしまぁ、しばらく見ないうちに随分と小さくなったものだな。

普通の人間と変わらないくらいだぞ?


『ふん、貴様に合わせてサイズを小さくしているだけだ。それを言うなら貴様こそ大きくなったじゃないか』


まぁな。

それで、なんで急に俺の中に出てきたんだ?


『随分と偉そうな口の利き方だが、まぁよい。我と貴様の中だ。して、呼び出したのは貴様の方だ』


へ?俺の方?俺が魔王を呼び出したってのか?


『そうだ。まさか、無意識にやったのか?』


なんのことだかさっぱり分からない。

俺が、無意識にやった?

もしかして、アジュードラ戦の時の......


『あぁそう、それだそれ。お前、イクリプスを使っただろ』


『イクリプス』か、そういえばアジュードラに最後トドメを刺した技が、たしかそんな魔法だった気がするな。

急にパッと頭に浮かんで、わけも分からないままに使ってしまったけど......あの時は必死だったからな。


『はぁ......本来、イクリプスは我の固有魔法であって、いくら力を受け継いだとはいえ、そう簡単に使うことは出来ない代物だ』


ん?だが俺は普通に使えたんだが?まぁあれはちゃんと使えたかどうか分からないけどな。


『使えてはいたが、使いこなせてはいなかったな。むしろ使わされたと言うべきか......まぁ、あの魔法の説明をしよう』


固有魔法......そもそもそんなものがあるってことすら知らなかったな。


『まず、イクリプスは我の固有魔法であり、全てを喰らう魔法だ。発動と同時に体内で闇を生成し、放出する。すると闇は、目の前にいる物を喰らうのだ。それが人であろうと物であろうと、何であろうともな』


それが仲間でもか?


『愚問だな。何でもと言っておろうが。そしてこの魔法の強みと言えば、その食欲よ。魔術壁でも、なんでも、無に変えて喰ってしまう』


つまり、防御不可の最強魔法。

そんな恐ろしいものを持っていたのか。


『まぁそうだな。だが、お前が使えたのはそのほんの少しでしかない。むしろあれじゃあ制御が出来なくて、自らの身を滅ぼす事となる。今回はたまたま生きていたようだがな』


そうなのか?てっきり俺は死んだからここにいるのかと思ってた。

死んだ理由の答え合わせかと。


『貴様はしっかり生きているぞ。ただ、まる一日は寝ていたがな。早く起きて、元気な顔を見せてやれ』


え?


『お前の仲間が待っているぞ。早く行け』


あぁ、ありがとうな。魔王イーヴル。


『ふん。我はもう死んでいるんだ、礼なんかいらん。たがこれだけは覚えていてくれ、イクリプスの練習はするなよ』


練習?そうか、また制御出来なくて気絶しちまうからか。


『それが分かったらさっさと行け』

「あぁ、行ってくる」


俺の意識は途絶えた。

そして、すぐにまた意識は目覚める。


「うぅ......」


今度は俺の知っている部屋だ。ここは宿。

俺達四人の部屋だ。

感覚的に、怪我とかは無さそうだが、なぜか身体中が重い。

俺は自分の体に目をやる。


「ん......」


三人がくっ付いていた。

右腕にロナ、左腕にはリリア。そして、体にのしかかっているのはレイラだ。


「お前ら......」

「ん......あ、あれ?ライル!」


ロナが目覚めるやいなや、急に大声を上げて驚いた。そんなに俺が珍しいか?


「ラ、ライルさん!良かったぁ......」

「ライル生きてた」


そりゃ生きとるわ!なんで勝手に俺を殺してるんだ。あ、そうか俺気絶してたんだった。


「もう、一日中起きないから心配してたんですよぉ」

「あぁそれは知ってる、それよりも朝ごはんを......」


そこで、俺はリリアの目に涙が浮かんでいるのを見てしまった。

そうか......そんなに俺のことを心配してくれていたんだな。

もう少しだけ、甘えさせてやっても良いかな。

俺は、三人を軽く抱きしめた。


「ロナ、リリア、レイラ。三人ともご苦労だった。よく頑張ったぞ」

「はい......」

「うん......」


ギュッと抱きしめてやった。

もう大丈夫だと、もう離れないと言うように。安心させるように。

俺達はしばらくそうしてジッとした後、ご飯を食べに行った。

宿屋でも飯は食べられるのだが、今回は奮発して、うんと美味しいものを食べよう。

たまにはこういうのもいいな。

今日は、つかの間の休憩だ。


「少し、頑張り過ぎていたかもしれないな」

「はい。ライルさんが居なくなってしまったら、私どうしたらいいか......」


リリアが、また心配で泣きそうになる。

俺は、リリアの頭にポンと手を置いて、優しく撫でた。


「大丈夫、ただ魔力が切れて寝てしまっただけだ。それよりもお前達の魔力シールドの方が良かったぞ?」


リリアは嬉しそうに、もう一度「はい!」と返事をした。


「あ、ライルーそう言えばさぁ」

「ん?」

「明日から学園に通うから、くれぐれも階級を上げないようにね」


へ?あ、明日から!?

そうか......俺まるまる一日寝てたから、もう明日だったのか......まぁ別に、一日で階級が上がることなんて無いだろうし。

今までの依頼も、報酬だけもらってギルドに報告はしてないから、階級は上がっていない。まさか昨日の一件で俺の正体がバレたとは思えないしな。

そうは言っても心配ではあるので、俺は自分のギルドカードを確認した。


「ふぁっ!?」


別に変わっていなかった。

焦らせやがって。


「あ、あとさー昨日のもバレてないよー。私達でコソコソとライルを運んで来たんだから」

「そ、そうなのか。ありがとな」


そういえばルアンナさんにはバレてたんだよなぁ。

話は後からって言ってたけど、結局話せていないな。

まぁ、またどこかで会うことだろうし、その時にでも話せばいいか。

そしたら、ちゃんと本当のことを言おう。

もちろん、魔王の力のことは伏せるけどな。


「ちょっと良いかしら?」


噂をすればなんとやらだった。

俺達は、上手いモンスター肉の店までに行く途中で、ルアンナさんにエンカウントしてしまった。

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