木龍アジュードラ
おかげさまで二十話まで達することが出来ました。
ありがとうございます!
しかし自分はまだまだだと思うので、これからも是非読んでくださると嬉しいです!
「おぉ......」
近くで見ると、思っていたのよりも随分と大きい。
一キロメートル以上はあるな。
こんな怪物、どうやって倒せと言うんだ。
アシッドスネークが可愛く見えるほどだ。
「おぉおおおお!!!」
冒険者達はアジュードラに向かって行く。
恐れもなく、躊躇なく戦いに行く。
アタッカーはなるべく近くへと、空に飛ぶ方法を考え、タンクは皆を守り、ヒーラーは回復、ヒーラーの中でも攻撃が可能なウィッチは、魔術による遠距離攻撃を仕掛けている。
しかし、どれもこれも少しも聞いている様子は無い。そもそあの硬そうな鱗までも、届いていないのだ。
全て、体に触れる前に打ち消されている。
まるで魔力の防御壁でもあるかのようだ。
「クソッ、まるで効いていないぞ!」
「これじゃアタッカーを飛ばしたところで、空中で撃ち落とされるだけよ!」
俺もアローを飛ばすが、全く届かない。
それどころか、どんどん街へ近づいて来る。
「まずいな......もう街へ着いてしまうぞ」
すると、アジュードラは止まった。
空を悠々と飛んでいたアジュードラは、ピタッと森の真上で止まったのだ。
「なんだ?止まったぞ」
「効いているのか?」
そんなはずは無い。攻撃が届いていなさそうで、実は効いているなんて都合のいい話があるわけない。
何か嫌な予感がする。
「は!攻撃が来るわ!備えて!!」
ルアンナさんが周りに呼びかける。
しかしもう遅い、アジュードラは口を大きく開き、魔力エネルギーの塊を作り出した。
そして......
「うわぁああああ!!!」
轟音とともに、吐き出した。まるでレーザービーム。緑色の光線が、こちらに向けて一直線に発射される。
光線は街を貫き、一瞬にして半数以上の冒険者達を吹き飛ばした。
「あ、あんなのありかよ......」
「あれは光合成によって蓄えたエネルギーを、魔力とともに発射する技よ。しばらく太陽の光を浴びなければ、もう一度発射することは出来ないはず」
なら、その間に倒せってことか。
なるほど、強い攻撃だがその分連射はできない。それなら何とかなりそうだ。
「みんな、今のうちよ!今なら防御もゆるんでいるかもしれない。さっきの光線を撃たれる前に倒すのよ!」
「くっ......」
しかし、誰一人として返事はない。
もうみんな諦めかけているのだ。
まだアジュードラは一度しか攻撃をしていない。それなのに、ここまで冒険者達のやる気を無くさせるほどの威力。
しかし、そう余裕も無い。
アジュードラは再び動き出す。
木龍。文字通り、木の属性だ。アジュードラが通った道にある木々は、全てアジュードラの思いのまま。
木々はぐーんと伸び、冒険者達に襲いかかった。
「ちくしょう!なんだこれ」
「ぐあぁ!」
どうすれば良いんだ......攻撃は効かない、あまり時間をかけると、またあのビームが来る。まるで手も足も出ない。
「ライル!」
レイラ、何かを俺に訴えている。
「私を近くまで運んで」
「駄目だ。そんな事をしては危ない」
確かに、俺なら飛んで近づくことも出来る。しかし、さすがにあの木々よりも速い速度を出せない。あれに捕まれば、おしまいだ。
いや、待てよ?
「鳥の姿なら......」
俺は、普段は人間の姿に変身している。だが、もし鳥の姿、本来のモンスターとしての形なら、もっと速い速度で飛べる。
それに、もし倒すことが出来るのなら、モンスターの姿の方が俺だとバレる危険性も少ない。
「変身解除」
俺は物陰に隠れて、変身魔法を解除した。
久しぶりの鳥の姿だ。
「おぉ......なんか懐かしいですね」
「それが、ライルの本来の姿?」
そういえば、レイラにこの姿を見せるのは初めてだったな。俺が元はモンスターだということは、薄々気づいてはいただろうが。
「ライル......なんかおっきくなった?」
「え?」
太ったということだろうか?いや、違うな。
俺は、鳥の時の目線を覚えている。飛んでいない時はいつも、下から見上げるようだった。しかし今は、人間の状態よりも上。
気が付けば、三人を背中に乗せられるほどの大きさになっていた。
「モンスターは、生きていくうちに進化するものなんです。だから、ライルさんも成長して大きくなったんですね」
なるほど。確かに前よりも魔力量が多くなった気がする。まぁそれは気がするだけに過ぎないだろう。なぜなら俺自身すら、自分の魔力量を把握しきれていないからな。
「これで速度が落ちてたりしなければいいのだが......まぁ、行ってくる。お前らはここで待ってろ、俺が倒してくる」
さすがに三人を連れていくわけには行かない。何かあったら、危険だからな。
悪いが、ここで待っていてくれ。
俺は大きく羽ばたき、空へと舞う。
「うぉ、むしろ前より速くなってないか?」
そのままグングンと速度を上げて行き、あっという間にアジュードラの近くまで来ることが出来た。
やはり、地面からは植物がツルを伸ばして追ってくるが、俺の速度なら簡単にかわすことができる。
「おっと、危ない。捕まる訳にはいかないんだよ」
さてと、問題はここからだ。
何とかしてこの魔力壁を壊さなくては、こいつにダメージを入れることができない。
「この防御壁以上の魔力で攻撃するしかないな」
強行突破。無理やり壊す作戦だ。
「ボルテック・アロー!」
雷の矢を発射する。
しかし、効果はいまひとつだ。いや、全く効いていない。全て弾き返されてしまう。
どこにどれだけ撃とうが、その身には傷一つ付きはしない。
「おい、なんだあれ......」
下にいる冒険者達が、俺の存在に気付き始めた。まぁ異質だよな。
「モンスター同士が......闘っている?」
「でも勝てるわけないよ......だって、鳥と龍よ?」
好き勝手いいやがって、お前らの代わりに俺が闘っているんだ。
俺がやらなくちゃ、街は壊されてしまう。
「クソッ、にしても硬すぎる」
どう頑張っても、こいつを破ることは不可能だ。
それに、油断してると木が襲いかかってくる。
一瞬でもこのシールドが無くなってくれれば......クソ、一旦下に降りて作戦を立て直すか。
「ライル!」
「お前ら、あまり近づくな。モンスターと仲間だとバレたら......」
「大丈夫、誰も気づいてない」
みんなは、怪我人や植物で手一杯のようだ。
俺の正体がバレる心配はないが、一刻も早く倒さねば。これ以上、負傷者や死者は出したくない。
「ライル君......」
「え......ル、ルアンナさん」
マジかよ......正体バレちまったじゃねぇか。
まぁそりゃ誰かしらにはバレるよな。
「話は後で聞かせて貰うわ。それよりもあのシールドのことだけど、一度だけ解ける瞬間があるの」
俺は、ルアンナさんが俺の正体を知ったことよりも、アジュードラを倒すことを優先する。
「さっきの光線。あれを撃つ瞬間だけ、シールドが解けるわ」
光線か......確かに、シールドが張ってあると邪魔になるからな。最低でも顔の近くのシールドは剥がれるということか。
発動まで遅いし、その瞬間を狙うのは難しく無いかもしれないが、街に被害が出てしまう。
「問題はその光線をどう守るかってとこなんだけど......」
こちらにも、強いシールドが必要だな。
俺は少し考えた。タンクなら、そこら辺にいる冒険者の中にいるのだが、広範囲を守れる魔術を使える者はいない。
いるのなら、さっきの光線で使っていたからだ。
しかし、詠唱すれば使える者もいるはず。
そのうちの一人が
「リリア」
「はいっ!?」
俺達の中には、タンクがいない。今はロナがタンクにため特訓中だが、まだまだだ。
だから代わりに、リリアにシールドを張れる魔術を教えている。
「どれほどのシールドなら張れる?」
「普通の建物ぐらいなら......」
「それで充分だ」
リリアの盾魔術を基盤として、他の魔術師にも手伝ってもらう。
それでなんとかシールドは張れるはずだ。
「魔術師達を集めて、なんとかしてシールドを張るんだ。その間に俺がトドメを刺す」
だがイマイチ火力が足りないかもしれないな......俺一人の力では倒しきれないかもしれない。せめてもう一人いれば。
「......レイラ」
「ん」
「いけるか?」
レイラは頷いた。レイラの魔術を使った攻撃なら、俺にも匹敵するだろう。
少し危険だが、これしか方法は無い。
「もう一発撃つまで、周りの植物を振り払うんだ!無理はするなよ!」
さぁ、次が勝負だ。
もうそろそろチャージ完了してもいいはず......
「魔力が口に集まってる、来るわ!」
「了解!しっかり捕まってろよ!!」
俺はレイラを背中に乗せて、思いっきり飛び立つ。これを逃すと、もう後が無い。
「くっ...!」
「レイラ、あと少しだ。もうすぐそばまで来てる」
アジュードラが口を開く、魔力が可視化され、緑の塊をつくる。
次の瞬間、うっすらと見えていたシールドが、顔の周りだけ消えた。
「空いた!いくぞおおおおおお!!」
そのまま突っ込む。
そして、シールドの内側に入ることに成功した。レイラをアジュードラの上に降ろし、俺はアジュードラの下へ廻る。
「うおおおおおお!!!ソニック・ブレードォオ!!」
「やぁああああ!!!」
二人で、上と下。両方向から斬られ、アジュードラの体は真っ二つ。
になったと思えた。
「硬いっ!」
鱗は、まるで装甲のように硬く、皮膚へは届かない。
だが、俺達は諦めなかった。
「トランスフォーメーション!!」
俺は人間に変身し、腰に下げていた剣を抜く。
そしてもう一度、同じ所を斬る。
「これならどうだああああああああ!!!」
手応え。今度は、肉まで到達した感触があった。
レイラも、魔術を駆使してなんとか斬り込めたようだ。
「な、なんとかやれたぞ......」
人間の姿を見られたらまずいので、すぐに鳥へと戻り、レイラを背中に乗せた。
アジュードラは、なんとか光線を撃つ前真っ二つに斬れ、見事倒すことに成功した。
だが、光線はまだ光を放っている。
こいつ!何がなでも撃ち出す気か!!
「急ぐぞ、レイラ!しっかり捕まってろよ!」
俺は全速力で三人の元へ向かう。だが間に合わない。
光線は発射されてしまった。
「リリアー!!!」
「ライルさん、皆さんは私が守ります!」
リリアと、他の魔術師は詠唱をし終わっていて、いつでも発動可能の準備体制だった。
だから、シールドを張るのは決して遅い訳では無い。
「アイアース・シールド!!!」
俺の知っている中で、一番の防御魔術だ。
前方に何枚も重ねてある魔力壁を張るというものだが、今は他の魔術師の魔力も合わさって、王都全体に巨大な盾を作り出している。
「はぁああああ!!」
だが、アジュードラの光線はそれをも上廻るほどの威力。さすがは伝説級モンスターと言ったところか。
俺とレイラによって大ダメージを食らっていてもなお、この威力だ。
「レイラ、本体を叩くぞ!」
間に合わないと知った直後、アジュードラの元へと戻っていた。少しでも光線の方向をズラせればと思ったのだ。
だが、はやり近ずくだけでも吹き飛ばされそうな衝撃が来る。
「くっ、うおおおお!!!」
その時ふと、俺の頭の中に思い浮かんだ魔法があった。
これは俺の記憶じゃない。魔王の記憶。
魔王の知っている魔法だ。
『イクリプス』
目が眩んだ。前が何も見えなくなり、俺は何も出来なくなった。
ほんの一瞬だけ、見えたもの。それは闇。
真っ黒な何かが、俺の身体から溶けだし、アジュードラへと向かった。
そして、アジュードラの身体を蝕んだ。
ちょうど心臓。そう、感覚で分かった。
これは心臓だ。心臓に食らいついたんだ。
そして「はっ!」と気づいた時には、もうアジュードラから生命力は失われていた。
それらが起こったのは、ほんと一瞬の出来事で、時が止まっていたかのようだった。
俺以外の誰も、いや、俺すらも何が起こったのかは分からない。
だがこれだけは分かる。
「アジュードラを......倒した......倒したぞおおおお!!!」
「おおおおお!!!」という歓声とともに、アジュードラの亡骸は地面へと落下していく。街は、見たところ無事なようだった。
あぁ、良かった。
これで一つ、人を助けることが出来たな......
俺は気絶する寸前に、最後の力を振り絞って変身魔法を使った。
こういう所は、抜かりないからな俺は。




