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四神

「そういえばよぉ、王都に来てからというもの、王様ってのを一度も見たこと無いんだけど」


考えてみればそうだ。別に俺は、王様に会いに来たわけではないが、王都っていうし王様を少しくらい見かけてもいいんじゃないか?


「あの城にいるんだろ?」

「あーまぁそうですが」


なんだ?何かよからぬ事情でもあるってのか。


「王様は誰も見たことがないの。見たことあるって言ったら、勇者くらいじゃないかな」


へぇ、そんなもんなのか。

王様......国民の王であるくせに、国民には一切顔を出さない。謎だ......それでよく王様をやっていけるな。


「ん?」


レイラの表情が暗いことに気がついた。

さっきまで楽しそうに三人で話していたってのに。

王様と......何か関係があるのか?

まぁいい、この話はよそう。

何か別の話題を。


「そういえば、俺達は学園に通うことになってるんだけど、もうそろそろだよな?」

「はい。そうですね、あと三日程じゃないでしょうか」


レイラが仲間に加わってから、数回依頼を受けた。

予想通り、いや予想以上にレイラはよく動ける。モンスターの攻撃を一撃もくらわず、素早く仕留めていく。まさにアタッカーと言ったところか。どこでそんな身体能力を身につけたのだろう?

しかし、前に出過ぎな所もある。

そこは仲間との連携だな。

そしてレイラも、俺達に気を許してくれたのか、普通に喋れるようになってきた。

少し声が小さい時もあるが、可愛らしくて良いじゃないか。


「ライルっ!」

「うん?」

「私も学園行きたい」


フッフッフッ、俺はそれを予想していた。

そう、こうなることは計算済みだ。


「そう言うと思って、先に二人に頼んでいたのさ!」

「え!ラ、ライルは予知能力まであるの......?」


あったらいいが。まぁ嫌だと言ったら普通にキャンセルするだけだったし、じゃないとわざわざこんな話をすることは無い。

ただの学園に通えるっていう自慢話になってしまうからな。


「やったね!」

「一緒のクラスだといいね!」


ロナもリリアも、すっかり仲良くしてくれている。

なんか、お父さんになった気分だ。

いかんいかん、まだ学園は始まっていないんだ。気を引き締めなければ。


「して、ロナとリリアはなぜ学園に入りたいんだ?」

「あれ?まだ言ってなかったっけ」


確か聞いていないはずだ。

学園は、立派な冒険者になるために育成する場所。つまり、二人は強い冒険者になりたいということは間違いないだろう。


「私達はね、勇者になりたいの」

「勇者?」

「そう、私達は勇者になって魔王を倒したい」


やはり、そうだったのか。まぁ、親のこともあって予想はしていたが、やはり魔王軍への復讐か。

魔王......そんなものはもう居ない。

なぜなら、俺が倒したからだ。

ディミトリー達は、魔王が死んだということを知っていたが、この二人は知らないのか?

それとも、知った上で魔王に復讐するなどという叶わぬ夢を追いかけているのか。


「なぁ、お前ら......」

「魔王がもう居ないということは知っています」

「な、ならなんで....?」

「私達の両親を殺した張本人。魔王軍の幹部は、まだ生きているはずです」


なるほど、魔王では無くその殺した本人を探すわけか。

少なくとも俺が行った時、魔王の近くにはいなかったが、魔王軍はどこかに散らばって逃げでもしたのか?


「例え死んでいたとしても、私達の決意は変わりません。もう二度と、あんな悲劇を生まないように」

「もう、心に決めたから」


そうか......なら、やはり応援するしかないな。

俺は全力でサポートしよう。俺に魔王の力が宿っているなんて言えないし、復讐もあまり良いとは言えない。だが、それは後々自分で気付いていくものだ。今は俺が、学園へ通えるよう、強くなれるようにしよう。


「わ、私もっ!私も一緒に頑張る......ロナとリリアを手伝う」

「ありがとう、レイラ」


それに、レイラもいるなら安心だな。


「さてと、じゃあ今日も張り切って行きますか!」

「今日はスライムが良い〜」

「いいえ、ゴブリンの方が報酬が良いわ」

「出しゃばらないように練習したい......」


みんな、思い思いのことを言う。

なんだか、楽しいな。

こんなふうに笑って、暮らして、生きて。

とても幸せな気分だ。


「大変ですっ!冒険者の皆さん、緊急の依頼です!」


急に、ギルドのお姉さんが急ぎ始めた。

なんだなんだと、ギルド内が騒がしい。

俺達も朝食を食べる手を止める。


「何かあったのか?」

「さぁ......何でしょう?」


「お静かに」という女性の声によって、皆は一斉に静まり返った。ルアンナさんだ。


「木龍アジュードラが出現しました」


ええぇええ!!?と、ギルド内は先ほどよりもまして騒ぐ。

木龍アジュ......なんだって?


「ま、まずいですよライルさんっ!木龍アジュードラと言えば、ドラゴンですよ!」


ドラゴンだろうな。


「ドラゴン知らないんですか?あの伝説級モンスター。魔王に匹敵すると言われるほどの強さを誇るモンスターです!そして緊急ということは......」


お姉さんは、険しい表情で言った。

そう、それはまるで世界の終わりを告げるかのような、魔王がこちらに攻めてくるかのような静けさがあった。


「もう、すぐそこにいます」


今度は、静まり返った。

すぐそこ。つまり目視できる範囲にいるという事だ。

魔王並の強さを誇るモンスター......そんなものがすぐそこまで来ているなんて、さすがに俺でも少し背筋が凍った。


「冒険者の皆さん、すぐに出動してください!」


ギルドにいる全員の声が揃った瞬間だった。

元気に返事をすると、冒険者達は外へ出て、空を確認する。ついでに俺も見てみる。


「あ、あれか」


そこには、巨大な龍の姿があった。

青色の体には、鱗がビッシリと。

ここからでもよく見えるほどの距離だ。

うわぁ、また硬そうな奴だな。

周りの人は、ほぼ全員口をあんぐり開けたまま見上げている。

おいおい、そんなにやばい奴なのか......?

確かに強そうだけど......なんか俺も心配になってきた。


「森の方から抜けてくるぞ!みんな、行くぞ!」

「「「おー!!」」」


リーダー的存在の冒険者が、みんなを連れて行ってしまった。

ありゃ全員死ぬな。


「あら、あなたも居たの?」

「あ、ルアンナさん」


そういえばこの人がいたな。

他の人に比べれば、やけに落ち着いている気がする。


「ルアンナさんは平気なんですか?」

「もちろん怖いわ。今にも逃げ出したいくらいにね。でも、それ以上に闘わなくちゃっていう使命があるの」


ふーん......そういうものなのか。

俺はただ単にゲームで見慣れているからなぁ。いや、まぁそりゃこうして生で見た方が怖いけどさ。


「さ、私達も早く行った方がいいわ。何せ相手は四神よ」

「四神?」

「そうよ?あなた何にも知らないのね。四神ってのは、モンスターの中の最上級の強さを誇るものよ」


は?マジで言ってるのか?

だったら......なんか急に腹痛くなってきた気がする。

それを聞いた途端に、俺は怖気付いてしまった。

四神ってことは、四体のうちの一体ってことだよな......モンスターの最上級って、もしかして魔王なんかよりも強いんじゃないか?

なんでそんな奴が急に攻めてきたんだ?

まだ学園に通ってすら無いのに。

こんなところで死にたくない。


「ライルさんっ!!」


俺は、リリアの声で目が覚めた。

そうだ、こんな所で縮こまっていても仕方がない。闘わなくちゃ。

あの冒険者の人達も、全員が行ったわけじゃない。恐れを為して、陰で泣いていた人だって、姿を見てズボンを濡らしていた人だっていた。向かって行ったのは、命知らずの阿呆共だけだ。その人達だって、恐怖で顔が固まっていたんだ。

しかしそれでも......


「それでも、食い止めようとする人の方が、かっこいい!」


無理だと思っていても、無駄だと分かっていても、それでも抵抗しない方が無駄だ。

少しでも人数の多い方が可能性がある。

例え勝てなくても、どちらにせよ死ぬんだ。

だったら、やってやる。


「行くぞ、俺が、いや俺達が倒す」

「はい!」

「アシッドスネークだって倒したんだし、大丈夫!」

「私もついてる。だから安心」


心強い仲間達だ。

だが、俺がこいつらを守らないと。


「早く倒して、気持ちよく学園に通えるようにしないとな」

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