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新しい仲間

「それにしても、あなた達の魔術には、どれも驚かされるわ」

「ん?」


俺達は、ルアンナさんからの報酬をいただき、どうせならもう少し話たいということで、食事に同席させて貰っていた。


「だってあんな魔術見たことないのも。あの氷の柱で拘束するやつ」

「あー、あれはライルさんに教えて貰ったんです。私の魔力量なら、頑張って二回ほどは連続で発動できるって」

「へぇ、そうなの。凄いわね」


ルアンナさんは本当に感心しているようだった。上級冒険者にもなると、もっと強い拘束魔術が出来たりするのかと思っていたが、そうでも無いのか。


「それと、ロナちゃんも。よくもまぁあんな怪物に躊躇なく突っ込んでいけるものねぇ」「あはは、ライルがいるから怖くないんだよ!」


嬉しいこと言ってくれるじゃないか。

まぁでも、そのうち学園に通うことになるんだ。俺がいなくてもモンスターと戦えるようにして欲しい。

躊躇無くってのはさすがに危ないけどな。


「ま、一番驚かされたのはあなただけどね」


俺は指をさされた。

今思えば、やっちまったとしか言い様がない。当たり前のように翼を生やしてしまったが、よく考えたら人間はそんな事しないし、魔術にもそんなものは無いだろう。


「まさか空を飛ぶとは......それにその剣。あのアシッドスネークの皮膚を斬れるほどの斬れ味。あなたやっぱり何者なの?」

「あはは......あ、あの、じゃあ俺ら帰りますんで!」

「え、ちょ、ちょっと!?まだ話は......」

「ありがとうございました!」


ルアンナさんには悪いが、その場はなんとか誤魔化して、俺達は逃げるように出ていった。もちろん食事代は払わせてもらった。

一旦宿に帰ろう。ルアンナさんに正体がバレるのも嫌だし、アシッドスネークを倒したのが露見するのも嫌だ。

最悪、学園に入れなくなってしまうからだ。


「ねぇ、ライル」


宿屋に帰る途中、ロナはいつものように元気では無く、低めのトーンで聞いてきた。


「ルアンナさんに、モンスターだってこと話さなくていいの?」

「あぁ、わざわざ言う必要も無いし。変に警戒されたくないしな」


ロナはまだ、心配そうな表情をしている。

そうだな、確かにいっそ話してしまった方が気が楽かもしれない。しかし、二人にもまだ話していない事実もあるわけだし、まだその時ではない気がするのだ。


「大丈夫、いつかは話す日が来るさ」

「そう......」


きっと俺のことを気遣ってくれたんだな。

ロナもリリアも、こんなにいい子なんだ。

やっぱり、俺が頑張って金を稼がなくては。

そう再び胸に刻んだその時、「あー!!」とリリアが叫んだ。


「ライルさん!さっきの報酬の袋は!?」

「え?確か腰に下げ......あ!無い!!」


なんてこった。まさか盗賊か?まったく、異世界ってやつは治安が悪いぜ。

どこだ?盗賊め。まだそう遠くへは離れていないはず。


「ディテクション・アイ!」


鳥の目を使い、周りを見渡す。

クソッ、人が多すぎる。そもそもいつ撮られたのかも分からないのに、探せるわけが無い。


「なんですか?その魔術」

「あぁこれか?これは建物とかを透視して人が見える魔術だ。まぁ見えるって言っても、シルエットだけだけどな」

「それって、物とかは探せないんですか?」

「いや、クリーチャーモードだと人しか......そうか!」


なら物を探す魔術に切り替えればいい。


「ビロンギング・アイ!」


よし、これで人が持っているものしか見えない。

確かあの袋には、硬貨と......あった!アイアニウムだ!

アイアニウムを硬貨の袋と一緒に入れて持ち歩くなんて、俺達しかいない。

少なくとも半径一キロメートル以内にはな。


「ここからずっと真っ直ぐ行った先の、角を右に曲がったところだ!」


袋の見た目なら覚えている。あとは、なんのとなくの位置さえ把握出来ていれば分かる。

俺達は走って行った。

角に差し掛かり、少し顔を覗かせる。


「あ!あれじゃないですか?」


いた。ゆっくりと歩き、他の街の人に紛れているが、あの腰に下げているのは確かにそうだ。

堂々としやがって。まぁその堂々とすることによって、怪しまれないわけだ。

盗賊は、見た目が小柄。頭から腰にかけて、布みたいなのを被っていて、顔はよく見えない。


「おそらく、あっちは俺達の容姿をだいたい把握している。気づかれないように俺が行くから、逃がしたら捕まえてくれ」

「了解」

「分かりました」


俺は、盗賊で思い出した。

隠蔽魔術、インビジブルムーブメント。

これで姿も気配も消すことが出来る。

俺は素早く近づき、持ち物を確認する。

ビンゴだ。たしかに俺達の袋だった。


「この盗賊め!」


俺はいきなり隠蔽を解除し、盗賊に飛びかかった。

それには盗賊も驚いて後ずさりしたが、襲いかかる俺よりも素早く、しなやかにかわす。

そのまま俺の背後を抜け、ずば抜けた身体能力で街を駆け巡る。


「クソッ!おい待て!!」


俺は二人を回収すると、両腕に抱えたまま走った。

ここで是非とも飛び立ちたいが、さすがに人目が多すぎる。ただでさえ全力ダッシュしているところに注目を集めているってのに、モンスターだとバレたら一環の終わりだ。

仕方なく俺は、二人を抱えて走る。

シンプルに走って追いかける。


「待てぇ!!」


まぁ待てと言って止まるなら盗みはしないよな。

クソッ、速すぎる。高速で動ける魔術でも使ってるのか?

ならこっちも。


「クイックリー・ムーブメント!」


唱えた瞬間、まるで周りの時間がスローに見えるようだった。

それほどまでに、高速で動いている。

抱えている二人が、風によって色々まずいことになっているが、そんなの構わない。

今はお金を取り返すのが最優先だ!


「ぐえ」


とかなんとか考えてる間に、盗賊に追いついていた。どうやら俺の方が速かったようだな。

背中から軽くタックルを入れ、転ばせる。

ロナとリリアを、少し乱暴だがその場に落とし、盗賊の体を抑えた。


「え?」


俺は、正体を見ようと布を取った。

すると、姿を表したのは女の子だった。

髪も服もボロボロで、身体中傷だらけだが、確かに女の子の顔つきだ。


「お前......」

「くっ!」


油断していた。

女の子だと知った瞬間、なぜだか体が固まってしまったのだ。いや、女の子だったからではない。子供だと言う事実に驚いたのだ。

おそらく、ロナやリリアと同じくらいの年齢だろう。

その隙に、俺は腹に蹴りを入れられ、呆気なく逃がしてしまう。


「ダメです!」

「逃がさないよ!」

「うわぁ!」


ロナとリリアだ。二人がすぐ隣で待ち構えていた。

子供の盗賊は、俺のタックルによって弱っていたためか、ロナとリリアの二人がかりでなんとか捕まえることに成功。

今度は逃がさない。


「さ、返して貰おうか」


俺達は、なるべく人目のつかない所に移動した。勘違いで通報されちゃ困るからな。この世界に通報なんて無いだろうけど。


「ほら返しな」


女の子は、嫌そうな顔をしながらも、ちゃんと返してくれた。

中身を確認したが、特に使われた形跡はない。大丈夫そうだな。


「なぁ、一緒に来ないか?」


女の子は驚いた。

そして俺はひざまずき、女の子の顔をしっかりと見上げる。


「い、いいの?」


あぁやっぱり女の子だったんだな。

声を聞いて確信した。もう、こんな声が枯れるほど衰弱している。


「あぁ、もちろんだ。お前も養ってやる。どんな境遇で育てられたのかは知らんが、困っている人を放っておくほど、俺は人間じゃないのでね」


これは少しブラックジョークじみていたが、まぁ俺はモンスターなので良しとしよう。


「ロナもリリアも、それで良いだろ?」


俺が勝手に決めたことだし、一応許可を取っておく。

まぁ、この状況で嫌だと言う方が難しいので、もしかしたら気を使って許可してしまうかもしれないが......


「もちろん!」

「大歓迎です!」


その心配は無さそうだな。

子供一人増えたくらいで、そう変わらないだろう。生活費は少しかかるが、その分戦力は増えた。先程の動きからしても、充分俺達の助けになってくれるだろう。


「じゃあ、えっと、名前は?」

「......レイラ」

「いい名前だな、よろしくなレイラ」

「......うん」


レイラは、褒められたのにも関わらず、あまり嬉しそうではなかった。

きっと、色々と心配なのだろう。

俺だって、心配さ。一人増えてもやっていけるのかとか、ちゃんと三人とも守り抜けるのかどうかとか。

だが、やって行くしかない。


「なら、早速宿に帰るとするか」

「はい!」

「うん!」


俺達は、四人仲良く歩いていく。

宿がどこにあるのかも知らないが、まぁそのうち見つかるだろう。

こうして、新しい仲間が一人増えたのだった。

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