成し遂げてしまったもの
まるで、ゲームにでも出てくるかのようなスケールだ。
全長約二十メートル。口を開いた姿は、俺達四人をも一度に丸呑みしてしまいそうなほど。こんなやつ、いったい洞窟のどこに隠れていたっていうんだ。
「こいつはアシッドスネーク、その巨体で全てを飲み込むモンスターよ。牙からは、金属も溶かすほどの強力な酸を吹き出すわ。気をつけて!」
と、言ったそばからアシッドスネークは大きく口を開け、俺達の方目がけて突進してくる。
ガバァっと洞窟もろとも削り食っていきやがったが、俺達はなんとか交わすことが出来た。
「ふぅ、広い場所でエンカウントしてラッキーだったな。この場所なら、自由に飛び回れる」
俺は前回と同じように、背中から翼を突き出す。そして宙を舞うが、前よりも軽く、とても素早い。
前は三人を持っていたからな、本来はこれくらいの速さで飛べるということなのだろう。
するとアシッドスネークは路線変更をしたのか、酸を吹き出した。
「うぉっ!」
狙いは俺のようだったので、難なくかわせたが、命中した岩がドロドロに溶けてしまった。
うわぁ、こんなに威力があるのか。少しでも当たれば、危ないかもな。
「よし、そろそろ反撃に出るか」
ルアンナさんが驚いた表情でこちらを見ているが、そんなのお構い無しに俺は指示を出す。
「リリアはやつの動きを封じてくれ。ロナは弱点を探して突け。俺がサポートする」
「了解!」
「了解です!」
リリアには、遠距離から支援してもらって、動ける俺とロナで仕留めにかかる。
ロナは、モンスターの弱点を本能的に探り当てることが出来る。だから、いくら相手が巨大だからって、弱点さえ突けばイチコロのはずだ。
「アイシンクル・バインド!!」
リリアの魔術により、氷の柱がアシッドスネークを拘束する。
フッフッフッ、手も足も出まい。まぁ手も足も無いけど。
「うおおおお!」
その氷を伝って、ロナはアシッドスネークに登る。
「弱点は、ここだァ!」
喉。そこは喉だった。それは蛇に限らず、誰しもの弱点だ。
仕留めた!と思ったのも、つかの間。ロナの短剣は、蛇の硬い皮にあっさりと弾き返されてしまった。
「硬いッ!」
ロナが何度も突いているうちに、アシッドスネークは動き出す。
「ロナ!捕まれ!」
俺はロナを緊急避難させた。間一髪、アシッドスネークの攻撃を避けることが出来たが、まさかあの氷の柱を壊すとはな。
細かく身震いさせ、氷を壊したのだ。
やはり、ちょっとやそっとじゃ仕留められないな。
一旦地面におり、体勢を立て直す。
アシッドスネークの弱点は分かったが、皮膚が硬すぎる。
それに、
「ぐっ!」
ガイィンという金属音。アシッドスネークの尻尾攻撃を、俺が剣で防いだ。
一撃の威力が大きすぎる。
これじゃ、俺の剣の斬れ味どころじゃないな......いや待てよ。
さっき、剣が当たった尻尾の先をよく見る。
すると、わずかだが傷跡が残っている。
まだ新し目の傷だ。まさか、俺の剣が?
「......リリア」
「はい?」
俺は、可能性にかけてみる事にした。
「なんとかしてもう一度、ヤツの動きを封じることは出来ないか?」
「は、はい。出来ますけど」
少しの間ですぐに破られてしまう。だが、その少しの時間だけで十分だ。
「ロナ、もう一度弱点を攻撃するぞ」
「え?でも硬くて、もう刃が......」
確かに、ロナの短剣はもうボロボロだ。
だが、それでも使えないわけでは無い。
俺の剣で、皮を斬る。そしてその切れ目にロナの短剣を、弱点に突き刺す。
「俺の剣を信じる」
さっきので分かった。この剣の斬れ味は最高だ。あの硬い皮膚だって、この剣にかかれば断つことが出来るだろう。
だが、それでは決定打にはならない。
そこで、ロナにトドメを刺してもらうわけだ。
「行くぞッ!」
「はいっ!」
「オッケー!」
俺はロナを抱えて飛び立つ。目標は、喉元の弱点だ。
「アイシンクル・バインド!」
氷の柱で拘束。しかし、アシッドスネークも黙ってやられるわけにはいかない。
リリアに向かって酸を吹き出した。
まずいっ!
「プロテクト・シールド!!」
酸は、魔力の盾によって防がれた。
ルアンナさんか!
「私だって、何もしないわけにはいかないわ」
よし、今がチャンスだ。
抱えていたロナを、アシッドスネークの上に降ろす。
そして、
「うおおおおおおお!!」
俺はものすっごい剣撃を食らわす。もう、めっちゃ適当だが、それでも刃は皮膚にダメージを与えている。
ザクッザクッと音を立て、少しづつ削っていく。
「よし!これでどうだ!行け、ロナ!」
「うおおお!」
ロナの短剣が、喉へと一直線に飛んでいく。
「アサルト・インパクト!!」
その時、ロナの短剣は光を放ち、突いた瞬間に衝撃波が貫通した。
そんな魔術を使えたのか、いつの間にか成長しているな。
「やった!」
アシッドスネークは、大きな叫びをあげながら倒れた。
こんな巨体が倒れるのだ。その轟音と言ったら、洞窟内に地震を起こすほどのものだった。
「た、倒した......」
「やったぁあ!!」
皆は歓喜に包まれる。その中でただ一人、ルアンナさんだけが驚いている。
「嘘......でしょ?」
「どうしたんですか?」
「アシッドスネークは、百年間どの冒険者にも倒されたことのないモンスターなのよ。だから、鉢合わせしたら運良く逃げられるか、食われて殺されるかのどちらかなのに......」
ルアンナさんは、ずっとどうやって逃げるかだけを考えていたようだ。
ん?ということは名もなき冒険者が、いきなり大物を倒してしまったということか。
それはそれは......ヤバくないか?
「あはは......」
「学園通えるかな......」
俺達は、誰も成し遂げられなかったことをしたっていうのに、素直に喜べなくなってしまった。
その後、洞窟から出て、コソコソと王都に帰ったのは言うまでもない。




