洞窟
「ソフト・フラッシュ」
ボウッと柔らかな閃光が発せられ、洞窟内を照らす。
松明の代わりになる、便利な魔術だ。洞窟内は少し肌寒いので、この魔術は俺達を暖めてくれ役割もある。
俺も知らなかった。あの本にも書いていない魔術があるんだな。
「ライル君は今までどれぐらいモンスターを倒したことあるの?」
「俺もまだスライムだけです」
「そう......」
ルアンナさんは、残念そうな顔をする。
「おお!見て見てライル!」
ロナが嬉しそうに、はしゃぎまくっている。
そんなに洞窟が楽しいのか?俺にはさっぱり分からんが。
俺は呼ばれたまで行き、指をさすものを見る。
「なんだこれ?」
ただの石......にしか見えないが。
何らかの特殊な鉱石だったりするのか?
「見といてね〜ほいっ!」
ロナは、ガンッとその石に向かって短剣を刺した。すると石はぶにゅぶにゅと動き出す。
「うおぉ!」
「あっはっはっはっ!これスライムだよ!凄くない?」
キッモ。何だこれ、石に擬態しているのか。
確かに触れてみると、スライムのように柔らかかった。
「ロックスライムね。石に擬態して獲物を襲うのよ。でも足が遅いし、飛び跳ねたりも苦手だから、自分より大きくて強そうなのは襲わないの」
へぇ、スライムによっても個体が違うのか。
それにしてもロナ、よく気がついたな。
「あ!こっちも見てください」
今度はリリアが呼んでいる。
指をさすのは、綺麗な花だ。
まるでガラスのような透明度、雪の結晶のように綺麗だ。
「その花はフローズンフラワーと言って、洞窟のように少し寒い場所で育つの。とても壊れやすく、触れるだけで砕けちゃうことから、ノーチとも呼ばれるわ」
ノーチ......まさかノータッチの略だとか言わないよな。
まぁ、見た目も綺麗だしつい持ち帰ってしまいたくなるが、砕けてしまうのなら触らない方が良いな。
自然で鑑賞することしか出来ない植物、美しいな。
「それと、今までは害のないものばかりだったけれど、ここら辺から洞窟の中間。危険なモンスターや植物のいるエリアよ」
みんな気をつけてとルアンナさんは注意しているのだが、ロナは相変わらずはしゃぎ、リリアも周りの植物に気を取られている。
「おい、お前ら気をつけろよ」
「うんわかったー」
本当に分かってるのか心配になる。
そんなこんなで洞窟の中を突き進むが、未だに目的の場所までたどり着かない。
「ルアンナさん、その鉱石ってどの辺にあるんですか?」
「そうねぇ......洞窟の奥に泉があるんだけど、その泉の近くに小さな穴があってね。そこから入れる場所に沢山あるわ」
やはりか。だが、洞窟の泉とはこれまた絶景そうな響きだ。俺も景色は好きなので、是非とも見たいものだ。
俺も若干心を踊らせながら、洞窟を歩いていく。
すると、またロナが何かを見つけたらしい。
「ライル見て見てー」
「なんだ?」
「気持ち悪い〜」
気持ち悪いと言うその方向には、大量のコウモリがいた。うじゃうじゃしていて本当に気持ちが悪い。
コウモリって単体だとまだ可愛い方だが、さすがに天井を埋め尽くすほどの数となれば引かざるを得ない。
「えいっ」
そんなコウモリの大群の中。ロナは何を血迷ったか、コウモリの目の前でパンッと手を叩いた。それはとても大きな音で、洞窟内に響いた。
「あ!そ、それは!」
ルアンナさんがこちらへ急いで走っている。
何かまずいことでもしたか?俺は、コウモリの方を振り返ってみる。
するとそこには、大量のコウモリの軍勢が、一斉に飛び立っている姿があった。
うわぁ気持ち悪っ。
「キキキッ」
コウモリ達は奇声を発しながら飛び回る。俺とロナは、まるで視界が見えなく、位置を把握できない。そゆな状態でも厳しいのに、コウモリ達は超音波を発し始めた。
これ絶対ロナが悪い。
「ああああああ!!」
洞窟内に響き渡る超音波。声が反響し、さらに大きな音に聞こえる。頭がかち割れそうだ。いくら耳を塞いだところで、全く効果は無い。
「くっ、サイレント!!」
ルアンナさんの魔術のおかげで、なんとか超音波は治まった。
「━━━━━━」
あれ?喋っているのに、声が聞こえない。
そうか、これがルアンナさんの魔術か。
おそらく、一定範囲内の音を聞こえなくするというような魔術だろう。上級魔術か?かなり強い気がする。
ルアンナさんは、洞窟の奥を指さす。早く奥へ行こうということだろう。
俺達は走って、その場から離れた。
「はぁはぁはぁ、あ、戻った」
「あぁ疲れたー」
全く、いらんことをしてくれたなロナ。
「サイレントは一定範囲の音を消す、上級魔術。だから、あまり連続では使えないの。くれぐれも、今後はエコーバットンに近付かないように」
「はい......」
ロナは分かりやすくシュンとした。随分と反省しているようだ。
続いて、怒られたわけでもないのにリリアもテンションを下げた。
「私も、はしゃぎ過ぎました......これは依頼なんですよね。ちゃんと反省します」
二人とも反省しているようし、ルアンナさんも怒ってはいない。やれやれ、一時はどうなることかと思っていたが、これで十分警戒するようになったな。
「さ、気を取り直して進もうか」
「うん!」
「はい!」
俺達は、再び洞窟内を進む。次は、下手な寄り道などせず、ルアンナさんの注意を聞いて行動する。おそらく、学園はこういうことをするのだろう。子供は好奇心旺盛だ。
だからこそ、冒険には危険が生じる。
そこで学園は、冒険者になろうとする子供に、危険を学ばせるのだ。
ルアンナさんはまるで先生みたいだな......
道中に落ちていた薬草や、珍しいキノコなどもあり、今回は報酬以上の物が手に入っている。換金するのが楽しみだ。
「あ!」
ここで、やっと泉が見つかった。
あぁ、長い道のりだった。
「あったー!疲れたー」
バタンと、泉の近くで倒れるロナ。
子供にとっては、遊んでいるより暇している方がずっと疲れる場合もあるのだろう。
リリアも、その横で座り込んだ。
「それにしても綺麗な泉だな」
水は、まるでクリスタルのように光り輝いている。
少し虹色も混じっているようなところからも、幻想的な風景を味わえる。
これだけでも来たかいはあったってもんだが。
「本題はここからよ。そこに穴が見えるでしょ?あそこに入って、黒く光る銀色の鉱石を取ってきて欲しいの」
ほう、確かにこの穴のサイズだと、ルアンナさんのような大人は入ることが出来ない。
採掘師のように、ガタイのいい人なら尚更だ。
しかし、俺達はあっさりと通れてしまう。さすが子供の体。色々と便利だぜ。
いっそ、穴を壊して広げてしまえばいいのでは?と思ったが、そんなことをしては、洞窟自体が崩れてしまう可能性がある。こうして子供に頼るのは、賢明な判断かもしれないな。
「ふぅ、通れた」
「あとは、鉱石を探すだけですね」
「お、これじゃないか?」
黒く光る銀色の鉱石。ひと目でわかった、これがそうだろ。
案外穴の近くにあったな。それにしてもここの洞窟にあるものは、どれもこれも綺麗なものばかりだ。
「よっこら......しょい!」
カンッという金属音。俺は、生まれて初めてピッケルを振るい、鉱石を採取している。魔術を使おうかとも考えたが、さすがに鉱石を採取するための便利な魔術は無く、逆に鉱石を粉々にしてしまう可能性もあったので、やめておいた。
「はぁ、終わったぁ」
鉱石は思ってたよりも沢山採れて、持ってきた袋三つ分をいっぱいにしてしまった。
「大量、大量」
「お疲れ様。後は、街に戻るだけね」
そうだった、まだ帰りがあった。
だが今回は予想以上に報酬が良さそうだ。
モンスターと戦ってはいないものの、辿り着くまでの道のりが険しかったからな。
「それじゃあ、行きましょっか」
この鉱石の名前は、アイアニウム。主に、武器や防具に使われる物らしいが、通常のものよりも軽くて丈夫らしい。レティシアが買っていた防具の素材と一緒のやつだ。
これがまた高価らしく、一度にこれだけの量が手に入ることすら珍しいようだ。
だからすぐにでも帰って......
「止まって」
ルアンナさんが、歩みを止める。
目の前には、巨大な大蛇。
簡単には帰らせてくれないようだ。
「行きにはいなかったから安心していたけれど......やっぱり出会わずには帰れないわよね」
俺は、鉱石の入った袋を地面に置き、剣を抜いて戦闘態勢に入る。
「ロナ、リリア、無理はするなよ」
さて、この剣の斬れ味を試させて貰うとするか。
ブックマーク登録ありがとうございます!!
できる限り毎日欠かさず書いていくので、よろしく読んでいって下さい。
面白いストーリーを、描けていると良いのですが.....




