装備屋
「おかえりなさい。お怪我はありませんか?」
「おう、思ってたよりもスライムが多かったからな。報酬はずんでくれよ?」
お姉さんは爽やかな笑顔を浮かべながら、ディミトリーの武勇伝を聞かされる。可哀想だ。
それをオラースが止め、報酬を受け取ってくる。
「うおお!」
「うわぁ......」
「おお......」
「うお......」
報酬金は、思ってたよりも多かった。いや、たしか掲示板には書いてあったがみんなよく見ておらず、袋を開けると驚いた。
「す、スライムでこんなに貰えるとはな......」
「山分けしても少し買い食い出来るくらいあるぜ......」
俺はこの世界の金貨を初めて見るので良く分からないが、いい報酬だということは分かる。量が多いからな。
冒険者......悪くないな。
「よし、じゃあみんなで飲むか!!」
「私の防具が先よ」
「あ......そうでした......」
「ライルさんの分です」と、オラースが俺の分を分けてくれた。
袋を見ると、若干みんなよりも膨らんでいる気がする。気のせいかもしれないけど。
「オラース、分量間違えてないか?」
「そんなことないですよ。ちゃんと、働いた分だけ分けておきました」
働いた分だけ......オラースはそこだけ妙に強調して言った。これ絶対意図的だ。
「いいよ、ちゃんと等分してくれ」
「良いですって、ほら、私達は三人パーティーなので結局一緒なんですよ。それに、この前の恩もありますし」
この前の恩って、それは手伝って貰ったときに返してもらったはずだが。まぁ、そんなに言うなら貰う方が良いか。
「悪いな。実は王都に住もうと思ってところだったし、助かるよ」
オラースは「いえいえ」と首を横に振った。
さすがあの三人の中で、一番面倒見の良いだけあるな。
オラースは二人にも声をかけ
「さ、では装備屋へ行きましょう」
と言った。正直楽しみだ。ただ装備屋へ行くだけなのに、またワクワクして仕方がない。どんな装備があるのか、果たして俺にあった武器はあるのか。楽しみで仕方がない。
装備屋に着いた。
中に入ると、ゲームなどでよく見るような光景が広がっていた。
「らっしゃい」
「おぉ......」
壁には剣や盾、槍などが掛けてある。
カウンターには鎧が置いてあり、マネキンのようなものにも着せてある。
そしてハゲたオッサン!ちょっと肌の黒い、ハゲ親父が店長。これは異世界の装備屋に置いて、必須条件だ。
「すげぇ......これって本物だよな?」
「当たり前だろ、なんで偽物飾る必要があるんだよ。あ、そっか盗難防止か」
自分で言って自分で解決すんなよ......
まぁ、そういうつもりで言った訳ではなく、単純に本物の剣と鎧かを問いたかっただけなんだがな。
俺は剣を見たことがあっても、全て模擬刀とか、観賞用だった。
実際に扱ったことは、もちろん無い。
「私これにしようかな。軽いし、頑丈そうだし」
「お、姉ちゃんお目が高いねぇ。そいつはアルミンテスっつう貝の甲羅で出来ていて、軽くて丈夫なのが売りよ」
「いくら?」
「金貨十五枚くらいかな」
「うげー」
ふむふむ、金貨十五枚は高い方なのか。まぁなんとなく分かるけど。
「おっさん、おすすめの武器とか無い?」
「そうだな......やっぱ剣になるが、これなんてどうだ?」
そう言って店主は一本の剣を持って来てくれた。
見た目は、よく見る普通の剣だが、刀身が少し太めだ。
「こいつは見た目の割には軽くてだな、嬢ちゃんみたいな華奢な子でも扱いやすくなっている」
嬢ちゃん......そんなに女の子に見えるのか。この見た目も考えようだな。
「あの、悪いんですが俺は男で、見た目の割には力があります」
少し強めに言ってやった。別に店主は悪くないが、なんだか馬鹿にされた気がするので、自然とそういう言い方になってしまった。
「おおっと、こいつは失礼。それなら、大剣なんてどうだ?小さな体で扱ってるところを見たら、他の冒険者にも馬鹿にされないぜ?」
今度は俺の背より大きな剣を持って来た。
でっか。たしかにこれなら馬鹿にはされなさそうだが、てか馬鹿にされるのか?俺はまだされたことないけど。
「ん」
ブンッブンッと剣を振り回してみる。
「んー」
そんなに重たくはないが、少し扱いずらく感じた。こんなにデカいと切れ味も悪そうだしな。
持ち歩くのに邪魔だし。
「ん?おっさん、そこの剣は?」
俺は、壁にかけてあるのではなく、カウンターの横に立て掛けてある剣を見つけた。
縦長の袋に入っていて、柄しか見えないが、ずいぶんと存在感のある剣だ。
「こいつか?こいつは剣じゃねぇよ。たしかに剣のような見た目だが、その刀身は無く、ハンマーのように扱うのが正解だろう」
剣じゃない?これがか?
今度はおっさんが持って来てくれないので、俺自ら取りに行く。
少し柄を持ち、袋から取り出そうとする。
「おっも」
ズシンという衝撃が走る。まるで地面に剣が引っ張られているようだ。だが、これくらいの方が俺には丁度いいな。
「おいおいマジかよ......」
と、おっさんが俺を見て驚く。なんだ?この剣触っちゃダメだったのか!?
「それは十人がかりでやっとここまで持ってきた代物だぞ......そんなものを片手で軽々しく......」
え、まじか。そんなに重たいの?これ。
俺は魔王の力をこの身に宿してるからな。この程度造作もない。
「まぁ、重さは問題ないが......本当にこれ剣じゃないのか?見たところ鞘があるようだが」
「ああ間違いねぇ。そいつはハンマーだ。誰がどんなに頑張ったって、何人がかりでも抜けなかったんだからな」
ふーん、そうなのか。
俺は鞘を掴み、剣を引っ張る。
すると、カパッと鞘が外れる。鞘の中で、金属が反響するような音を立てながら、煌びやかな刀身がその姿を現す。
「お、おい......おいおいおいおい」
抜けちゃった。
「な、なんだか夢を見ているみたいだ」
おー......柄は少し薄めの青に、先は金色。
全体的に金色だ。他の剣とは形が違う。
鍔のところが、刀身を向いてバウムクーヘンのように曲がっている。
カッコイイ......剣は黄金に輝いていて、刀身はまるで鏡のようだ。
「坊主、その剣を気に入ったか」
「あぁ、これは実にいい剣だ。重さがすごく丁度いい。まるで俺のためにあるような」
よし決めた。これを買おう。でもお金足りなさそうだなぁ......もし足りなかったら、借金してまで買いたいところだが。
「よし、ならお前にやる」
「へ?」
「その剣をお前にくれてやろう。元々重すぎて売れなかった物だ。どうせ俺が使っても、ハンマーにしかならねぇし。それだったら剣が可愛そうだ」
「いやいや、悪いぜ。さすがに払うよ」
「いいってことよ。なら、こうしよう。お前が一流の冒険者にでもなったら、一緒に飲もうや」
そ、そんなことでいいのか?なんだか貰ってばかりで悪いが、本人がくれるっていうならいいか。
「そんなことだったらいくらでも付き合うさ。おっさんありがとな!」
「おうよ。死ぬんじゃねぇぞ、坊主」
レティシアも防具を決めたようで、買っていった。
しかしこれもタダで貰い、店主によると「坊主だけタダってのも悪いからな。姉ちゃんにもやるよ。ただし死ぬなよ」とのこと。
不吉なことをよく言う店主だが、見た目の割にはとても優しい人だった。さすがハゲだ。男らしい。
こうして俺達は店を出て、一旦家に帰るとする。
「今日はその剣の手入れでもしてな。長いこと使われてないようだしな」
「あぁ、今日はありがとう。また明日も頼んでいいか?」
学校はまだ始まらないらしく、しばらくはこの世界を学ぶことになりそうだ。
俺は三人と別れ、家に帰る。
と、ここで気づいた。
俺帰る場所ないわ!
「あぁ、どうしよう......まだ家ないし、買うお金もないし......」
そんな時だった。
「あ、ライル!」
俺は勢いよく振り向いた。この聞き覚えのある声、まさか!
「よーう、朝ぶり」
「ギルドはちゃんと見つけられましたか?」
ロナとリリアだ。
二人は、俺がギルドに登録しに行ってる間に、学園の手続きをして貰っていた。
「ありがとうな、どうだった?」
「問題ありませんでしたよ。ただ、正式な入学にはテストがあるので、それだけ伝えろと」
テスト?そんなものがあるのか。筆記ならまずいな。俺はこの世界に無知だ。実技なら何とかなるかもしれないがな。
「テストはみんな受けるので、私達もです。一緒に頑張りましょう」
「ま、私が一番かな」
ふっふーんと威張るロナ。最下位の一番なら有り得そうだな。
「そういえば、ライルさんは今日どこに泊まるのですか?」
「えっ?」
あぁ、すっかり忘れていた。本当どこで寝るんだろ俺。外に出るか?いやそれだとまたサバイバルになる。
「あの......もし良かったらですけど、私達の泊まっている宿に来ますか?」
「え」
神か。
「いいの?」
「はい。問題ありません」
「やったー!ライルも一緒だー!」
いやいやダメでしょ。女の子と一緒の部屋だなんて......まぁ、何も無いか。俺が大丈夫でいなきゃな。
「なら、お願いするよ」
「決まりだね!早く帰ろ帰ろ」
なんとか泊まる宿は決まった。しかしずっといるのも悪いので、いつかは家を買おう。
部屋に着くと、すぐに寝てしまった。
今日は新しいことが沢山あったし、体を動かして疲れたし。
ロナとリリアが呼ぶ声がするが、もう瞼が開かない。明日聞くから、今日のところは寝させてくれ。
俺は、意識を絶った。




