男子生徒Cの証言
『箱』? あぁ、俺の所には来てないよ。別に今まで悪い事なんかしてないからさ。まぁ、良い事もしてないけどさ。
……早稲田君と尾下君かぁ。確かに、あの二人学年が変わってから仲が良いね。帰りとか二人で帰ってるんじゃないかな? 何度か見た事がある。
一年の時早稲田君とは同じクラスだったんだけどね。一度も喋ったことないよ。頭が良くって、でもいつも本読んでて話しかけるなオーラ放ってるからさ。だから、なんで尾下君と仲が良いのか不思議だね。
うん、でも最近は大人しいんじゃないかな? なんか一時期あの二人は探偵じみたことをやってたでしょ? でも、『箱』事件には関わってないんじゃないかな。だって警察も解決出来ないみたいだし……
*
「僕の事が知りたいんなら僕に直接聞いたら良いんじゃないかな」
増子美玲が振り向くと、そこには早稲田尋彦が立っていた。ボタンもホックも全てキッチリ留めて、脇には薄い学生鞄を挟み、両手はズボンのポケットに突っ込んで、学生帽の下の長い前髪の隙間から、鋭い視線を刺すように向けていた。
男子生徒Cは噂話をしていたことが後ろめたいのか、早稲田の尋常ならざる雰囲気に気圧されたのか、「俺、もう行くね」と言い残して図書室を出た。
いつも人の少ない放課後の図書室に、二人っきりだった。
「増子美玲。情報通で人の秘密を探り、掴むのが何より大好き。みんなから疎まれているのに、大勢の秘密を握っているのと持ち前の人一倍整った容姿でそこまで恨まれずに世間を渡り歩く」
「そんなにキレイな顔してる?」
増子は舞台役者のような過剰な言い回しで、早稲田に近付いた。
「君こそ『箱』が送られてきそうな過去がありそうだけどね」
「何を聞いてきたのか知らないけど、私、悪い事なんかしたことないわ。 早稲田君、最近私の事探ってたんでしょ。待ってたのよ。来るの」
早稲田は増子に近付き、しっかりと目を見据えた。増子はというと、いかにも楽しそうな様子を隠せずにいる。
「君のところには、『箱』が送られてこない。なぜかな?」
増子はフフッ、と笑った。早稲田は逃がさない、といった風に、彼女を見つめる。
「ボックスマンの正体は、君だね」




