三人
自分達はどうやら同じ、若しくは二つの可能性を繰り返している。
そう言い切った櫛夜は補足説明を行っていく。
早朝の生徒会室に近寄る者はほぼいない。
それこそ生徒会役員のみだ。
そして、この話は別段聞かれて困るわけでもない。
聞けばなにをとんちきな話をしているのだろう、と気に留めるでもなく流すだろう。
それが普通、本来の姿である。
そんなことはこの場にいる三人――櫛夜、綾、奏音――にもわかっている。
わかりきっている。
だからこそ、であればこそ、三人はこの場で知っていることを確認せざるを得ない。
何故ならば、状況として揃っている物が全て、この世のものとは思えないものばかりだからだ。
この世のものではないだろう力が集まっているのであれば、この世のものではない現象が起きても、可笑しくはない。
常識ではありえない現象が起きてしまった時。
まずはその常識を疑ってかかるべきなのだ。
目の前にそれがあるのであれば、自分の培ってきた常識に難があることを認めなければその先の理解は得られないだろう。
綾と奏音は必死に頭を回して櫛夜の話に集中する。
「整理します。今、綾文会長には『騎馬戦で』怪我をする侑李の未来が視えています。間違いないですね?」
「ええ、本当に未来なのかどうかは、自信がないけれどね」
「構いません」
小さく櫛夜が頷く。
綾もそれ以上は口出しをせず、櫛夜の進行に任せている。
「そして狩野には、『飛びつき綱引きで』怪我をする侑李の未来が視えている。これも」
「間違いないね。同じく、このはっきりとした映像みたいなものが本当に未来の現象なのかはわからない、ですが」
二人には、未来が視えている。
共通しているのは、その能力、未来視が能動的に行うことが出来ず受動的にしか発動されない点。
そして異なる過程の後に訪れる結果、侑李友莉に降りかかる不幸。
どちらにせよ、怪我を負ったせいで寝たきりになってしまう、というような後ろ向きな未来が視えているらしい。
二人が言うには、この能力が本物であるかどうかはわからない、とのことだが。
しかし少なくとも綾には櫛夜の未来が一度視えている。
櫛夜は判断材料はそれだけでも十分だと考えた。
未知なものが相手なのだ。
絶対、なんてものを待っているうちに取り返しがつかなくなるよりは違和感を感じた時点で行動すべきなのかもしれない。
櫛夜はそう考え、今まさに行動に移している。
櫛夜自身も説明できないような、危機感を覚えているから、でもあるが。
どうやらその言い知れぬ危機感を綾も奏音も感じているらしい。
「おかしいですよね。だって、結末が同じ、異なる未来をそれぞれ視ているだなんて」
櫛夜がもう一度問い直す。
自分の意見をまとめながら。
二人の反応を見ながら。
「だって、未来が二つもあるみたいじゃないですか」
「……そうね、確かに変よね」
「ええ。その二つの違い、つまり新競技の違いですが、これってたぶん俺の意思によって変わるものですよね」
確認するように櫛夜は綾を見た。
綾は櫛夜の言いたいことをきちんと理解して頷いた。
「ジャンケンで勝てる櫛咲くんに決定権があるわよね」
「一日に一度、ジャンケンで勝てる。でしたっけ……あれ、でも」
奏音が先の説明から、櫛夜の能力のことを反芻し、そして首を傾げた。
「言い忘れてた。どうやら二人きりしかいない時には発動しないらしい」
「そうなの?」
「未来視が自分から出来ないのと同じように、こっちにもいくらか制限が付いてるんだろ」
「へえ、じゃあの時のジャンケンは本当にただ三分の一の確率で私が勝ったってこと?」
「そうなるな」
奏音は納得したように腕を組んだ。
黙って先を促す。
「で、俺の決め方ですが、正直気持ち的な問題です。なんとなく、以上の何か理由があって決めているみたいなことはありません」
「そうなんだ。じゃあ私よりも奏音に味方したのは、てっきっとーに決めたのね?」
「そ、んなことはありません。もちろん真剣に考えましたええ」
「……まぁ追求は後にしましょう」
「後にはあるんですね」
綾もそこはすぐに切り替える。
本気にしているわけではないらしい、と櫛夜としては考えておきたい。
言ったとおり、どちらを選ぶ可能性はあったのだ。
最後は、櫛夜自身がそうだ、と感じた方を選んでいる。
綾の味方をしなかったことについては申し訳なくもおもっているのだが。
「さて、俺の選択によって、たぶん二通りの未来が存在しているはずです」
一つは、櫛夜が綾の言葉に乗ったとき、飛びつき綱引きを選んだとき、奏音が視た未来。
もう一つは、櫛夜が奏音の言葉に乗ったとき、騎馬戦を選んだとき、綾が視た未来。
「仮にそうですね、騎馬戦を選んだ場合をa、飛びつき綱引きを選んだ場合をbとでもしましょうか」
「じゃあ、今はaってこと?」
「ですね、恐らくは」
櫛夜は騎馬戦を選んだ。
奏音たち二年生の思惑に乗っかった。
それが一つの可能性だと、櫛夜はそう言っているのだ。
「でもそしたら、bの未来が視えているっていうのはどういうことなの?」
「そうですね……」
櫛夜は少しだけ考える。
しかしそれは回答の内容に困っているわけではなく、どう話せばいいのか、という部分について、である。
逡巡した後に、恐る恐る喋る。
「両方、あるから、なんだと思います」
「両方って、騎馬戦も飛びつき綱引きもってこと、だよね」
「えぇ、えと、俺が先週火曜日に生徒会役員に誘われて加入を決めます。それは綾文会長からの誘いがあったからです」
「ジャンケンで勝てることを知ったからね」
「それは転じて、侑李の事故を未然に防ぐため、ですね」
「えぇ、そうね」
「そしてその後、水曜日いや、木曜日に奏音から新競技に関して誘いを受けます」
「で、金曜日にジャンケンに見事勝った櫛咲くんに決定権が委ねられた、と」
「ですから、それまで、金曜日、俺が決めるまでは二つの可能性があったと考えるべきなんでしょう」
櫛夜が自分の気持ちで決めたというのなら。
それまでは、どちらに転がる可能性も、未来も、あったはずである。
櫛夜の分類に従うなら、aとbという二つの可能性が。
「そして本来、本当に未来が視えているのであれば、二人に同じものが視えていないとおかしい」
「はずよね。だから、どちらかの能力が不完全なのか、どちらも未来なんか視てはいないのか、はたまた別の現象なのか」
「ですが俺にはたった一週間ですが、二人が嘘をつくようにも、全く確定要素のない事案を話すようにも思えません。現に、今日まで二人はこのことを誰にも話していない」
「そりゃ、事故が起きるらしい、だなんて言えっこないでしょ」
「私も同じ考えですね」
頭の良い二人は櫛夜の話に微塵も揺らぐことなく、きちんと打てば響くように会話を返す。
おかげで櫛夜も要領よく話を続けることができる。
丁度良いところで相槌がくる、というものは話者にとってはありがたいことである。
「だから、両方起きる、んだと仮定します。どちらの未来も起こるものだと」
「……それで、ループってわけ?」
綾が核心に踏み込む。
櫛夜が少しだけ首を縦に振る。
「一応、俺が新競技を選んだ時点で、世界が二つに分かれてしまった、みたいな超常現象という可能性もないでもないと思いますが」
「またスケールの大きな話ね」
「ですが、もしそんなことが起きているというのなら、たぶん、aの世界ではaの未来が、bの世界ではbの未来が視えるんじゃないかと」
「あぁ、それはそうかもしれないわね」
「現実離れしたアイディアも俺にはこれくらいしか浮かばなかったんですが、丁度弥々からループという単語を聞いていましたからね。これが有力なのかなと思いました」
「つまり、今であれば私には今の未来が視えていて、奏音ちゃんには、前回以前あるいは次回以降の未来が視えているのではないかと」
「そういうことになります」
櫛夜は騎馬戦を選んだ。
生徒会としては女子の新競技を騎馬戦として告知、安全の保証など、とにかく既に動き始めている。
ということは騎馬戦を行うこと自体は確実で、であれば騎馬戦にて、友莉が負傷することの方が未来としては正しいのだろう。
つまり、今綾が視ているものはこのaという世界の未来であり。
奏が視ているものはbという世界の未来である、と。
それらは、繰り返しの中で生まれた選択肢なのではないか、と。
そんなことを真面目に言ってのけたのだ。
奏音がしかし疑問を呈する。
「この違和感の正体が、そうだとしても……その、なら、どうしてなんでしょう?」
奏音も焦りからか、やや言葉が抽象的である。
綾がすぐにフォローする。
「なにがかしら?」
「もしこの時間が繰り返されているなら、どうしてそんなことになってしまっているのでしょう?」
櫛夜はその答えを用意していた。
が、綾が間髪入れずに答えた。
「まずは、私たちに未来が視えるくらいだもの。時間を巻き戻す人がいてもおかしくはないわよね」
「やっぱり、そう思いますか」
それはすぐに思い立ったことである。
幾分、この事態は文字通り可笑し過ぎる。
笑いものなのだ。
ジャンケンに勝てる。
未来が視える。
そんな二つの現実の理に縛られない二つの力がそこにあるのだ。
それが絡む問題となれば、まずは自分の常識から外れなければならない。
漫画やアニメの世界観を想定せねばならない。
というか、それしか参考になりそうなものがなかった。
櫛夜はあまりそういったサブカルチャーには通じていないのだが、幸いネットで調べればいくらでも情報の転がっている世の中である。
『ループ』の検索ワードを打つだけで沢山のパターンの作品についての解説が閲覧できる。
同様に『未来視』もそういった作品群ではポピュラーな能力らしい。
その他櫛夜がネットで探した限りでは、ジャンケンで勝つのは心理学知見などの他見当たらず、確率制御は単にそういったアルゴリズムか何かが存在するらしく、現実に即したものが引っかかった。
なお、『世界の分裂』では国際問題程度しかヒットしなかった。
ともかく、櫛夜も今の自分がそんな漫画的な世界観に放り出されているかもしれない、という危惧の元に思考するに、ループを起こす能力者がいてもおかしくないと考えた。
無論、おかしいもののはおかしいのだが。
「となると、最終的に同じ未来が視えていることから、その人物は友莉が事故に遭ったことを、なかったことにしたい、ということですね?」
奏音がまたどんどん先に仮説を進めていく。
「そう考えるのが自然よね。ただ、私たちに同じ未来が視えているんだもの、結果は芳しくないようね」
「もしこれが本当なら、実はこの会話も二回目とか、あるいはもっと何十回目とか、かもしれません」
「考え出すと恐ろしいわね。あと気になるのはそうすると、これがループ現象だとして、ループ現象を認識している人物がいるのかどうか、ってことね」
「認識している、ですか? 引き起こしているではなく?」
「もちろんその能力者は真っ先に探すべき対象ね。確証はないけどたぶんその人は巻き戻した分の記憶を持っているんじゃないかしら」
櫛夜もそれには異を唱える。
「いや、それは俺も考えたんですが、時間を戻した本人も、記憶をリセットしている可能性があります」
「どうして? もちろん、あくまで憶測でしかない話ではあるけれど」
「その人が侑李を助けたいなら、時間を戻してすぐに行動すると思うんです。何かしら、友達か家族か先生か生徒会の誰かに相談したり、なんなら侑李本人に話をしたり」
「そういった動きが、見られない、と」
「少なくとも生徒会にいた雰囲気では、侑李も特に変な相談された、みたいなことを言ってもいませんでしたし」
「なるほど、確かに一理あるわね。なんなら今がまさにその対策を考えている場だものね」
「えぇ、ひょっとすると、侑李が怪我をした瞬間に俺たちの誰かに時間が巻き戻る能力が宿った、みたいな展開もないでもないかもしれません」
「どんどん話が現実から離れていくわね」
「私もかなり頭が痛くなってきました……」
三者三様にため息をつく。
どんよりとした空気を転換するためか、奏音が立ち上がり、そして紅茶を三人分紙コップに用意して机に置いた。
まとめて安売りされているティーバックに備え付けのポットからお湯を注いだだけなのだが、紅茶独特の香りが広がり、気分が落ち着くものだ。
ごく、とまだ注がれたばかりで熱い紅茶が喉を過ぎると、櫛夜は努めてゆっくりと話し始める。
「とにかくまずは生徒会全員、あぁ、侑李を除いた全員に話をしてみよう、と俺は考えているんですが」
綾が同意する。
「そうね、それが一番いいかもしれないわね」
奏音も同じ意見らしい。
「もしかしたら、生徒会役員にその能力者がいる可能性もありますしね」
三人の意見がまとまった。
櫛夜が最後に方向性を固めていく。
「だな。当面やるべきは、もちろん絶対にいるかどうかはわからないが、時間を巻き戻す能力者を探すこと。そしてこれも別途いるのなら、だが、ループの記憶を持っている人を探すこと、ですかね」
「そうね。それと平行してだけど、そもそも事故を起こさないようにする方法も考えないとね」
「そうですね。もしそんな人が見つからなかった場合でも、友莉さんの事故を防いでしまえば解決する話かもしれません」
友莉の事故を、防ぐ。
(そういう対処法もそりゃ、あるよな)
しかし、櫛夜はあまりその方法に打開策がないのではないか、と踏んでいる。
いや、実は綾も奏音もわかっているのだ。
そんな考えは、普通に普通なら普通に浮かぶアイディアだからである。
それを、過去の自分たちが試していないはずがない、のだ。
(いや、でも)
櫛夜は考える。
普通の考え。
友莉が事故に遭う未来が視えた。
ならば、普通はそれを阻止する方法、物理的にそんなことが起こらないようにすべきだろう。
単純に考えられる方法は、どうにかして友莉に体育祭の、というか今であれば騎馬戦の参加を控えてもらう方法だ。
「実際、話したくもないとは思うけどさ。侑李は具体的にどうやって怪我するんだ?」
「そうね、私が視えてる未来だと、友莉は騎馬戦の騎手をやっていて」
「はぁ。すいません騎手って何ですか」
「上に乗ってる人。下の三人が騎馬ね」
「あぁ、そのまんまなんですね。すみません続けてください」
「普通にやりとりの中で、よくない姿勢で、頭から落ちちゃって、頭か首かを痛めた、って感じかしら、丁度そこで私も駆け寄ろうとした所までしか視えないけれど」
「……狩野は?」
「そう、ですね私も似たような感じ、ですかね」
奏音は綾よりは少し話すことを躊躇った。
しかし、状況の共有は必要か、とそこはなんとか話しだす。
「私が視たのは、友莉さんが一人頑張って、複数人を相手にする展開があって、お互いムキになってしまって、思い切り良く引っ張られた友莉さんが、同じく、首を」
「そっか、ありがとう」
なるほど。
と、櫛夜にもイメージが沸いてきた。
実際のところ、騎馬戦はいざ知らず、飛びつき綱引きでそんな致命傷を負うような事故が起きるのか、と櫛夜は思っていたのだが。
ネットで調べた所では指が切断、場合によっては腕が切断した、なんてケースも見受けられたが、騎馬戦と比べるとずいぶんと稀有な例だろう。
「というか、複数人が相手しないと駄目なくらいすごいのか侑李は」
「彼女スポーツテスト学年の枠を超えて一位だし、というか陸上の全国大会で入賞してるじゃない。櫛咲くん知らないの?」
「え、えぇ。そこまでのことは初耳ですね」
「去年だいぶ大々的に祝福してるはずなんだけどなーおかしいなー」
綾が棒読みになる。
かなり呆れている証拠だ。
「そういえば初対面のときも陸上部と生徒会役員をやれるのか、って聞いてたね」
奏音もその時のことを思い出してか呆れた口調になる。
さらに奏音はそのまま続ける。
「というか生徒会の面々も本当に初めて見るかのような対応でした、ね」
「櫛咲くんは他人に興味ないものねー」
「そ、そんなことないですって」
「へぇ、じゃあ聞いてもいいかしら?」
「な、何をですか?」
綾がずい、と櫛夜に近づいた。
といっても机を挟んでいるので言うほど近くはないのだが。
「ねぇ櫛咲くん」
「はい」
「どうして、そこまでしているの。友莉のこと、というか、この現状に対して」
「はぁ……どういう意味ですか」
「ループしているかもしれない。私や、奏音ちゃんが何かを知っているかもしれない。でもそれで動くような人じゃなかったと思うけど。少なくとも私にはそう映っていたんだけど」
綾は知っている。
櫛咲櫛夜はこんなことをしない。
こんなにも自分から積極的に動くようなタイプではない。
であれば、何がいったい彼をそこまで動かしているのだ。
綾はそれが気になっている。
彼がそうする理由はなにかあるのか。
彼の中でなにか変わることでもあったのか。
たとえば、自分が生徒会役員に勧誘したときのような――。
「はぁ、確かに俺はあまり面倒事に首を突っ込むタイプではありませんね」
「そうよね。そしたらどうして」
「強いて言えば、安心していたいんですよ」
「安心ってそれは、何、楽にいたいから、不安なく日々を生きていたいからとでも言うつもり?」
「いえ、もちろんそんなことはありません」
そうだろう。
櫛夜は何も、自分自身の立ち位置を見失っていたりはしない。
いくら非現実的な事象が目の前で起こっていようとも、きちんと地に足をつけて、自分のまま前に進むことが出来ている。
特段、日常生活で不安を抱えているようなタイプでもない。
「ただ、ループしているのが現実なら、俺たちはその先に進めません。それに」
「それに?」
「これでも、せっかく出来た彼女とは、仲良くしていきたいと思っているんですよ」
「……」
「……」
間。
櫛夜がはっきりと声に出した音は。
生徒会室の空気を震わし。
奏音の身を震わし。
綾の鼓膜を震わし。
綾の逆鱗をえいやっと撫でた。
「櫛咲くんは、死にたいのね?」
奏音が、次の展開を読んで、櫛夜に諦めの言葉を投げかける。
櫛夜もそれにはきちんと誠意を持って答える。
「いや、やっぱ報告はしておくべきだろうかと思い直した」
「あらそう。思い直すタイミングが最悪ね」
「そう思うか?」
「あとは任せたわよ。私は、そうね友莉さん以外の皆を集める手筈でも整えておくわ」
「お、おぅ」
奏音はそう言って、その場を立ち去る。
すぐに訪れるであろう大災害が無事に終わるように祈りつつ部屋を出た。
再び、部屋に静寂が満ちる。
「櫛咲くん」
「はい」
「彼女と、仲良くしたいって?」
「えぇ、恥ずかしながら」
「櫛咲くん、彼女いたんだ?」
「実は、つい昨日出来まして」
「へぇ、私の知ってる子?」
「はい、綾文弥々っていう後輩の子でして」
「へぇ、奇遇ね。私の妹と同じ名前」
「そうなんです。実は綾文会長の妹さんとお付き合いすることになりまして」
「へぇ、知らなかったわ」
「そうなんですか」
「えぇ、弥々は何も言ってなかったから」
「恥ずかしかったんじゃないですかね」
「……」
「……」
「……」
「……」
この日櫛夜は一時間目の体育を欠席するのだが、それは余談である。




