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真実の対峙

エレベーターの扉が開くと、目の前に巨大な社長室のドアがあった。 しかし、その重厚なドアの前には、これまで見たこともないロボットが不気味に待ち構えていた。 新型と思われるその風貌は、シオンの倍近くはあろう強固な体格をしており、四方八方へうねるように伸びるいくつもの頑強なアームが取り付けられていた。


ついに、最後の戦いが始まった。


「シオン、行くわよ!」 『了解、突撃、シマス!』


相手の複数のアームが、四方八方からカレンめがけて容赦ない突進攻撃を仕掛けてくる。 カレンも天童が開発した対ロボット用の特殊な電磁ピストルを両手で構え、正確な狙いで迎え撃つが、相手の怒涛の猛攻にシオンはカレンの防御だけで精一杯の状況に追い込まれていく。


「パワーもスピードもシオンを圧倒している」


複数の重厚なアームから繰り出される攻撃は、シオンのクロスアームで受け止めるが、そのスピードに反撃する余地はない。 徐々に後ずさりするシオン。 カレンも構えた銃を撃つタイミングが掴めずにいた。


しかしカレンには明確な目的があった。


(このドアの向こうに、お父さんとお母さん、そしてユウキの命を奪った真の敵がいる……!)


相手の攻撃を冷静に見つめるカレンの集中力が徐々に高まっていき、ついにピークに達する。


【シンクロ率100%】


ついに、二人の真の実力が発揮される。


『ターゲット、右アーム、関節軸受! 三秒後、弱点露出!』


カレンのイヤホンを通じて、シオンから超高度な戦術解析に基づいた的確な指示。 カレンはその言葉に即座に応じ、寸分の狂いもなく電磁ピストルの砲身を滑らせた。 一切の躊躇も迷いもなく解き放たれた高出力の電磁徹甲弾が、指示されたミリ単位のピンポイントへ正確無比に突き刺さる!


『次、左アーム、駆動部! 今デス、カレン!』


シオンの流れるような的確な指示に対し、カレンは寸分の狂いもなく身体を鋭く翻し、完璧なタイミングで次々と相手の急所へ攻撃を仕掛けていく。 一時期は圧倒的な物量差で劣勢を強いられていた二人だったが、徐々に、そして確実に優位に立ち始めていた。


『中央、主砲装甲、二秒後、開放!』


「はああああっ!」


シオンの指示と寸分の狂いもない、寸分破れぬカレンの電磁射撃が、開いた装甲の隙間へ3連続で撃ち込まれた。 激しい金属火花と内部爆発の轟音が響き渡り、シオンの倍近くあった巨大な新型ロボットは、ついに床へと崩れ落ちて大破・撃破された。


二人は煙を上げる残骸を踏み越え、ついに社長室へと乗り込んだ。


「動かないで!」 カレンは拳銃を構えて叫んだが、広い室内には静寂だけが満ちていた。 社長の姿がない。 もぬけの殻となったデスクがそこにはあった。


少し前までそこにいたのだろう。 灰皿の葉巻からかすかに煙が上がっている。


『カレン刑事、屋上。ヘリコプター!』


シオンの高精度スキャンセンサーが、屋上で待機するヘリコプターのエンジン音と熱源を捉えた。 ヘリコプターで逃亡するらしい。


「逃がさない!」 急いで奥から上に続く階段を上り、屋上へ続く扉を開いた。


ヘリコプターはまさに飛び立つ瞬間だった。 慌てて飛び立とうとするヘリコプターのドアは、焦りのあまり開いたままになっている。


シオンは驚異的な腕力を持つ右手で、ヘリコプターの足をがっちりと掴む。 カレンはとっさに、シオンの頑丈な身体を踏み台にして、開いたドアからヘリコプターへ飛び乗った。


「うわあっ!」 規格外の重量を吊り下げられた過積載状態のヘリコプターはきりもみ状態になり、空中で激しく揺れ動く。 不安定なヘリコプターの中、運転席に座る社長へ冷たい銃口を向けるカレン。


不安定な状態でシートベルトもしていないカレンが落ちないようにシオンは、左手で扉を閉めようとする。


何度かトライするものの、不安定な揺れの中なかなか扉が閉まらない。


そのときカレンが体制を崩し扉から外に放り出された。 シオンはとっさにカレンをつかむ。


「もう一度よ、シオン私をヘリコプターの中へ」


シオンは宙づりになったカレンを再びヘリコプターに戻すとその勢いで扉を閉めることに成功する。


(ひとまず安心だ、あとはヘリの離陸をやめさせなきゃ)


「今すぐ止めなさい!」


「うるさい! 離れろ!」 狂乱した社長は、シオンを何とかして振りほどこうと、無理やり操縦桿を押し込んでヘリコプターを屋上へと近づけた。 ぶら下がった状態のシオンは、屋上の床にこすりつけられ、チタンのボディが激しい摩擦音を立てて大量の火花を散らす。 ヘリコプターが火花を引きずりながら屋上の端へ来ると、シオンは空いた左手で屋上の端の鉄骨をガシリと掴み、飛び立つことを絶対に許さない。


この手を離せばカレンが危険な状態になることを意味していた。 シオンのセンサーアイが警告を発し、シリンダーから過負荷の白煙が噴き出す。


『カレン、捕マッテクダサイ!』


シオンが力いっぱいヘリコプターを屋上に引き寄せると、ヘリコプターのプロペラが屋上に当たり、凄まじい爆音と共に粉砕していく。 それでもシオンは手を離さない。 やがてプロペラを失ったヘリコプターは、そのまま屋上に横倒しになって停止した。


カレンにキャビンから引きずり出された社長は、おびえた顔で悲鳴を上げた。


「頼む……! 命だけは助けてくれ!」


こんな小物に、お父さんも、お母さんも、そしてユウキも殺されたのか。 込み上げる深い無念と胸を刺す怒りに、カレンは無念の表情を浮かべながらも、静かに手錠をかけた。


捕らえた社長を連れて下に降りると、一階のホールでは合同タスクフォースの部隊が敵をほぼ制圧していた。 カレンは社長を司令官に引き渡した。


「お父さん、お母さん、ユウキ……ようやく終わったわ」 カレンは涙を拭い、そっと呟いた。横ではシオンが静かに見つめ返していた。


* * *


数日後、ニューヨークの空港では、カレンとシオンと片桐が帰国の為にチェックインカウンターに向かっていた。 そこに天童とハルカがやってきた。


「見送りにきたよ」 天童が言うと、ハルカがカレンに飛びつき固く抱きしめた。


「さみしくなります」


「留学が終わったら日本に帰ってくるのよね? その時にまた会いましょう」 約束を交わし、カレンもハルカを優しく抱きしめた。


片桐は天童に尋ねた。 「お前はまだ帰らないのか?」


「僕はもう少しこっちのラボで仕事をしていきます。捜査の進捗も気になりますし、なにかあれば連絡しますよ」


二人に挨拶を済ませると、3人は搭乗口に向かって歩き始めた。


* * *


後日、日本に戻ったカレンのもとに、天童からネオ・ロボティクス社の捜査結果が届いた。 すでにサジール国へ輸出済みのロボットに、ガードレールが破壊された悪意のある桐生博士の超自律型AIが搭載されていることが記されていた。


お父さんの願いは、研究の平和利用。 悪事に利用するのは、絶対に許さない。


決意を固めたカレンを見つめるシオン。


(僕はどこまでも君についていくよ。そして僕が君の盾になり君をまもり続ける)

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