episode8
新の一声に、若葉とナンパ野郎は2人して新に振り返った。ナンパ野郎は新に邪魔されたのが気に食わなかったのか、新に睨みを効かせながら詰め寄った。
「あぁ?なんだァ、青クセェガキが。邪魔すんじゃねぇよ。」
「...どっからどう見てもその子嫌がってんじゃねぇか。いい大人が子供相手に何してんだよ。」
「んだとコラァ!!」
ナンパ野郎が新に殴りかかろうとしたが、新はヒョイっと避けるとナンパ野郎の足を引っ掛け転ばすという見事な流れを披露した。外野はその様子を見て新に拍手を送った。ナンパ野郎は恥をかかされて顔を真っ赤にすると、「クソッ」と言い残し走り去って行った。新は「ダッセェの」と小さく笑ってナンパ野郎が去って行った方向を見た。少しするとハッとして若葉の方へと顔を向けた。
「キミ!大丈夫だった?!ケガとかさせられてない?!」
どうやら新は助けた相手が若葉だと気付いていない様子だった。若葉も新とは疎遠になっていたせいで、すぐには新だと気付くことが出来なかった。
「だ、大丈夫です。...ありがとうございました。」
「いや。無事ならいいんだ。えぇ...と...」
「あ、1-3で喫茶店してる桜です。」
「桜ちゃんか。オレ実はツレ2人と来たんだけどふたりが2人ともはしゃいでどっか行っちまってさ。...よかったら桜ちゃんとこで待たせてもらえない?」
新はそう言うと若葉を見つめてきた。若葉はようやく新の事を思い出したが、自分が"佐倉 若葉"である事が言えず、キャスト名である"桜"を名乗ってしまった。
「はい。良ければウチのクラスで休んでいってください。案内しますね。」
「ありがとう。助かるよ。」
そんな簡単なやり取りだったが、若葉はいつかバレるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、全くその様子は見られない。もしかしたらこれは再び新と接点を持てるチャンスなのではないか...と思い、若葉は思い切って新に声をかけた。
「あ、あの!先程はホントにありがとうございました!...それで何かお礼をしたいのですが...」
「そんな、お礼だなんて!当たり前の事をしただけだし...」
「そ、そこをなんとか..!」
若葉は若干前のめりになり少し必死になってしまった。そんな若葉の様子に新はビックリしたが、顔を真っ赤にした若葉に見惚れて「可愛いなぁ」と心の中で呟いて、「それなら...」と言葉を紡いだ。
「来週の土曜、良ければオレとデートしてもらえませんか?」
「で、デート?!」
「...ダメ、かな?」
新は若葉の顔を覗き込みながら言うので若葉は思わず「だ、ダメじゃないです。」と返事をしてしまうのであった。そうこうしているうちに1-3の教室に着いたため、新を席に案内する。すると新は「ちょっと待って」と言い備え付けられていた紙ナプキンに何かを書いて若葉へと渡してきた。
「コレ、オレのケー番。良かった連絡ちょうだい?土曜のことはその時決めよう。」
「...ハ、ハイ。...アリガトウゴザイマス。」
そう言うと若葉は新から離れていった。クラスメイト達からは、「土曜って何?!」「あのイケメンと何があったの?!」と質問攻めされ、ナンパ野郎の一件からの流れを話す羽目になったのであった。
「...やっぱり桜ちゃん1人で客引きは危険だったのよ...ナンパされるなんて...」
「べ、別にオレ男なんだし1人でも...」
「ナンパされといて大丈夫とは言えないのよ!」
「ゴメンナサイ...」
若葉はナンパされた事を軽く責められつつ、心配されつつでクラスメイトから囲まれた。
「桜ちゃん、もう客引きはいいからホールに戻って。教室なら大丈夫でしょう。」
「...ハイ。」
若葉は残りの時間ホール業務をこなすことになった。新の方へと目をやると、一緒に来たと言う男友達2人と合流したようであった。若葉は新から貰ったケー番を大事にカバンへと仕舞うのだった。




