episode51
「さっ、上がって上がって!新、ダニエル!紹介するね。直道おじさんの息子さんの浩兄...浩史さん!普段は京都のK大に通う大学2年生!」
「K大?!メッチャ頭良いんですね...。」
「ハハッ。そんな事ないよ。えっと...新君、だね?」
「は、はい。」
新は何故だか浩史に対して緊張してしまっていた。浩史は笑顔ではあるが、メガネの奥の瞳が笑っていないように見えたからだ。
「新?どうした?」
「ん?いや、なんでもないよ。大丈夫。」
今は若葉の不安を煽るべきでは無いと思い、新はなんでもない様を装った。
「...浩史さんはいつからコッチに?」
「僕?僕は先週からだよ。早く若葉に会いたかったからね。」
新は若葉は気が付いていないようだが、若葉を見る浩史の目には何やら不穏な物を帯びているように感じていた。
「あ、オレお茶入れて来るね!浩兄も座って待ってて!」
「私も手伝いマース!」
「ありがとう、ダニエル。」
若葉がダニエルを連れキッチンへと入っていくのを見送ると、浩史はダイニングテーブルの席に着いた。それに倣って新も浩史の向かい側の席に着いた。
「父さんから聞いたけど、若葉と新君は恋人同士なんだって?」
「ひ、浩兄?!」
「はい。オレは若葉とお付き合いさせてもらってます。」
「ふぅん...。君が、ね。」
「...浩兄?どうかした?」
「あぁ。いや、なんでもないよ?ただ、随分と人の良さそうな恋人をもらったなぁと思って。」
「...どうも。」
「私はまだ認めてませんケドネ!」
「ちょ、ダニエル!」
若葉は入れたお茶を持ってキッチンから出てくると、それぞれの前にお茶を置いていった。
「ありがとう、若葉。それにしても...いくら父さんが夜来るからと言っても子供だけで暮らすなんて...心配だなぁ。」
「大丈夫だよ、浩兄。家事は皆出来るし、不用心に玄関を開けないようにするから。」
「そうだね。その方がいいよ。ちゃんと相手を確かめてからにするんだよ?」
「もう!浩兄は心配しすぎ!」
「大丈夫ですよ、浩史さん。オレ達ももう高校生で、そこまで言われる程子供ではありません。」
浩史の言葉に新は少し強めに否定するとお茶をすすった。若葉はなんだか新と浩史の間に溝がある事に気が付き、不安そうな顔をした。
「新...?浩兄...?どうしたの?なんだか仲悪そうだよ?」
「あぁ、ごめん若葉。気の所為だよ。ね、新君。」
「そうそう。若葉は心配しなくて大丈夫。」
2人から"気の所為"、"大丈夫"と言われた若葉であったが、なんだか腑に落ちない気分であった。




