episode38
「あ、新...!」
「あ、悪い若葉。我慢の限界で...」
「うぅん。助かった...。ありがとう。」
アトリエからしばらく新が若葉の手を引き走り、近くの公園まで来た2人は荒くなった息を整え抱き合った。
「気持ち悪かった、怖かった...」
「...もう大丈夫だから。一緒に来てたのに何も出来なくてごめん。」
「新は何も悪くない。オレの方こそ、オレのせいで...新に危ない思いさせて...」
「ストップ。若葉が謝ることはないんだから。な?」
新はそう言うと若葉の頭を優しく撫でた。そうしているうちに、青ざめていた若葉の顔色は徐々に戻っていった。
「...オレ、別に噂広められてもいい。クラスの皆は知ってることだし...。今更学校中に広まっても怖くない。それよりも新に危害加えられる方がよっぽど怖いよ...」
「...若葉...」
「それとも、もうオレと一緒にいたくなくなった...?」
「そんな訳あるか!オレがどれだけ長い間片想いしてたと思ってるんだ!」
新は若葉の両頬に手を当て自分の方へと目を向けさせた。そして若葉の瞳の奥を覗き込むように見つめた。若葉は新の真剣な目に、思いに、今まで我慢していたものが溢れ出してきて、涙がホロホロと流れ始めた。その涙を新が優しく拭うと新は若葉にそっと口づけた。それに若葉はポカンと固まりしばらく微動だにしないでいたかと思ったら次の瞬間、"ボンッ"と音を立てて顔を真っ赤に染め上げた。
「あ、あら、新...!」
「ごめん。でもこうしたら安心するかなって。ホントはもっといい雰囲気の時にしたかったんだけどね。キスするのも我慢出来なくなっちゃった。」
「フフッ...なにそれ。」
「おかしいかな?でも笑ってくれて嬉しいよ。...若葉。」
「んっ...」
新は若葉の口だけでなく、頬や瞼など、顔中にキスを降らせた。
「新...ふっ..!くすぐったい。」
「やめないよ。若葉。大好きだ。」
「ん。オレも大好き...」
今度は若葉か新の頬にキスを贈った。
「ふっ...まさか若葉の方からしてもらえるとは思わなかった。」
「お、オレだって男だよ?キスくらいできる。」
「ハイハイ(笑)それじゃあ家に帰ろう?今回の件、オレ達だけの問題には出来ない。親に話して学校側に通報する必要があると思うんだ。生徒に手を出したと言えば、ヤツに何かしら罰は与えられるだろ?」
「...でも評判の良い先生らしいから、信じてもらえるかどうか...」
「そうなればオレも出張るよ。他校のオレも言えば信憑性が上がると思うし。それにアイツはあの絵を捨てられないはず。若葉に執着してたみたいだからね。今回の証拠になるよ。」
「...そうだね。オレも覚悟を決めるよ。」
そう言って2人は手を繋ぎながら帰路へとついた。その手の温もりは互いを安心させるのには十分であった。




