episode36
週末、若葉と新は地図を頼りに喜多川のアトリエに向かった。
「...ここ、か?」
「だな...」
2人はアトリエを見て言葉をなくした。そこにあったのは、西洋風の大きな建物で、庭には様々な花が咲いていた。
「なんか、アトリエには見えない豪邸だな...,こんな所で絵を描いてるのか?」
「美術部の女子曰く、絵はアトリエでしか描いてないらしい。学校では準備室で絵の構想を練ってるだけなんだって。」
「なるほどなぁ」と新が呟くと、玄関の方から人が出てくるのが見えた。その人物は花きりばさみを持ち、庭の白いバラを数輪切り取っていた。そしてそのバラを太陽にかざしうっとりとしていた。若葉はその目が自分を見ていた時の喜多川の視線そのものだと感じた。それから、その視線がバラから玄関先に立っている若葉達に向けられ、その存在を認識すると笑顔で歩み寄ってきた。しかし、その笑顔からは、喜びと嫌悪が入混ざった感情が読み取れた。
「やぁ、こんにちは佐倉君。よく来てくれたね。待っていたよ。それで?そちらにいるのは、、例の恋人君かな?なんで来たのかは...何となく想像つくけれど。」
喜多川はそう言うと笑顔を崩し、まるで嫌なものでも見るかのような視線を新に向けた。
「来るに決まってるでしょう。あんな脅迫めいたメモを見せられたら。」
「脅迫?なんの事かな...?」
「...テメェ...」
「新!先生。オレ、ちゃんと来たしモデルもちゃんとします。なので新が同席することを許してください。」
「...仕方ないね。さ、入っておくれ。」
そう喜多川に促され、2人はアトリエに足を踏み入れた。アトリエ内はモデルを映えさせるためか、白で基調されていた。
「ひとまず、こちらでお茶でも飲んで待っていておくれ。今デザイン画を持ってくるからね。」
喜多川は2人をアトリエ内のテーブルに案内し、紅茶を振舞った。そして2人が紅茶に口をつけたのを見届けるとデザイン画を取りに部屋を後にした。
「少し心配しすぎたかな...?」
「いや...警戒するに越したことはない。向こうもオレが一緒に来ることは想定していたみたいだしな。」
「そ...うだ...ね...」
「若葉?」
「なん...か、ねむけ...が...」
「おい!わかっ...!!」
ガシャンと言う音と共に若葉は眠りについてしまい、その若葉を心配して駆け寄ろうとした新は首筋にスタンガンを当てられ気を失った。
「ハナから1人で来れば、こんな手荒なマネをされずに済んだのに...実に愚かで、滑稽で...それでいて美しい愛だね...」




