99話 作戦会議
そこにはアンジがいて、思穏がいて、二人ともどうしたんだろうと追いかけようとした瞬間、アンジによって思穏のデステクラインとカステクラインが壊れ、思穏が消えていく。
アンジもごめんというような表情で遠ざかっていくから、追いかけたかった。
はっと起き上がり、ここはと周囲を見渡していたら、あっ起きたとみけ太の声がする。
「まだ起きないと思ってたよ」
おけとタオルを持って来たみけ太であり、シャワー浴びよっかと言われたから、ベッドから降りると、すごい汗をかいていたようだ。だからおけとタオルを持ってきたんだなと思いながら、風呂場に案内してもらって、シャワーを浴びることにする。
みけ太がいるってことは、ここは獄の世界で間違いはないんだよなとシャンプーをつけてわしゃわしゃと洗った。体も洗い、綺麗さっぱりになって、置いてあった服に着替える。航さんが考えた団服は着れないもんなと思いながら、着替え終えた俺は、脱衣所から出るとみけ太が待っててくれた。
「風呂場貸してくれてありがとな。それで一応、ここどこだ?」
「隠れ家だよ。見てわからなかった?一応、ここトウノ国だよ。本当はライトノ国でもって思ってたんだけど、シロノ団員がちらほらいるから、ここにいる感じ。今は、セブラさんがバレないように透明にはしてないってわけ」
「あぁなるほどな。話を聞く限り、すごい綺麗な場所だって聞いてたけどな」
「後で聞いてみたら?一度だけ見せてほしいって」
聞いてみるよとみけ太に伝えて、そういやとみけ太に聞いてみることにした。
「あれから猫にはならないの?」
「さすがにグレイ団長の魔法にかかっただけであって、猫はもうこりごりだし、リディーさんに散々、いじられてたから」
確かに想像するだけで猛獣使いをイメージできちゃうほどで、思わず笑うと、こらっと拳骨をもらう羽目に。みけ太が案内してくれた部屋にはセブラとみよりさん、それからディーグと白杖を持ったおじさんがいた。
「具合はどうだ?」
「まあなんとか。まだ思穏がやられたショックは大きいけどな。てっきりくーたんもいるのかと思った」
「ブラックノ国にいるし、ここは葉桜家と葉桜家に仕えていた紅葉川家と緋土家しか入れないからな。まあとにかく座れ」
セブラにそう言われてディーグが座っているソファーに俺とみけ太が座った。
「早速なんだが、想心。アンジのことどう想ってる?」
その言葉に胸が苦しいような感覚で、胸を押さえる。アンジとの思い出、そしてアンジが思穏のカステクラインを壊した姿。なんで、なんでだよとアンジに問いたいぐらいの気持ちだ。
思穏はアンジに何もしてないのに、なんで思穏を狙ったのか。
苦しくて、辛くて、息ができそうにないと思った時、押さえていない方の手で、みよりさんの両手が包んでくれる。一度、深呼吸をして、落ち着かせた。
落ち着いたことで、セブラの問いに応える。
「アンジは俺の相棒でもあり、心友でもあり、そして俺の大事な家族だと想ってる。一人にすると不安になったり、時に拗ねたり、駄々こねたり、子どものようにも見えちゃう部分もあるけど、俺にとっちゃ、どうしようもない可愛い弟だなって想ってた。ずっと一緒にいて、もし弟がいたらアンジみたいな弟がいそうだなって想って」
俺が応えるとセブラとみよりさんは立って俺に見せないように背中を向ける。そうだよな、二人の子どもだもん。そして俺は汀春さんの魂を引き継いだ者。汀春さんの両親に会えて、さっきは胸が苦しくなってたけど、胸がいっぱいになるほど嬉しい。
それから白杖を持っているおじさんもなぜか号泣していた。
三人が落ち着いたタイミングで、三人は目は腫れているし、鼻かみすぎて鼻が少々赤くなっている。
「想心の気持ちしれて感謝するよ。やっぱり魂は惹かれ合うものなんだな。あの時さ、俺がもっとしっかりしていれば、汀春も冰春も、俺と過ごしてたんじゃないかなって思ってた。こんなことにさせてしまったのも、俺の責任でもある。だから」
「セブラ、俺の責任とか言わなくていいよ」
俺はずっと思っていたことがあった。それは
「これは親の責任ですとか、これは家族の問題って結構聞くけどさ、子どもはそう思ってないんじゃないかなって気がする。子は親を見て育つっていう言葉は事実だけど、親は親、子は子として考え方が違う。それをどう受け止めてあげるかが一番大事なんじゃないのかなって常に思ってて。責任を子どもに学ばせるのはもちろん。ただ敏感になりすぎると子どもは親の言いなりになるから」
いろいろ頭にぽんぽん出てくる言葉を伝えていたら、ディーグとみけ太がくすくすと笑い始める。なんだよと思っていたら、セブラもみよりさんも、白杖のおじさんも笑い出してしまった。
なにか変なことでも言ったかと喋ったことを思いだしていると、白杖のおじさんが喋り出す。
「やはり汀春と似たような言葉を言っていたな、春」
「汀春に言われているような感覚だったよ。汀春がここにいた頃さ、俺が父親になってすまなかったって伝えたら、汀春が父さんと母さんがいなかったら、僕も冰春も生まれてはこなかった。僕たちを不幸にして責任をずっと感じてる父さんより、何十倍も幸せだったよって。その言葉を聞いて、俺が考えているよりずっと汀春は前向きに生きていたんだと感じとれたんだよ」
汀春さんがそんな言葉を言っていただなんてと、セブラはもう一度鼻をかみ、話を続ける。
「やっぱり魂も似てくるものなんだな。想心が寝てる時間、俺の責任だってずっと思ってて」
「そういうのはなしって今言っただろ。それに元はと言えば、邪心があるから変なことを考える癖、そろそろやめといたほうがいい。辛いことも、苦しいことも、妬むことも、怒ることも、この先あるかもしれない。ただ負より前向き思考のほうがいいと思わないか?」
「ははは。想心はやっぱり汀春そのもののように見える」
「おいおい、やめてあげろよ、秋彦。っていうか、まだ現世切符で行かないのかよ」
「息子を一人にさせるわけにはいかないからな。かといってデステクラインをまともに使えないから、こうしてここにいるわけだが」
照秋さんのお父さんかと、俺はつい秋彦さんの前にきて、秋彦さんのサングラスをとり、両手で目を押さえてあげた。この前のリディーの大事な仲間を助けたように、できるんじゃないかなと強く願うと、みよりさんが萩の花がと言い出す。
本当に萩の花が宙に舞い続け、消えると秋彦さんが俺の手首を掴み手を離してあげる。
「秋彦さん、見えますか?」
見えるっ見えると嬉し泣きをして、よかったと胸を撫で下ろした。そして秋彦さんはセブラに抱きついて春だ、春だと言い、おい離れろと言っていても、しばらくは離れなかった。
秋彦さんが無事に見えたことで、秋彦さんは一度周囲の状況を確認するため、目の力というもので把握している。邪神にやられて目を失ったのに、またこうやってみるだなんて、相当な覚悟がいそうだな。
待っているとセブラがなにかを感じたのか、席を外してしまう。
「そうだ、ディーグ。…大樹って呼んだほうがいい?」
「みんなからはディーグって呼ばれてるから、ディーグでいい。それより、想心。颯楽のことなんだけどさ」
「こっちにいるのが凪嬉兄で、現世にいるのが颯楽兄らしいよ。って言ってもディーグは双子だなんて知らなかったもんな」
まあなと少し落ち込んでいて、みけ太があっとなにかを思い出す。
「俺がさ、その想心を病院送りにさせちゃった時、想心のお兄さんがいて、もう一人同じ顔をした人がいたから不思議だった。そういう意味だったんだ」
知ってないの俺だけかと余計にショックを受けてしまうディーグであり、きっとこれから凪嬉兄と向き合える時間はあると思うって感じはした。ただ疑問なのが手紙を受けて凪嬉兄はアンジと一緒にいてくれていると思ってたけど、なにがあったんだろうか。
するとセブラが戻って来て夫婦を連れて来た。女性は俺に飛びついて、守ってあげられなくてごめんねと俺に謝罪をする。ここに入れるのは寅萩家と寅萩家に仕えていた家系。つまり俺の本物の両親だと気づいた。
「母さん?」
「そうよ。それとね、想心にはお兄ちゃんがいるんだけど、お兄ちゃん病があって、想心を育てることができなくてね。それで想心は葉桜家の養子として育てられていたのよ」
俺に兄がいただなんて衝撃すぎるも、兄貴の名前はと聞いたら楓よと教えてくれた。予備に持っていたリヴィソウルで、どんな人なのか後で見てみよう。それに母さんも父さんも楓兄のことが気になるだろうし。
そろそろ離れてあげたらどうだと父さんに言われて、母さんは離れ、空いている席に座った。セブラが思穏の壊れたカステクラインを見せてもらうことに。真っ二つに割れていて、こうなったら本来死屍になる仕組みにはなっているらしいけど、思穏の場合は違うらしい。
「想心が大丈夫だと確認が取れたから話す。思穏は元々照秋のデステクラインを使用していたから、自ら死屍になることはまずない。なぜなら死屍を生み出したのが、照秋だからな。それでおそらくだが、一時的に思穏は照秋の元にいることが確認取れた」
「よかった。じゃあ会えるってことなんだよな?」
「いや、玖朗が言うに思穏は眠っている状況だったらしい。そこで結、叶、これを見てどう感じる?」
俺たちは普通に真っ二つになっているようにしか見えないが、母さんがまずいわねと言い出す。
「あなたたちには真っ二つに見えてると思うけど、私と叶には龍桜家の呪いがかかってるように見える。楓もそれにかかってるから、どうすることも。ただ一つ、芽森ちゃんなら救えるかもしれない」
「冰春がなぜその呪いについて知ったのかわからないが、手遅れになる前に動いたほうがいい」
「…やっぱり楓は冬人の生まれ変わりか。あの呪いを持ったまま、現世へ行ったからな。信じたくはなかったし、本当に悪い」
「春は謝らなくていいわよ。それに今、楓のそばに芽森ちゃんがいるの確認が取れたし、会って来たわ」
じゃあ母さんと父さんは二段魔導士かもしかすると一段魔導士なのかもしれない。早く会いに行きたいなと思っても、俺だって認識してもらえるかどうかも不明だな。
「芽森なにか言ってた?」
「真実を知って、もし会えるなら想兄に会いたいって待ってるわよ。ただ獣柱とそして龍桜家がいつ動き出すかわからない」
「準備は着々と進んでいると颯楽から聴いてるから、準備が整い次第、動いたほうがいい。獣柱は獣柱と関わりを持っていた人たちが揃っていたから、想心はセブラとそしてディーグとみけ太と一緒に思穏くんの家へ」
「あの結さん。もしかしたら邪魔が入ると思う。せなが猫柱の部下らしくて」
「それなら大丈夫よ。猫柱は元々柱の役目から外れている部分があるらしくて。セブラ、ちゃんと話してなかったの?」
母さんがセブラに向ける顔が、笑ってはいるけど怒りを隠しているような表情で、セブラから話を聞くことに。
「十一種類が獣柱ではあるが本来は元々十でできている。まあ予備にいるのが猫柱だけであって、大体内密仕事が多いらしい」
「だからせなはずっと俺と一緒にいたのか。ただなんかまだもやもやする」
「会った時に聞けばいいんじゃないか。俺も凪嬉に聞きたいこと山積みだし、見かけたらそっち行くかもしれない」
「まずは思穏の家に辿り着いてからにしろよ。すぐ思穏の家に行けるって認識でいいの?」
母さんと父さんに聞くと、もちろんと言われたから大丈夫なんだと信じるしかないだろう。するとセブラのデステクラインが
くるくる回り出し、応答するセブラ。
「伊雪、どうした?」
『団長がこっちに来いーって。思穏が起きたっぽい。ただ覚悟はしたほうがいいかもってさ』
「わかった。ちょうど想心も起きたから、すぐ向かう。後でな」
通話が終え、覚悟をしておいたほうがいいってどう言うことだよと、少々不安になるも、ブラックノ国へ行くことになった。
ワープの力でブラックノ国に訪れると全てが黒で明かりがあるからなんか綺麗な場所だなと思ってしまうも、住民たちの顔立ちはごついというか表情が明るくないと感じてしまう。
なんでなんだと思っているとディーグがあんな顔してても、シャイな人たちばかりだからうまく顔で表現できないと教えてもらった。
ブラックノ城に到着した途端、爆発が起き、なんだとケホケホしていたら、チューとネズミがこっちにやって来た。てことは絹鬼団長の仕業か。汀はネズミを追いかけてしまったが、まあ俺のところに戻ってくるだろう。
「あれれ?想心来たんだ。久しぶり、これ食べてみる?」
みるからに怪しい色をしているクッキーであり、遠慮しとくと言いながら、なぜ爆発が起きたんだと聞くと、あれやってると指を指す方角を見たら、大砲らしいものを作ってるらしい。
「自分の国でやらないのかよ」
「依頼されてるから、こっちで実験をしてる。結さん、ちょっと新作見てもらってもいい?」
「あなた、想心と一緒にいてあげてね」
あぁと父さんは言うと、絹鬼団長と母さんは行かれてしまい、照秋さんが眠っているという場所へと向かった。緊張するなと思いながら到着し、セブラと俺はその中へと入る。
綺麗な場所と思いながら進んでいくと、そこに照秋さんが寝ていた。
「照秋、ようやく連れて来れたよ。想心、ガラスに触れたら、照秋の心の中に入れる。覚悟はいいか?」
頷き照秋さんが入っているガラスに触れた瞬間、景色がすぐ切り替わった。あたりは紅葉の木々があって、綺麗な川が流れている。
「やあ、初めましてだね」
「照秋さん?」
「うん。それから久しぶり、汀春」
えっと思わず横を見たら汀春さんがいて、久しぶり照秋と言っていた。肝心の思穏はどこだと見ていたら、こっちだよと照秋さんが案内をしてくれる。
二人は昔話をしながら歩いていて、まさかこの光景を見られるとは思わなかった。そして後ろに気配を感じるのがセブラであり、あの中に入ればと思っても、なぜか遠慮しているようだ。
それを察知したのか、汀春さんが振り向いて、父さん何やってんのとぶっきらぼうに言うもので、セブラは苦笑いをした。
「懐かしくてついその光景を見てたかったんだよ。照秋、さっき伊雪から覚悟はしておいたほうがいいって言われたんだが」
「おそらく冰春があの術をかけた影響なんだと思う。時間はかかりそうだよ」
歩いたその先に思穏はいて、景色を眺めていた。照秋さんが呼びかけると思穏は振り向くも反応がない。俺だよ、想心だよと伝えても、首を傾げてしまった。セブラのことも覚えていない様子だった。
「喋ることも難しい状況で、汀春やってみてくれる?」
うんと汀春は思穏に近づき、やってみるも効果は得られなかった。じゃあと俺も試してはみたものの、効果がない。
「想心、我慢できないなら出てろ」
「平気だ。アンジが悪気があってやったんじゃないって信じてるから。思穏、絶対に直してくるから、待ってて」
思穏に告げ、たとえ反応がなくても、思穏の魂は絶対に直って、一緒にポイント貯めて、一緒に旅立とうな。
「照秋さん、思穏のこと頼みます。汀春さん、セブラから全て聴きました。おそらく汀春さんの魂を解除したのはアンジ、いや冰春だと思う。それで邪神と取引をして、邪神は今も冰春の内にいるのではないかなって」
「僕もそう思った。じゃなきゃ、思穏くんのカステクラインがあんな形で壊れるわけがなかったからね。父さん、今度こそ冰春を救わないと、冰春の魂は消滅する。それだけは一番避けたい」
「わかってる。そのために、色々と準備を玖朗と一緒にして来たからな。こうやって汀春とまた会えたことが嬉しかった」
僕もだよと汀春さんが言うとセブラは汀春さんにハグをして、想心を頼むと言い、先に出てしまった。
「僕はもう二度と現れることはないけど、今の魂は想心のもの。自分が歩む道に困難があったとしても、立ち止まらず前に進む勇気があると信じてる。冰春のこと、最後になるまで頼むね。そして叶うなら、その時は今度こそ冰春と旅立ってほしい。生まれ変わった時、どうなるかわからないけど、僕は思うんだ」
俺の胸に手を当てる汀春さんは、俺の心の一部に帰っていくように光り始めていく。そして汀春さんは涙を溢しながら俺に告げた。
「また双子として生まれるんじゃないかなって。その時はずっと一緒にいてあげたい。それが僕がやり残したことだから」
告げ終えた瞬間に、汀春さんが完全に光って俺の心へと入って行き、そしてカステクラインが戻った。
「照秋さん」
「ん?」
「もし全てが終えた時、一つだけ叶うなら照秋さんも現世にきてほしい。ほしいんじゃない。絶対来なくちゃ。今度は四人で会えたら一番嬉しいかも。まだ競争は終わってないから」
俺が発した言葉に照秋さんは泣きそうな、嬉しいような顔立ちで、考えておくねと言われ、俺は元の場所へと戻る。ちゃんと話せたかとセブラに言われ、もちろんとカステクラインとデステクライン、両方持つことになった。
「よし、じゃあ玖朗たちも集まってくれたらしいから、作戦会議するかと前に、会わせたい子がいる」
誰だろうと部屋を出るとそこには美命がいて、想ちゃーんと俺に飛びつく美命。
「聞かされた時、どうなるかと思ったけど、大丈夫そうだね」
「当たり前だろ。それより体、大丈夫か?」
「平気。みよりさんがいてくれたから、回復してピンピンしてるよ。今頃、鹿崎さん、偽物の私を捕まえたことに喜んでるころじゃないかな」
そんなこともできるんだなと思いながら、美命の手を握り、セブラと一緒にみんなが待っている場所へ向かうことになった。
◆
ロゼ姫をシロノ国へお連れし終え、あとは時間の問題だなと軽くストレッチをしていたら、冰春が戻って来た。まだミズノ王国に残ると思っていたのにな。
「冰春、大丈夫か?」
「珺さん。はい、なんとか。ロゼ姫に会うことはできますか?ずっと一緒に過ごしてきた仲なので、最後に一目会っておきたくて」
「いいんじゃないか。藍雅がいるところにいるよ」
ありがとうございますと感謝されながら、歩いて行かれ、卵収穫でもしようかと思っていたところ、鹿っちの叫び声がシロノ王国に響き渡る。またこれ王様に怒られるパターンと思いながら、鶏部屋に行くと、はあと俺も大声を出してしまった。
鶏部屋に鶏がいなく、俺のペットたちどこ行ったと探しても見当たらず、まさか焼き鳥にされてないよなと、体が震えた。
そんなわけないとあちこち探していたら、一羽ようやく確保。俺の鶏は大体三百羽ぐらいいるから捜すのに一苦労しそうだなと感じる。
とにかく手当たり次第探すかと、部下たちも呼んで捜索願をしようとしたところ、環さーんと部下の一人が焦ってこっちに来た。
「どうした?」
「これっこれをみてください!」
なんだと部下が持っている紙を見たら針尾智人からで、内容は鶏をある程度いただいた。返してほしければ、あんな儀式中断させろ。じゃなきゃお前の大事な鶏たちは全羽全て、獄の人間に食わせるから。以上。
紙をくしゃっとして、あの野郎と壁に拳をぶつける。あの時か。絹鬼涼真がシロノ国に来た際に仕掛けやがった。てことはそれ以外の獣柱のみんなも被害が出ている。
そうは言ってもこっちは止められない儀式なんだよ。りよっしーは今、現世にいるからな。あぁもうと部下に針尾智人の居場所を探すよう命じ、まさかと冰春がいったところへ行ってみる。
「藍雅、冰春入ってる?」
うんうんと頷いていて、ノックをしても返事はなく、開けるぞと扉を開けたら、今のロゼ姫ではなく前のロゼ姫がいた。
「なんで。冰春は?」
「窓から逃げたよ。扱い雑すぎる。まあいい。言っておくけど、あたしは雫が役目を果たせるとは思えない」
「役目を終えたロゼ姫には用はない」
「ある。私はこの時をずっと待ってた。普通に生活を送っていたとしても、舞いの練習をして、やっとこの日が来たって。だから雫にはあることをやってもらうために、冰春と一緒に逃げた。お願い、環。あたしを利用して。あの悔しさをまた味わいたくない」
前のロゼ姫に言われるだなんて俺はなんて言い返せばいいと思っていると、来ると俺は跪いた。そこに入ってくるのは、紛れもなく、龍宮でただ一人過ごしているお方。龍ノ王。
「騒がしいと思えば、昔のロゼ。あなたはもう用済みと言ったはず。なぜここにいる?」
「雫は未熟。今、やっても同じことを繰り返すぐらいなら、あたしを利用してください。あたしのほうが覚悟できてます!」
龍ノ王はロゼ姫の覚悟を見たとしても、昔のロゼを使うわけがないのは、俺たちでわかってる。なぜならその力が今雫と名乗っているロゼ姫なのだから。
「お前はもう力を失っている以上、何もできまい。鶏柱、今すぐ今のロゼ姫を連れ戻せ。先ほど龍桜家から連絡が入った。儀式の準備が整った。あとは姫を差し出すだけだと。よいな?」
はっと答え、龍ノ王は帰っていかれ、待ってくださいとロゼ姫が追うも、龍ノ王は龍宮へと帰られた。
「ロゼ姫、今は違うか。夏海、とにかく帰って自分がやれることを成し遂げろ。それしか言えないが、雫はやってくれると信じてる」
「嘘ばっか!あんな孤独な龍宮にいても、辛くなるだけだよ!だから汀春たちはあんなこと起こしたんじゃないの?孤独を知ってるから!」
夏海はこう見えて冰春と同様に、ずっとここにいるから、最初は雫の代わりに体を乗っ取ってやろうとした。ただそれはいけないことだと知っているから、こうしてここにいる。
おそらく夏海の心を開いたのは凪嬉自身であり、その本人は姿を膨らませ、どこにいるのかわからない。だから俺が言えるとしたらこうだ。
「夏海の帰りを待っている団がいるんだろ?だったら戻ってあげたらどうなんだ?みんな、待ってると思う。大丈夫。あんな悲劇なことが起きないように、俺たちが選ばれたんだから。必ず雫も、現世にいる芽森ちゃんも救うから。ほら、泣かない」
夏海には帰る場所がある。もう夏海は一人じゃないんだよと、頭を撫でていると、トントンとノックが聞こえ、招集がかかったようでいかなければならない。
部下に夏海のことを頼み、俺は残っているメンバーを連れて現世へ行くことに。




