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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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97話 結論からの決別①

 セブラから汀春さんに何があったのか、アンジがなぜ今もこの世界にいるのか理解し、俺と雫は心の整理ができてなかった。だとしたら俺がデステクライン使いになっちまったら、確実に邪神が現れてもおかしくはないってことだよな。

 アンジはそれを恐れているから、ずっと俺のそばにいてくれた。


「あの後は俺も正直わからない部分があってな。汀春が封印された直後、冰春は確かに玖朗を止めた。もちろんロゼが異変を察知したのか、すぐ起きて行った。詳細はロゼに聞くのが一番いいだろう」

「えっ?私、完全に体を奪われそうになったんだよ。直接会うのはちょっと抵抗がある」

「確かにロゼちゃんは、獣柱と繋がってるのは確かだよん。ただね、ねるが思うに、ロゼちゃんは終止符を打ちたいんじゃないかな。平和にできたと思っていた自分が、あんなことが起きたんだもん。悔しいと思わない?」


 出雲さんが言っている意味はなんとなくわかる気がする。元ロゼは舞をして、役目を果たせたと思ったが、邪神は結局消えることはなかった。

 雫はまだ悩んでいる様子であって、思穏も照秋さんのことを知って、思穏もそれをやるんじゃないかと感じてしまう。あれ、ちょっと待ったとセブラに聞いた。


「あのさ、汀春さんはなんで英雄の存在になったんだよ。あんなことがあったのに、英雄になるような場面はなかった」

「あぁそれは俺たちのでっちあげた情報だよ。このことに関しては俺とねる、それから玖朗とリディーしか知らないからな。そうじゃないと、想心がここに来た時、荒れていたと思ってるから」


 なるほどなと納得はしたいのだが、俺がデステクライン使いになった時、どうなるのか想像ができない。そうだとしても俺はもうグレーゾーンから出てしまったから、時間の問題だ。

 とにかく維持できるようにしとかなくちゃならないってことか。そうなればアンジの元に帰る必要がある。


「俺は一度、アンジの元へ戻るよ。またアンジがあんな状況で来ちゃったら、邪神が現れそうな気もするし」

「じゃあ私も」

「雫はセブラと思穏のところにいろ。俺たちが帰れば必ず獣柱が現れて、雫はシロノ国へと連れていかれそうだから」


 伝えると雫は俺と一緒に帰りたそうにしていたが、わかったよと納得してもらうことに。気をつけろよとセブラに忠告をもらいながら、車だというのに、セブラたちは消え、俺は出雲さんにドクノ王国へ連れてってもらうことにした。


「ねるは城までは入ることができないけど、大丈夫そん?」

「平気です。本当にありがとうございました。出雲さんがいなかったら、今頃俺たちは言いなりになってたと思うので」

「まあ、ねるは初期のシロノ団でもあったから、情報を渡してるだけだよん。初期のシロノ団はもうねるしかいないから」

「初期の人たちは邪神にやられちゃったんですよね」


 そうだよんと悲しそうな声をしていても、出雲さんがずっとここにいる理由はただ一つ。邪神が完全に消えるまでい続けるんだろうなと感じた。


◆


 僕たちは雫ちゃんを連れて獄の世界へと戻り、美命ちゃんを寝室に寝かせておいた。まだ鹿柱の鹿崎さんにやられてしまった影響なのか、まだ目を覚さない。覚醒した雫ちゃんがいるにしても、いつ襲撃が起きるか不明だ。それに気がかりなのが芽森ちゃん。 

 リヴィソウルは天の世界にあるミズノ国ではないと購入ができないからどうしたものかと自室に戻る前。


「るるの王子様ー!おかえりなさーい!」


 そう言って僕に抱きつくルルラちゃんの頭を撫で、団長と正気を取り戻した百合男さんが深々と頭を下げた。


「百合男さん、もう体は大丈夫なのですか?」

「私は現世にいた頃から邪人によって支配されていたようで、あんな酷い言葉をるこに発してしまったようだ。本当に感謝してる」

「いえ。あの優くんのことなんですが」

「あしゃが話した。テンファも受け入れてはいるようだけど、千年前に起きたことと全く同じにならないように、テンファも準備をするらしい。あしゃたちはこのままライトノ団としてやっていくわ」

 

 僕はおそらく紅葉川家として、セブラや闇落ちしてしまう想心を支える側として動くだろうから、団にはいれないような気がする。


「僕とセブラが抜けちゃっても大丈夫ですか?」

「えぇ。その代わり、セブラを支えてあげてほしいの。こう見えてあんな振る舞いかたをしてるけど、心の奥では怒り、憎しみを抱えてると思う。それを鎮めさせられるのは、思穏。あなただけ」

「はい。照秋さんがして来たように、僕もセブラや想心を支えようと思います」


 するとリラ団長が僕を包み、無事を祈ってると言われ、リラ団長と百合男さん。そしてルルラちゃんはライトノ団として行ってしまった。


「あれ?リラ来てたのか。俺にも挨拶しておけよ」

「用があったんじゃないよ。リラ団長たちはこのままライトノ団としてやっていくみたい。だからセブラ、セブラがやりたいことをしてほしいってリラ団長からの伝言だよ」

「今さら言われても、好き勝手やらせてくれたのにな。まあルルのことも考えて、そう言ったんだろう。それじゃあ、思穏。紅葉川家が代々受け継がれていた目の力の取得について、これを預かってた。デステクライン!取り出し、照秋からのプレゼント!」


 僕の目の前に木箱が出現し、それを受け取って中身をみた。ガラスの小瓶に液体が入っていて、そこにメモも入っている。それを取り出し読んでみることに。


 初めまして、僕の後継者となる君へ


 これは代々紅葉川家が受け継がれているものであり、十五歳の歳にそれを飲むことになっている。ただ僕の後継者は年上だろうが年下だろうが関係のないこと。

 今の時代は何歳から成人としてなのか、全くわからないけれど、僕の千年前は十五歳が成人という意味だったからだと思うんだよね。

 さてこれを飲んでも変わらないとかは、ないよ。飲んだ瞬間、千里眼の力を得るから心の準備はしといたほうがいい。見たくもないものまで見えちゃうからね。

 ちなみにこの液体は紅葉の葉と川の水を融合させたものだから、害はないということだけ伝えとくね。 

 

 これが千里眼の力とつい瓶を眺めてしまう。これを飲めば照秋さんのように力は得られる。この先も考え、決意し、瓶の蓋をとって、飲み干した。


 飲み干してすぐ効果が現れるのかなと思った瞬間に、違和感を感じてしゃがみ込む。なにこれといろいろと景色がみえ、慣れていないことで吐いてしまう。

 大丈夫かと僕の隣に来てしゃがみ込み、背中を摩ってくれた。


「照秋も最初は吐いてたから仕方ない。すぐ慣れるよ」

「うん。ただセブラが話してくれたように、気をつけなくちゃならないよね。照秋さんのお父さんが目をやられたって」

「ちょうどいいか。会わせておきたい人がいるから、大丈夫そうなら行こうか」


 会わせたい人って誰だろうと思いながらも、掃除魔法で吐いてしまった部分を綺麗にし、セブラと一緒に会いに行った。


◆


 まだ心の整理はついてないけど、アンジが汀春さんとやってみたいことをしてあげたいと思ってしまう自分がいる。

 まあ大喧嘩をする気はないけど、そこでアンジの本音が聞けたら一番かもなとドクノ城の付近に車を止めてもらい、出雲さんが用意してくれたガスマスクを装着した。

 気をつけてねんと言われながら車から降り、出雲さんは車を走らせてどこかへといかれる。


 こっからみるとすごいタワーだなと思いながら、正面の自動ドアの前にいくも、入ることができない。そうか、毒が入るから封鎖しているなら、どうやって入るんだっけと考えていたら、卯京さんがこっちだと案内してくれる。


「逃がしてくれたのに、すみません」

「いや、いい。それに今アンジはここにいないからな」

「えっ?そうなんですか?てっきりドクノ王国にいるのかと思ってたんですけど」

「ベビー王様と話し合って、一度アンジはシロノ国へと行ったよ。つまり、もう時期あの儀式が行われようとしているってことだ」


 まさかのすれ違いが起きてしまい、アンジと連絡をとるにしても忙しそうだから、きっと出てはくれないような気もした。そうと決まれば、一度ワープの力を使って、ミズノ王国に帰還するべきか。

 悩んでいるとハイハイしながら歩いているベビー王様であり、思わず笑いを必死に堪えてしまった。笑ってはいけない場面なんだろうけど、その場にいた人たちは笑っていたり、微笑んでいたりしている。

 俺たちの前に到着したベビー王様は、俺に抱っこ要望がきて、抱っこしながら歩く。


「こんな早く戻ってくるとはな。アンジは今、ここにはいない」

「先ほど、卯京さんにお聞きしました」

「そうか。まだ二段魔導士の試験を受けていないだろう」

「はい。いつもはアンジが試験官となって、見てくれてたので」


 ベビー王様は少し考え、提案をしてくれる。


「待っている間、二段魔導士の試験を受けといたほうが身のためだ。僕ちんが試験官として見てやりたいのだが、先ほど水の王より、帰還命令が出された。試験はミズノ国でやるといい」

「わかりました。雫はしばらく」

「承知している。元はと言えば、ロゼは天の世界ではなく獄の人間だからな」

「あのベビー王様、俺はグレーゾーンから外れた者。いずれデステクライン使いになるのは目に見えています。なった時、邪神が現れるのは確実…ですよね?」


 おそらくなと言われていて、やはり俺の中に邪神が存在しているのだと知った。


 荷造りをして、もっと卯京さんと話したかったけれど、俺はすぐさまミズノ王国に帰還することに。家ではリディーたちにおかえりと言われ、ただいまと告げる。


「アンジと雫はどうした?てっきり三人で帰ってくるのだと思っていたぞ」

「リディー、二人で話したいことがある。ちょっといいか」


 構わないがと少し疑問に思っている様子で、空いている部屋で話をした。


「セブラから全て聞いた。リディーはなんで生き残れたのか、ずっと不識だった。あの場ではシロノ団員たちは出雲さんしか生き残れていなかったって。だとしたら汀春さんがいた紺瑠璃の団員たちは」


 それを告げたらリディーは、ははっと勢いのない笑いかたで、真実を知ることになる。


◆


 あれを思い出すのはいつぶりだろうか……。


 先生は氷の女王と呼ばれるような酷い有様で、全員を凍りつけてしまうほどの威力を持ち、先生と組んでくれる人はいなかった。ただ唯一、私を救ってくれたのが汀春と蓮。


「噂で聞いて来てみたけど、すごい威力を出すんだね。凍りついてしまった人たちはどうするの?」

「お湯で溶かしてはみたが、駄目だった…」

「へえ。でも凄いよ。きっとみんなは君の才能に憧れて凍りついたんだよ」

「えっ!?僕は違うと思う。怖くて凍りついちゃったんじゃないの?」


 蓮の言葉にむかついて危うく氷漬けにしてしまいそうなところ、汀春が笑ったその笑顔に惹かれた。楽しそうに笑うその笑顔。先生は現世にいた時も、人が近づかないことが多く、いつも不思議だった。

 なぜなのだろうと時に、雪女というあだ名もついた頃もあったな。それでも汀春のように、私を受け入れてくれた人がいた。


「何をみている?」

「いや、ごめんなさい。瞳が綺麗すぎて思わず見惚れてしまいました」


 その男は照れ笑いをし、先生も照れてしまって、冷たい態度をとるも、その男は常に寄り添ってくれた。次第に先生はその男に恋をしていて、良い縁が先生に来たのだと感じる。

 しかしその男には、婚約者がいて、失恋確定だと思っていたが、その男は先生を選び、いわば駆け落ちのようなものだ。山奥に小さな家を建て、そこで二人で過ごしていたある日、夫の元婚約者が現れ、そして先生たちは死した。


 それを思い出し、夫の顔が浮かぶも、夫は先生の暴走によって氷の結晶で眠っている。思い出したくないことを思い出し、忍び泣いていると、笑っていた汀春が先生を心配してくれて、どうしたと言われる。

 汀春と蓮に全て打ち明け、そこへ連れてってほしいと言われた。夫が眠っているところへ連れて行き、汀春は観察をし始めた。


 どうせ夫を救うことはできまいと待っていたら、いとも簡単に解除ができ氷から夫が落ちるところ、汀春が支える。


「どうやって解除ができた?」

「いや、全く。触れたら勝手に解除できたよ。あれかな、僕は両方の力を得てるから、解除ができたのかも」


 そこで汀春が何者なのかを知り、思わず頭を下げようとしたら、堅苦しいことはしないでと言われ、そこからは汀春と蓮と、一緒に行動することに。

 夫は最初のほうだけ住んでいたが、やり残したことがないと言われたため、一足先に現世切符で新しい命としてやっていた。リヴィソウルで、元気かどうかみながら生活していくうちに、団員にいじられながらも、紺瑠璃の団は楽しかった。


 それなのに先生は、暴走した先生を止めるためにみんなが氷漬けとなってしまう。それは汀春の兄である玖朗から、汀春が封印されたと。

 愛しい汀春が封印されただなんて信じられなく、何度も玖朗に聞いて、汀春に邪神が入ってしまったからだと、聞かされた。それを知り先生は暴走をしてしまった。気がつけばみんなは氷の結晶の中にいて、助けられる方法はただ一つ、汀春のみ。しかし汀春の魂は何者かによって奪われ、待っていた結果、想心がやって来てくれた。


◆


「セブラから話を全て聞いた時に、打ち明けようと決めていた。頼む、想心。紺瑠璃のみんなを解放してやってほしい。もうっ千年も眠った状態だから、目を覚ますかどうかもっ」


 リディーは常に冷たい態度をとるのは、もう二度と繰り返さないために、おそらく人をよりつけさせていなかった。ただ俺は汀春さんの生まれ変わりだったとしても、解除できるかもわからない。一度行ってみるかと顔をあげてくれと頼んだ。


「わかったから、どこに保管をしているんだ?」


 リディーはそれはだなと言いながら、魔法を唱えた。


「カステクライン!取り出し、紺瑠璃の団員たち!」


 ボンボンと次から次へと出てきて、少々驚くもリディーの想いをイメージしながら、氷に触れてみる。ただ触れたとしても反応はなく、違う人に触れても効果はなかった。


「あのさ、汀春さんってやっぱり一段魔導士だったとか?」

「先生と会った時は、二段魔導士と言っていたな」

「俺が多分、今が三段魔導士だから次の試験で二段魔導士になれば、できると思う」

「なら」


 そのままにしといてと伝え、ひとまず校長の元へ行くことにする。呼び出しをもらったのに、すぐ行かなかったから、何か言われそうだなと思いながら、ミズノ城へと入り、どこにいるんだろうかと探し回っていると、見つけた。


「校長、すみません」

「呼び出してすまないね。これを渡すよう言われていて」


 誰からですかと思いながらも校長が差し出す手紙を受け取り、裏を見るとそこには凪嬉兄からの手紙だ。手紙を取り出し読んでみると、こう記されている。


想心へ

想心がミズノ王国に戻ってくる時は、おそらく僕はいない。シロノ団に入るよう命じられて、本当は想心のそばにいたかった。

だけどシロノ団から芽森がどうなってもいいのかと言われ、腹が立ってシロノ団に入ることになっちゃった。

それに運命は変えられないと思ってる。僕は葉桜家の人間として役目を果たさなければならないと思うから、想心。

想心は自分が思った道を進んでってほしい。

実はさ、想心が羨ましかった。

寅萩家は僕たちにとって、敵だとしても、僕にとっては救いだったんだよ。

叔父さんも分かり合えたら、寅萩家と仲良くできていたのかなって、呟いてた時もあったからね。

もし不安になったとしても、想心には心強い人たちがそばにいるってわかったから。

アンジくんのことは、僕に任せてほしい。それだけ伝えておきます。 凪嬉より


凪嬉兄がまさか脅されてシロノ団員になるだなんて想像がつかなかったが、美命の件もあったからだと感じた。


「校長、早めに二段魔導士になる試験を受けさせていただけませんか?ベビー王にそう言われたので」

「話は聞いてるよ。想心くんが準備できた時に声をかけてくれれば」

「今からでもよろしいでしょうか?」


 聞いてみると、校長は少々驚いてはいたけれど、準備をしてくれるようで、俺は待つことにする。魔法はほぼ覚えてきたし、残るは三つの魔法だ。剣太が使用している錬魔法と心魔法、それからとるのが難しいとされている植物魔法。

 どれを選ぶとしてもすでに俺は申請していたから、あとは実際にできるかどうかだ。緊張があるけれど、アンジがいなくてもできると待つこと数時間後、試験官は校長とライゼ先生であり、試験をやることに。

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