92話 秋に照らせ、春は汀③
なにが起きたのかさっぱりわからず、僕は確かののちゃんに様子を見に行っている間、照秋と話してそこから全く覚えてはいなかった。隣には艿花ちゃんと寝言を言っている照秋であって、起こしてみる。なかなか起きなくて、周りにはなにもない。
どうするべきかと起き上がって踏み出した時、景色ががらんと変わり、紅葉の木が多くあり、綺麗な川が流れていた。もしかして紅葉川と見ていると、そこには水龍と虎神が現れる。
「水龍様、虎神様。ここは?」
「黄泉の国の境だ。やはりお前たちを消そうと企んだ者がいたようだ。しかし加護を与えていたのに、助けられずすまない」
「いえ。ののちゃんたちが心配です。状況教えていただくことは」
「汀春の妻は、第一発見者だった。二人の死を見て泣いていた。もっと早く気づけばよかったと。汀春の父、春のように妙な転落死だ。ただ今回ばかり、牙の痕跡がない」
「玖朗は相変わらず、怒りと憎しみが増え、艿花は悲しみを抱いているようだ」
父さんの死亡はなんらかによる牙の跡があった。今回僕たちは動物に何かをされたわけではなく、転落しただけ。まだ謎が多いけれど、何かが見えてくるかもしれない。
「ののちゃんたちが無事ならいい。それでここにいる理由は?」
「おそらくだが、汀春と照秋が黄泉の国に入れば、二つの世界へと変わり、別々の世界に二人は入ることになるかもしれん」
「つまり天の世界と、地の世界。僕は二つの力を得ているから、天の世界へと招かれ、照秋は寅萩家に仕えていた者として、地の世界へと招かれる」
「さよう。おそらくお前の父と会えるのは一瞬だ。話したいことは話しておけ。それとお前の母君は天の世界に入るにしても、嫌な予感がする」
母さんは僕たちを産んだことで大きな罪というべきか。何かをさせられるかもしれないし、冰春と会えるのかも不思議だ。
「ちなみに冰春と会えますか?」
「…残念ながら冰春は、獣柱の犬となっている以上、会うことはできないだろう」
獣柱か…。冬人兄さんが教えてくれた十一種の動物たちは神の使いとして獣柱と呼ばれている。やっぱり僕たちは会えない存在なのかな。いや、なにがなんでも、冰春、今度こそ会いに行くから待っててほしい。
「教えてくださり、ありがとうございます。覚悟はできてますが、まだ照秋が起きようとしないので」
「構わん。今は我々がお前たちの魂を守っている。これから起きうることも力をかそう」
再び感謝を述べていると、艿花ちゃんとガバッと起きる照秋で、水龍と虎神がいることで拝んでいた。かなりツボると笑っていたら、なに笑ってるんだよと拗ねている照秋だった。
気をつけた前と言われながら景色がまた変わり、そこには大きく黄泉の国へようこそとあって、それを見ていたら汀春と声がかかる。
「あっ春様だ!春様ー!」
照秋が大きく手を振っていて、あれが僕の父さんと一歩、そして一歩と歩き次第には走って、父さんにしがみついた。会いたかった想いが強くて、何度も父さんと言ってたら、優しく抱きしめてくれて、まず最初の言葉がこうだった。
「生まれてきてくれて、ありがとう。そばにいられなくて、寂しい思いさせて、本当に悪かった」
「僕は大丈夫だったよ。くーたんもいて、照秋と会えたから、乗り越えることができた。父さんと母さんの子に生まれて、よかったって思ってる。それとね、父さん」
話そうとしたら地震のように揺れ始めて行き、始まるんだと父さんに想いを伝える。
「父さんとこうして会えて、僕は幸せだよ。ありがとう」
「俺もだよ。それにしてもこの揺れは一体」
「汀春、春様。嫌な予感がする!」
照秋が言った瞬間に、地割れがして父さんと引き離されてしまった。まだもっと話したいことがあるのにと、父さんも手を出して、僕も父さんの手を掴もうともどんどん地割れが発生して、落下していく。
「父さん!照秋!」
「汀春!よくわからないが、絶対に会いに行く!」
「僕も絶対に会いに行くから!」
照秋は父さんと一緒に行くことになっているから、少しは安心できた。本当はさっきのこと告げたかった。ただまたどこかで会えるとわかってるから、今は変わり果てる世界になるまで目を閉じておこう。
目を開けると自然な場所に僕は寝ていたようだった。ここはどこだろうかと思い、立ち上がって歩いているとそこには水の都というべきかな。
それに美しい海も見え、一度城へ行ってみたほうがいいかもしれない。そう思って歩いていると、きゅーと鳴く生き物が僕をみていた。可愛らしいと触れた瞬間、噛みついてきていたたたたと振り払おうとするも、なかなか離れようとはしない。
仕方ない、このまま行こうと城下町へと入り、みんな、ここがどこなのかもわからないでいるようだ。無理もない。世界が変わったのは、僕だけが知っていることだから。
城内に入ることが許され、すごい人の数だなと大広場に誘導された僕らは、きっとこの国の王様によって過ごすのだろうと感じた。
少ししたら、王がお見えですと言われ上を向くと、王様と王妃様がいらっしゃる。
「皆、驚いたと思うがここにいる者たちは、理由があって魂がこちらに来た人たち。そしてもう一つの世界は殺人者や自ら自害した者たちが集まる世界へと分裂させられた。本来ならば家族と過ごしていたかっただろうが、申し訳ないと思っている」
深々と頭を下げ謝罪する王様であり、それでも皆は王様を悪く思う人は誰もいなかった。家族と再会できた喜び、もう二度と会えなかったと思っていたけれど、ちゃんと向き合えたから大丈夫。
いろいろ想いを王様に告げ、王様は涙を堪えているような様子だった。僕が来たことで世界は分裂されてしまったようなもの。これから起きうることをなんとしてでも止めなくてはならない。みんなの声を聞き終え静まり返ったことで、王様があることを言い出す。
「少しでも皆の役に立てるように、君たちに魔法を使えるようにしよう。それで獄の世界に行ってしまった人たちとも連絡が取れる」
するとどっからか来たのか空にはいろんな大きさがある正方形が散らばっており、光ってそれぞれの主人のもとへと行く。そして僕の目の前に来たのは青藍の色を持ち、葉桜模様だった。僕は寅萩家なのになんで葉桜なんだろうか。
「行き渡ったかな?その正方形はカステクラインと言って、君たちの魂が入っている。魂が強ければ強いほど魔力が増し、魂が弱まると魔力が弱まる」
魔力ってなにとみんなは言い出して、僕も初めて聞く名だった。しかもかすてくらいんというのは、平仮名ではないらしく、僕たちは今までひらがなや古代文字を使用していたから意味がわからなかった。
王様は無理もないと言っていて、実際に見せてもらうと僕の目には美しく思えた。これが魔法というもので、実際に自分ができたら楽しそう。そう思えるようになった。
「見せた通り、これは魔法と言ってこの国では水魔導士として動いてもらう。まずは水魔導士に向いているか試させてもらおうか。皆は個性がそれぞれ違うだろうから、水じゃなくて他のが向いているかもしれないと思ったら、近くにいる兵に頼べば大丈夫だからね。それじゃあ適性審査開始」
王様が出す魔物に対して、それぞれ魔法を出していき、僕も試しにやってみる。しかし僕がやってみたら水が暴走してしまって、他の人たちに迷惑をかけてしまった。
すみませんと謝罪しながら、どうしたものかと考える暇ももなく魔物が襲いかかってくる。本当は白虎を出したいけれど、ここで出すのはやめておこう。だとしたら龍の力と、深呼吸をしてイメージするように僕は唱えた。
「カステクライン!水、水龍の天泣!」
イメージ通り水龍が現れ、柔らかい雨が降り注ぐ。そして水龍が涙を流した瞬間、降っていた雨が光り出し、全ての魔物を倒してしまった。
あっやっちゃったと思っていると歓声を浴び、大きな拍手をもらうことになる。そしたら王様がお見事と言いながら、みんなに説明をした。
「カステクラインの使い方は、自分の魂を呼び、どの属性を使用するのか、そしてどんな想いで魔力を秘めるかを出すことによって力が発揮するようになる。もう一度出してみるからやってみようか」
再び魔物が現れてそう言えばとまだ僕の手を噛んでいる小動物をみた。小動物の名前はわからないけれど、やってみる価値はありそうかもしれない。
「カステクライン!水、カワウソの牙!」
すると噛んでいたカワウソが離れ、僕の言葉で動き出し、魔物に食いついた。そういうことか。これなら使いやすいかもしれないと、何度もその魔法を唱えることにした。
ヘロヘロに戻ってくるカワウソは僕の足元に来て、よく頑張ったねと抱っこしたけれど弱い噛みつきをして寝てしまう。終了と合図をもらい、後日結果が来るらしい。
同じ家がいくつもあり王様にいただいた住所へと行くも、えっと戸惑いを感じた。なぜなら立派すぎる屋敷だったから。僕だけ贅沢はさすがに無理だよと王様の元へ行こうとしたら、王様と王妃様がいらっしゃった。
「やぁ、龍桜汀春くん」
「僕は」
言おうとしたら王様が僕の口を塞ぎ、魔法を唱え何かを唱えた。唱え終えると王様は手を離し、事実を知ることになる。
「君の本名は知ってる。ただしここでは龍桜家、あるいは葉桜家と名乗ってほしい。意味はわかっているね?」
「…はい。本来ならば僕は父さんや照秋と一緒にあっちに行く側だった。そうさせなかったのは、龍桜家がそうしろと言ったんですよね?」
「察しがいいね。そう。ここは常に龍桜家が見ている。そして君を監視するために、いさせていると認識していればいいよ」
死んでも龍桜家と関わらなくちゃならないだなんて最悪すぎる。ただ覚悟はしていたから仕方がない。なら僕はこう名乗る。
「妻の旧姓である葉桜にします。ここでまで龍桜家と名乗りたくはないので」
「構わないよ。龍桜家も承知しているからね。それで汀春の住所は、今まで苦しませた分の償いとしてなんだと思う」
断じて龍桜家が僕に償う気はないと思いますと顔に出てたと思う。王様は苦笑いしながら、入ろうかと言われた。なんか納得いかないと思いながらも、使用人たちも多くいてお帰りなさいませと言われる。
ぶっきらぼうにただいまと伝えて、どこになにがあるのか把握した。
「それじゃあ私たちはこれで失礼するよ。結果が出るまで自由に観光するといい」
王様は逃げるかのように行ってしまわれ、不満だらけなんですけどと言いそうになった。明日から他のみんなになんて言われるんだろうとご飯を食べ、温泉に入り、就寝することに。
翌日……
こんなにぐっすり寝れたのは初めてかもしれないと起き上がり、今までは朝からずっと働いていたからなんかなと窓を見ていたら、おはようございますと使用人が現れ、今日の着物を用意してくれた。
それに着替え朝食を食べた後、暇だから散歩してみることにする。誰か知ってる人がいればなと思っていても、僕の知り合いはいなさそうだった。
どうしたものかと考えているうちに、そう言えばとカステクラインをみる。連絡できるって言ってたけど、どうやって連絡するんだろう。浜辺に座ってカステクラインを摘み考えていたら、あのと声がかかった。
振り返ると蓮の着物を着た僕より下の子らしい子が立っている。知り合いではなさそうだなと思っていると、その子は僕に何かを言いたそうにしていた。
「どうかしたの?あっそうだ君、この使い方わかる?連絡とりたい人がいるんだけど、やり方がわからなくて」
告げてみるとその子は頬を赤くしながら僕の隣に座って、教えてもらう。
「カステクラインって呼んだら、連絡って言って、自分が想像した動物を言えばいいんです」
「なるほどね。ありがとう。やってみる。カステクライン!連絡、水の小鳥!」
するとカステクラインがくるくる周り始めて、照秋に繋がるかなって思ったけれど、繋がらなかった。もう一回とやってみるも応答はしてくれない。
まだ慣れないから連絡できないのかなと、少し落ち込んでいたら、今度は僕のカステクラインが勝手にくるくる回る。慌てながらも唱えた。
「カステクライン!連絡、水の小鳥!」
『やっと繋がった。さっきはごめん。やり方がわからなくて、応答できなかった。そっちはどう?』
「なんとか平気。ちょっと心細い部分はあるけど、なんとかやっていけそうだよ。父さんは一緒じゃない?」
『一緒なんだけど、春様が凄すぎてびっくりした。それに寅萩家って名乗っただけで、春様を拝む人が多いよ。それに下町に住んでいた人たちがほぼほぼこっちに来てるから楽しいよ』
なるほど。だから知り合いを見かけることはなかったんだ。できればそっちに行きたい気持ちが強いが、いずれ会えることを願うしかない。
「僕はなんとかやっていくから、父さんのこと頼むね。それから秋彦さんもそっちに?」
『いや、こっちに来てないから、後でどこにいるか聞いてみるよ。それから冬人様も見当たらないから、冬人様は汀春頼んでもいい?』
「もちろん。なにかあったら、連絡する」
それを伝え、冬人兄さんにかけてみるも、反応がない。どこかにいるのは確かなんだけどなと諦めて、隣にいる子に聞いてみる。
「名前は?」
「えっと花畑蓮。昨日の見て話してみたいなって思ってて」
「そうだったんだね。僕の知り合いはほぼほぼ、獄の世界にいるらしいから、寂しいけど仕方ない。僕は葉桜汀春。よろしくね」
はいと微笑む蓮で蓮はどうしてここにいるのかを教えてもらう。
「蓮はどうしてここに?」
「病死でここに辿り着いたんです。世界が変わった時はびっくりしたんですけどね」
それは僕が来たからですとは言えず、びっくりしたよねと相槌を打ってしまった。僕もここが初めてな場所だから覚えるのに苦労しそうだな。苦労…玖朗…くーたんを止めるために準備してたのに、こっちに来てしまったと、どんよりしていると、大丈夫ですかと蓮が心配をしてくれる。
「恥ずかしいことなんだけど、僕の義理の兄が暴走しそうで、止める前に僕はここに来ちゃったから、あっちで何かが起きてるんだろうなって気がして」
「そうなんですね。あっ!ちょっと待っててください」
そう言った蓮は駆け足でどこかへと行き、どうしたんだろうかと海の景色をみた。龍桜家がまだ僕を縛るというならば、僕は反乱を起こす。そのためには信頼できる人たちをかき集め、父さんたちがいる世界へと行こう。
そうとなればと背伸びをしていたら、お待たせしましたと蓮が戻ってくる。
「どうぞ」
「貝殻?」
「リヴィソウルと言うらしくて、現世にいる人の魂が見れるらしいんです」
なるほどねと早速、くーたんの様子を見ようとくーたんのイメージをしたら浮き上がった。くーたんは僕が使用していた小屋にいることがわかって、やっぱり心がまだ痛んでいるような感じだ。
するとそこに義父さんの顔がみえ、義父さんが怒っている。しばらくしてくーたんは小屋から離れ、自室に戻るようだった。
ここまでしか見れなかったけど、あのままの状態だと、くーたんはいずれと思ってしまう。頼むからくーたん、過ちはやめてほしいとその貝殻を両手で握ることしかできなかった。
それから数ヶ月後、僕は水魔導士となり、生活をしていた時のことだ。最近、妙な魔物が出現しているらしい。一度も会ったことがないからどんな魔物なのか少し興味が湧いた。
「妙な魔物ってどんな感じなんでしょうか」
「んーこの世界が分裂したから、なにかしら変わるのは確かなことなんだけどね」
あれから蓮と行動することが増えるようになり、一緒に魔物退治をすることが増えた。冬人兄さんは父さんと合流できたらしく、秋彦さんも照秋と一緒にいる。みんなに会いたいよと思いながら、魔物退治へと向かっていたら、早速魔物を発見した。
蓮と連携をとりながら、魔物を退治して、一件落着かなと思った。しかしそこで妙な魔物と遭遇することになる。
今までに見たことがない魔物で、噂の魔物だとすぐに理解した。僕たちを襲いかかってくる魔物はどういうタイプなのか見極めようとした時。
〝ニクイ〟
魔物の感情が伝わり、僕はふと手を止めてしまう。蓮に注意されながらも、その魔物の感情を理解したいと思えた。なぜそんなに憎いと触れようとしたら、駄目だよとと蓮の手が乗る。
その手がとても震えきっている。まるでそっちに行かないでと主張しているかのように。冰春がいるような感覚がありながら、その魔物を倒した。
「さっきは…ごめんなさい」
「いいんだよ。それに蓮が正しいと思うからこれでよかったんだ」
実際は知りたかった。なぜあの魔物はそういう感情を持っているのか。またどこかで似たような魔物に会えるだろう。そう思って、国へ帰ることにした。
疲れてはいないけれど、蓮大丈夫だったかな。そうだ、いいこと考えたと真っ先に城へと向かう。夕飯時にお邪魔するのもどうかと思うけど、話してみる価値はありそうだ。
「王様!」
「汀春、どうかしたのかい?」
「ちょっとご相談がありまして。急いでるわけじゃないんですけど、今聞いてほしくて」
「そうか。そう言うなら夕飯食べながら聞こうか」
いいんですかと思っていても、王様は大歓迎らしく、夕飯をご一緒することになる。少し緊張感はありながらも、見様見真似で食べながら話した。
「今は普通に魔物退治をして王様からお金をいただいていると思うのですが、いくつかの団を作り、それぞれの団で王様の依頼や国民の依頼を引き受ける形はどうでしょうか?もちろん金額は依頼者が出す金額として。それに魔法をあまり使えずにいる人たちも多くいると思うので」
「確かにそうかもしれない。魔法が使えるから魔物退治ではないからね。人それぞれの個性があり、魔力量の差も存在する。それじゃあそれで少しやってみようか。うまくいけば他国にも知らせておかなくちゃね」
「ありがとうございます。それでなのですが、僕の家が広すぎてちょっと寂しい気持ちもあるので、僕の家を寮として住まわせたい人がいるんです」
「いいじゃない。仲間同士で話したい時にすぐ話せる場も必要だと思うわ」
王妃様がそう言ってくださって、いいよと言ってくれたから、夕飯をご馳走になった後、すぐ蓮が住んでいる家へと急いだ。冰春じゃないけど、僕は蓮のこと弟のように見てるから、あっちでやれなかったことをやってみたい。
蓮の家へと到着してベルを鳴らす。蝋燭がついているからいるよねと待つこと数秒後。割烹着を着た蓮が出てきた。飲み物入れていたら絶対に吹き出してた感じがある。
「急に笑い出してどうしたの?」
「蓮が割烹着着てるから、つい。なんで割烹着着てるの?」
「あっいま夕飯作ってた。それにあっちにいた頃、兄様が着てたから着てみたいなって思って」
嬉しそうに話す蓮が一瞬だけ、冰春と重ねてしまった。なにもなければ冰春はこうやって笑って生活をしていたのかな。
「汀春さん、どうかしましたか?」
そんなわけないよねとさっき許可をもらったことを話す。そしたら案の定、目を輝かせていいんですかという目をした。
「もちろん。蓮がよければ」
「ぜひ!嬉しいな」
「それから前から思ってたんだけど、敬語は使わなくていいよ。普通に話して」
「うん。つい癖で敬語になっちゃって。それじゃあ夕飯食べ終えてからでも大丈夫?」
全然平気だよと伝え、蓮を待つことにした。
◆
あれから数ヶ月が経ち、僕たちはなぜ汀春があっち側の世界に行ってしまったのか議論を立てていた。春様はまた龍桜家が関わってそうだなと仰っていて、父さんも同じことを言っていた。
冬人様は汀春の弟、冰春様がこっちにいないことから、冰春様が関わっているんじゃないかと考えている。確かにのの菜様が以前言っていたこと。最後の言葉は汀春に会いたかった。もしそうならあっちで会ってそうなイメージがあるも、天の世界に住んでいるリストを確認するも冰春様のお名前がなかった。てっきりあると思っていたけれど、冰春様の魂はすでに旅立っている…いやそんなわけがない。絶対にどこかにいる。
「冰春がこっちにいないとなれば、やっぱり天の世界だろうな。ただ名前がないから、探すにしても探せない」
「龍桜家は絶対に二人を会わせないように、何か仕掛けているはず。それに僕たちがあっちに行ける確率は少ないと思う」
春様と冬人様が話し合っていて、父さんは自分の力で、冰春様を探しているようだ。あまりその力を使うと、結構使うから僕は緊急時の時だけに使ってる。
あの時、僕たちは確かにのの菜様を待っていた。なのに気がつけば、僕たちはここにいて、なにがどうなっていたのかも正直わからない。
艿花様は無事だろうかと窓側を向いていたら、冬人様が声をかけてくださっているのに気づかず、春様にぱこんと叩かれてしまった。
「急にどうした?」
「いえ。その…艿花様はご無事なのか、少々気になって」
「照秋の初恋の子なんだもんね」
「冬人様!恥ずかしいこと言わないでくださいよ。艿花様はきっと葉桜家の者と」
ふうんと春様はにやにやしていて、冬人様は笑っていた。余計に恥ずかしさが増してきて、どこかに隠れたい気持ちが強い。そしたら父さんが大きな声で叫び出した。
「どうした、秋彦」
春様が尋ねると父さんはまだ驚いている表情をしていて、数秒後、僕たちの方に向けてこう言った。
「奴が汀春様と仲良くしている」
その言葉で春様と冬人様の殺気が交わった空気となり、恐れていたことが本当に起きると確信してしまう。父さんが言う奴というのは虎神様と一緒に封印した邪神様だ。
その邪神様は僕や汀春がまだ生まれていない時期に、大きな災いがあり、寅萩家の地下にあった壁画にも描かれている。
汀春は龍の力と虎の力を持っているから近づいたのだろう。このままいけば汀春の魂は邪神によって消滅させられてしまう可能性があった。
「冬人、怒りがおさまらねえ」
「僕もだよ、春。とにかくあっちにいけるよう、努力するしかない」
「だな。照秋、俺と冬人はやらなくちゃならないことがある。だからこの世界を守れ」
「…父さんは?」
「春と冬人の手伝いをするに決まってる」
全部任せるのなしにしてほしいよとため息が出てしまうも、わかったよと僕は獄の世界を守ることになった。




