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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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76話 大きな樹木①

 涼太郎と二人でディーグを止めているも、死屍デッドルタの数が多かった。いくら倒しても増える一方で、ディーグは戦う気が全くないのか屋根の上で見物をしている。


「この程度でやられないよな!」

「なんで嘘を突き通す必要がある?」


 カステクラインを使って死屍デッドルタを倒していくも、ディーグは話してくれない。なぜ、なぜなんだ。あの日、何があったのか教えてくれと願いながらも、ディーグの心は変わることはないのかもしれない。


「颯、楽!危、ない!」


 いつの間にか背後にいた死屍デッドルタでやられると思った矢先のことだった。


「カステクライン!水、魚の大津波」


 大量の魚が津波のように流れ、死屍デッドルタが全て消えていき、誰かと思えば焔副団長。焔副団長は想心たちがいるであろう方角を見ていた。


「颯楽、ここは任せて平気か?」

「はい!」


 返事をしたら焔副団長はすぐいなくなり、これでようやくディーグと話せる。ディーグも想心たちがいる方角を見ていたけれど、こっちに体を向けた。


「話してもらうよ、ディーグ。いいや、大樹」



 こういうの苦手なんだよなとまっすぐ見てくる颯楽と涼太郎であり、涼太郎の力で屋根に登ってくる。お前ら二人には言えねえよ。あの時、一体何があったのかを今更言ったところで、俺たちはもうあの世には戻れねえ。


 あの日……


 俺たちは同じ大学で生死という研究を重ねていた。無論、颯楽の親父さんの影響で、研究員になった。本当に不老不死は存在するのかとか、そういうものじゃない。なぜ魂は一度天に戻ってから新しい命として現世へと戻るのか。

 生まれ変わりがなければ、家族や大切な人と永遠に暮らせるはずなのに、なぜ死が存在するのかと。家族はもちろん愛する人を失った時、必ずしも絶望に落ちる。

 一部だけ、いなくなってホッとするという人もいるだろ。そうだとしても、必ずしも誰かが悲しむのは当然のことだと、俺は思っていた。


 生死という研究はそう簡単に研究できることではなかったから、時に行き詰まることもしばしばあった。俺は雑誌を顔に被せ寝ていたところ、涼太郎に起こされる。


「こんなところで寝てたら風邪引く」

「仕方ないだろ。研究に行き詰まったんだからさ」


 そう言いながら雑誌を取り出し、涼太郎が淹れてくれたコーヒーを飲みながら質問をする。


「んで、涼太郎は研究進んでんのか?論文の締切近いんだろ」

「大樹はもう論文できてんの?」

「いや、手つけてないというか、一ページも書けてねえよ。なんというか最近…」

「最近?」


 ここで話したらとつい目線を扉の方へとやり、そこには黒い物体があるも視線を戻した。


「最近書こうとしても、うまく書けないんだよな。本当に俺がこの研究をやっていていいのかも、正直言うとわからなくてさ」

「んーただ大樹は興味を持ってやり始めたんでしょ?」

「まあな。以前も話したけど小学校の頃さ、颯楽の親父さんが来て、授業をしてくれたのがきっかけだった。だからとことんやるって決めてたけど、颯楽のように頭はよくないから」

「それを言ったら某もだよ。某は小さい頃から颯楽と仲がよくて、教授の話もよく聞いてたから自然とこの道を選んでた」


 俺と涼太郎は颯楽の親父さんの影響と、颯楽も目指していたから成り行きで俺たちはなったようなものだ。颯楽は親父さんがいるから、論文もさくさくと進んで、俺たちは置いていかれるほど颯楽の研究は凄かった。

 

 小学生の時は俺にべったりだった颯楽に、こうも差を出されるのが悔しいという気持ちが溢れていた時のことだ。俺の視界には常に黒い物体が見え、それが死に関係することもわかっていたから俺は目を逸らし続けた。

 俺が見えていると言うことは、俺の命がもう少しで命が尽きるのか、はたまた俺の身近な人を失うのか。その黒い物体が見えたとしても、論文に書いたとしても馬鹿にされる。そう感じながら適当に俺は論文を作りながら、夜遅くまで研究をしていたところ。


 ガッシャーンという音が響き、何事だと隣の研究室、颯楽の研究室を覗くも誰もいなかった。まさかなと恐る恐るその奥へと入ったら、黒い物体がいる。周囲を見ると颯楽が研究していたものが落とされていた。


 見なかったことにはできなくて、ついスマホを取り出そうとしたところ、首を掴まれる。


「葉桜颯楽に言え。これ以上、この研究を進めるなと。進めたらお前の大事なものを失う。いいな?」


 そう言って俺は一度気を失いそうになったところ、なぜか涼太郎が現れたんだ。逃げろと目で合図するも涼太郎は逃げることはせず、なぜか柔らかい風が吹いた瞬間に、黒い物体はいつの間にかいなくなって落とされる。

 咳き込んでいると涼太郎が大丈夫と声をかけてくれた。


「間に合ってよかった。あれが見えていたなら教えてよ」

「言えるかよ…。あれはなんだ?」

「亡霊だよ。黒い物体が見えたらもうすぐで死が待っていると言われてるらしい」

「…んでなんで涼太郎が来たら、あいつ逃げたんだよ。意味がわかんねえ」


 涼太郎は周囲を見渡しながらあることを俺に告げたんだ。


「なんて説明すればいいかわからないけど、僕は龍使いらしい。目には見えないけど感じるんだ。龍がそばにいるってね。だからきっと僕の仲間がピンチだって教えてくれて、ここに来たら大樹が襲われてたから」


 最初、涼太郎が言っている意味がいまいちわからなかった。けれど涼太郎と颯楽の話を昔聞いたことを思い出す。

 あれは小学生の頃だった……。


「ねえ知ってる?僕たちには見えないけど、龍がそばにいるんだって。僕たちが思ってる龍なのかな」

「俺たちに見えないんだからいるわけないだろ。な?涼太郎」

「ん〜某はわからないよ。目に見えないものをいるって認識しちゃったら、お化けもいるってことになるからあまり考えたくない…かな」


 絶対いるってと颯楽は龍の話題をすると目を輝かせて俺たちによく言っていた。それからは颯楽の自由研究は決まって、龍についての自由研究であり、みんなに揶揄われていたけれど、龍かっこいいよなと颯楽の同級生たちは、自然と颯楽と馴染んでいた。

 ただ俺はその時からだと思う。黒い物体が見えていたとしても、目を逸らして過ごしていた。


 まさかその黒い物体が颯楽を監視していただなんて、颯楽に話したらどうするのか、目に見えていたからだ。颯楽を失いたくないという想いが強くて、このことは誰にも話さないと決めていたのに、涼太郎は俺に気づいていたんだと知る。


「なあ、涼太郎」

「ん?」

「颯楽には俺が襲われたこと、絶対に言うなよ。言ったらきっと颯楽は早死にする」

「もちろん。言わないよ。ただこのことは教授に話しておこう。颯楽を守ってくれるかもしれない」


 そうだなと涼太郎の力を借りて立ち上がり、翌日教授と話そうとしたけれど、教授は出張でなかなか会えずにいた。颯楽に一応、研究をストップさせようかと悩みながら、颯楽の研究室へと入る。


「颯楽、あのさ」

「大樹、ごめん。ちょっといまいいところで」


 ホワイトボードにはずらりと数式が書かれてあって、俺にも解ける勢いだったから、俺はつい颯楽の手を止めた。


「大樹?」

「…この数式を解くな。死にまつわる数式だろ?これ以上、死について踏み込むな」


 伝えるも颯楽は平気だよと俺の手を離して進めていく。俺の言葉じゃ説得できないのかよと、心が蝕んだ。お前は天才な研究者なのに、ここで失ったら俺は誰をライバルにすればいいんだよ。

 お願いだからと俺はつい数式を消したことで、颯楽と喧嘩をすることになった。何してくれてるんだよと子供のように泣きそうな目で俺を訴え、俺はこれ以上解くなという目をした。


「出てって…」

「颯楽が諦めるまで俺はど」


 颯楽から物を投げられ殺意を感じた。俺はつい勝手にしろと言いながら颯楽の研究室を後にする。その瞬間、俺の目から雫が零れた。やめろ…やめてくれと願っていても、颯楽の研究は進んでいく。


 そこから颯楽と話す機会を失い、どんどんと遠い人に変わっていった。研究論文が受賞し、その光景が俺には眩しかった。


「涼太郎…」

「早く仲直りすればよかったのに、いまだに喧嘩してるだなんて。あれから黒い物体見えてないんでしょ?」

「そうだけど、怖いんだ。颯楽を失うのがさ…」

「大丈夫だよ。僕の龍が守ってくれてるから心配はいらないと思うよ。僕たちも追いつこう」

 

 涼太郎と二人で颯楽に追いつくため研究をしようとした矢先のことだ。俺と涼太郎はその頃、違う研究に没頭して夜遅くまでやっていた時だ。

 やたらと部屋が冷えるなと思っていたら、俺は黒い物体に囲まれる。


「あれほど忠告をしてやったというのに、まだ懲りないようだな」

「あんたらなんで颯楽に見せず、俺が見えるんだよ。普通逆じゃねえの?」

「お前はこちら側につく者だから、あえて我々の姿を見せている。颯楽の研究を阻止できなかった場合、お前は死ぬ運命になるぞ。忠告はしたからな」

「それはどうも。阻止したいけど、どうすることもできねえんだよ。どうすりゃあ…」


 俺はつい黒い物体に言ってしまった。止めようとしたところ、颯楽と喧嘩をしてそれきりになってしまったこと。どう颯楽と向き合えばいいのかもわからないこと。


「謝るにしても、その先颯楽が俺と向き合おうとしてくれないんじゃないかって、恐れて」

「案ずるな。お前の意志に従え。そうすればいずれ颯楽はわかってくれる」


 そう言って黒い物体たちはあれ以来会うことはなく、俺の意志で動くも颯楽とうまくいくことはなかった。


「だあああぁぁぁ!」


 ボフッと研究室にあるソファーにダイブし、遼太郎が相変わらずだねと俺にコーヒーを淹れてくれる。


「颯楽、頑固な部分があるから仕方ないと思うよ」

「だけど腹が立つんだよ。俺がどれだけストップしろと言っても、近寄るなオーラ出すし、毎度勝手にしろって言っちまう俺も馬鹿だし」

「僕も正直、颯楽の顔をみてそろそろ限度はあるかもしれないって思ってる。だからもう少しで諦めがつくんじゃないかな」

「そうだといいけど、嫌な予感しかしなくてさ。あぁこういう時、教授がいてくれたら」


 髪の毛をくしゃくしゃにして涼太郎が淹れたコーヒーで落ち着かせる。話したい時に教授が不在だし、メッセージで送っても既読スルーされるからな。忙しいのはわかってるんだけど、なんかこうもやもやする。


「某がいるから大丈夫、大丈夫」

「涼太郎の大丈夫は大抵大丈夫じゃないだろ。ったく涼太郎もそのくま消せ」


 えへへと誤魔化す涼太郎であり、のちに俺と涼太郎に悲劇が起きるとは思いもしなかった。


 お互い研究で忙しい時期に、涼太郎と夕飯食べに行こうとした時だった。白装束を着ている男が尋ねてきた。


「君が松風涼太郎くんと緋土大樹ひづちだいきくんだね?」


 返事をしようとしたところ、涼太郎が俺を庇った瞬間に涼太郎は首を斬られた。


「涼太郎!てめえ!」

「鬱陶しい。この龍使いと某霊能者である緋土家。本来は見逃してあげたいのですが、颯楽の邪魔をしてばかりいるようなのでこうさせます。あなたは一生、外に出られない監獄で過ごせばいい」

「ふざけんな!この殺人っ」


 私は捕まりませんよという言葉に俺は体を崩し、白装束が冷ややかな目で笑っている姿で目を閉じる羽目に。



 なんで百合男さんが死屍デッドルタにならなくちゃならないのと、混乱が起きていた。優くんもリラ団長はルルラちゃんを慰めている。


「牡丹、どういうことだ!」

「グレイの呪いが発動した。ただそれだけだ。ダークグレーノ団は、全員呪いがかかっている。だから私はねずみたちの元へには帰れないということ」

「…まさかグレイ団長も光が発動したら?」


 深く頷く牡丹副団長で僕があんなことしなければと落ち込んでいたところ、セブラが僕の肩を叩きそんなことないと言っているかのようだった。


「グレーまでは死屍デッドルタになる確率は低いが、ダークグレーから先はってことか。ちっ今までのと書き換えられてやがる」

「えっ?」

「今までは俺たちデステクライン使いはカステクライン使いに手を貸したら、死屍デッドルタになりやすかった。ただ今回はカステクライン使いに手を貸しても、発動しない理由は想心が来た関係で規律が変わったと過言ではない」


 なんで想心が来た関係で規律が変わってしまったの。もしかしてこれは想心の想いから始まるとしたら…。


「とにかく百合男を倒すしかない。あーもう、デステクライン使いに戻らなきゃよかったよ。思穏、さっきの透で百合男に攻撃を与え続けろ。優」

「はい!」


 優くんは状況をすぐ理解し対応し始める。ルルラちゃんはまだ泣いており、このままだったら悠くんが目を覚ましてしまう。


「カステクライン!透、紅葉の川!」


 紅葉が川のように大量の紅葉の葉が百合男さんに当てていく。いつの間にかねずみちゃんのお父さんである牡丹副団長はいなくなっていた。

 ルルラちゃんたちのために、百合男さんを助けたいけれど、あの状況だったらもう普通に接することはできないかもしれない。


 百合男さんは唸って、攻撃してくるも、さっき優くんがやってくれた魔法で、ルルラちゃんに当たることはなかった。僕はまだ無力だと感じてしまうほど、なぜこういうルールが存在してしまうのだろうと思ってしまう。

 

「思穏先輩、離れててください」

「優くん?」

「こんなの迂生は望んでなんかない。穢れた魂であっても、迂生は助ける!」


 なんだこの光はと驚くほどで、これが獣柱の姿なのかと見入ってしまうほどだった。優くんの姿はまるで猫の擬人化のような姿であり、周りにはいつの間にか多くの白猫がいる。


「本当はこの姿、お姫様にしか見せてはいけない姿なんだけど、これが迂生の使命なんだ。母さんと父さんの間に生まれて、迂生は幸せだったよ。そばにいられなくてごめんね、悠、るこ。この光は母さんとるこたちにも影響が及ぶ。だからセブラ、後のこと頼みます」


 セブラは言いたそうな表情をするも、セブラはリラ団長たちを避難させ、僕はなぜか残された。


「思穏先輩、一つ頼みがあります。迂生の光で倒した後、父さんはおそらく無魂の姿で現れる。その時はその魂を悠に託してください。無魂はデステクラインの好物でもあるので」

「うん、わかったよ。悠くんに渡す」

「ありがとうございます」


 優くんは大きく深呼吸をして、カステクラインを起動させた。


「カステクライン!光、愛猫の絆!」


 白い猫が一体化になり大きな猫となって、百合男さんを猫パンチした瞬間に大きな光に包まれる。眩しすぎて数秒、目を閉じているとミャアと鳴き声が聴こえた。

 目を開けるとそこには優くんが泣いていて手に握りしめているのは百合男さんの魂。


 優くんと声をかけようとしたところ、嫌な予感がして咄嗟に唱えた。


「カステクライン!透、紅葉の川!」


 僕の力で守り切れるとは限らないけれど、優くんも察知したのか距離を離す。現れたのは紛れもなくグレイ団長で、肌で伝わるほど怒りを感じた。

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