112話 シロノ国へ
父さんたちがいるところへと戻り、まだ獣柱は残っていて、しかも邪人も多くいたからばらけて戦っていた。アンジはすでにいないようで、戦っている父さんの援護をしながら、アンジはと聞いたら、すぐいなくなってしまったらしい。
やはり千年前のようにもしかするとシロノ国へと行ったのかもしれない。それにここにはセブラもくーたんもいないなら、すでにシロノ国へ行ったとしか考えられない。
デステクラインを起動させつつ、死屍を出して邪人を止めつつ、萩魔法を唱えた。
「デステクライン!萩、白虎の萩トンネル!」
萩トンネルが現れ、白虎が光を放ちながら萩トンネルをくぐる。邪人はある程度、その魔法でいなくなったはいいが、邪人となってしまった獣柱は元に戻らない。
もう一回とやろうとしたところ、獣柱が途端に攻撃をやめ、何かを感じたのかいなくなってしまった。
すぐシロノ国へと向かってちょうだいと母さんが指示を出していて、俺たちも行こうとした。想心と兄貴の声が聞こえ、足を止める。
颯楽兄は白装束の格好をしていて、今でも泣きそうな顔をしていた。あまり遅くならないようにねと母さんに言われ、うんと答えながら、颯楽兄の近くへと寄る。
「兄貴っ約束守れなくてっごめん」
絶対に帰ってくるって言ったのに、その約束を守ることができなかった。もういいと颯楽兄は俺に触れることができなくても、抱きしめるようにやる。
「凪嬉から全部聞いたから、もういい。またこうやって想心に会えたことが嬉しいよ。もう二度と会えないと思っていたから」
「俺もだよ。凪嬉兄ともちゃんと話せた?」
「うん。これが終わったら、きっと見えなくなるんだろうなって気がする。だから会いに来た。芽森のこと頼むね」
「任せて、颯楽兄。行ってきます」
行ってらっしゃいと颯楽兄は俺から離れ、みけ太と一緒にシロノ国へと向かうことにした。シロノ国は昔、龍を使わないと行くことはできなかったらしいが、母さんが作り出したもので、シロノ国へと通じる通路が確保されている。
ブラックノ国では邪人を倒しているブラックノ団員たちがいて、向かってくる邪人を祓いながらブラックノ城へと急いだ。
城の中へと入り、広場に出ているところへ行くところ、そこで俺たちを待っていた人物がいた。お待たせと思穏がいて、一緒に行くよと言ってくれる照秋さんがいる。俺は思わず二人を抱きしめてよかったと伝えた。
「あの時はどうすることもできなかったけど、想心の力になる。急ごう。冰春を救いに」
おうと二人から離れて、シロノ国へと入ることにする。入ってみたら予想以上に邪人が多く徘徊をしていた。すでにシロノ団はほぼ全滅か。美命は無事だよなとシロノ城へ向かっていると、城のほうから、眩しい光が城下町まで光った。
なんだろうこの光はとその光が消えると、虹龍が現れ、他の龍よりも美しさがある龍だ。そこに二人が乗っているのが見え、よく見ると芽森と雫。てことはあの虹龍はくーたんが出したんだと理解して、先に進むことにした。
途中で芽森が雫の名を叫んでいたから、様子をみると雫が落下しそうになっている。白虎を出してそれに乗り、先に行っててと伝えて雫を救いに行った。
間一髪で雫をキャッチし、なぜ龍から落ちたのかわからなかったが、雫が無事でよかった。お待たせと伝えたら、アンジがと涙を流して言う雫で伝える。
「大丈夫。みんなも来たから、絶対にアンジを助けて、みんなで邪神を倒すから、雫。芽森と一緒に龍宮に行ってくれ。そこに龍ノ王がいるから、そこで指示をもらう。いけるな?」
「私が呼んだ龍たちはどうしたら?」
「雫の想いで来てくれているんだ。自信を持っていれば、龍の傷は癒える」
雫は涙を拭い、不安になっていたものを消したようで、虹龍が芽森を乗せてこちらに来る。雫は虹龍に移り、芽森と雫ならできると叫んで、芽森と雫を乗せた龍は龍宮へと向かう。
これで二人は大丈夫だよなと見届け、白虎に城へと向かってくれと指示を出したら、軽々と屋根を登って、シロノ城へと急いだ。ちらほらと城下町には遺体があるも仕方がないとシロノ城へと向かっていたら、誰かが吹き飛んで来た。
みんなが倒れていて、白虎が急に止まるから落ちそうになったものの、なんとか耐えた。目の前には邪人となってしまった獣柱たちがいて、みんなはやられるも立ち上がる。
デステクライン使いの伊雪たちは、獣柱を助けたいという想いが強いことで、みんなのデステクラインがカステクラインに切り替わる瞬間が綺麗だった。
伊雪はここは任せて行ってと言われ、カステクライン使いになったから、大丈夫と信じ、俺はその先へと進んだ。すでに始まってるから、あちこちで邪人と戦っている姿が見える。
思穏は無事に照秋さんと着いたかなと進んでいたら、狼柱、狼牙藍雅さんが俺に攻撃をして来て、デステクライを起動させる。
「デステクライン!萩、白虎の萩トンネル!」
唱え萩のトンネルができ、そのまま白虎は突進をして、剣汰がくれた剣で峰打ちをした。伊雪と湘西さんが後、やってくれるだろうと突き進む。
城から闇の光と、眩い光が見え、早く行きたいのだが、今度は亀柱の亀須兎ちゃんと烏木滾良さんが黒い兎と烏が複数出してこっちに向かって来たから、次の呪文を唱えようとしたところ、チーガと舟渡先輩に砂山先輩が助けてくれる。
ありがとうと叫びながら、その先へと進んでいくと横から狐柱の狐美山美麗さん、前には牛倉義臣さんに、後ろから鈴翔が現れ、挟まれてしまう。
こっちは急いでんだよと白虎が唸り出して、戦うしかないと思っていたが、リディーがいけという合図で走らせると大きな爆発が起きる。煙で覆われる中、白虎は走り出し煙から光が光線しているのが見えた。
リディー頼んだぞと煙から出て、その先へと進んだ。あちこちから想心を行かせろという掛け声で、みんなが邪人を止めてもらい、シロノ城に到着しようとしたところ、鹿崎星蘭が待っていた。
確か美命が止めていた人だったよなと思っても、美命が現れない理由ってなんだ。誰も鹿崎星蘭を止めようとはしない。行っていいのかと思っていたら、美命がやって来て、早く行って想ちゃんと言われる。
任せたぞと美命に伝えてシロノ城の中へと入った途端に鶏の鳴き声がうるさくて、白虎が止まってしまった。
鶏なら環さんかと落ちついたところで、行こうとしたところ、テンファの弟、優が目の前にいたからまずいと引こうとしたら、テンファが守ってくれる。
ここは任せてくださいと言われたから、そのまま俺は白虎に乗って、くーたんとセブラがいるところへと向かった。途中で環さんの姿を見たけど、針尾副団長が止めに入っている姿が見えた。
くーたんとセブラがいるところへ行ってみたら、俺の鼓動が早鐘するかのように鳴り響く。そこには血まみれのくーたんとセブラが、倒れ込んでいて、後ろ姿で立っている人物こそが邪神。
俺が来たことで邪神は振り向き、口元には血がついていて、それを舐めながら満足そうにしていた。
「一歩遅かった。この二人の魂をいただいたよ。美々だった」
落ち着け落ち着けと胸に手を当て、そんなはずがないと心の中で叫んだ。あの二人が簡単にやられるわけないだろと焦りを出していたら、ピクッとくーたんが動いた。そしてセブラも動いて、俺に逃げろと言っているかのように見えた。
置いていけるわけないだろと白虎から降りて、魔法を唱えようとしたら、アンジに捕まる。
「この二人は、冰春に殺させた。もう時期、魂が出てくる。それを見届けよう、想心」
邪神が俺の頬を掴むから、唾を吐いてやった。そしたら邪神は俺の髪を掴み、殺気を感じた。それでも俺はセブラもくーたんも、こんな程度でやられるわけがないと強く思った。
すると二人の傷が消えていき、その光を利用して、俺はずっと閉まっていた物をアンジに返す。やめろと邪神は俺の髪の毛を放し、アンジに触れようとしたが、セブラとくーたんが止めた。
アンジは一度、倒れそうになったところ、キャッチしてあげて、アンジ、いや、冰春と声をかけ続ける。
◆
想心の声がする。これは空耳と思っていても、目を開けたら、僕自身が立っていた。僕と聞いたらそうだよと僕の頬に触れる僕。
「ずっと待たせちゃってごめんね。もう僕から離れない。一緒に邪神を止めよう」
「だけど僕はもうやってはいけない行為をした。それに帰る場所ももうない」
「あるよ。それに僕を必要としている声、聞こえないとは言わせないよ。みんなの声、届いてるでしょ?僕は一人じゃない。閉じこもってないで、閉じこもっている場所から抜け出そう」
僕自身は手を差し伸べて行こうと誘ってくれるも、行こうとは思えなくて、再び目を閉じようとした時だった。みんなが戻ってきてという言葉に、涙が止まらない。
(おい、冰春!こんなこと私は望んではいないぞ!何度も言わせるな!冰春が生まれ変われるまで、私は冰春のそばから離れないと。だから頼む。私と想心のためにも、みんなのためにも冰春が必要だ!早く、帰って来い!)
リディー、無茶だよ。みんなが僕を必要だとしても、僕はもうみんなといるの疲れちゃったよ。
(冰春、僕は冰春と会えなかった日々が辛かった。親父がやった行為は忘れることはできなくても、僕がずっといるのは、冰春が寂しくないように、今度は助けられるようにいる。形は違えど、僕にとって、冰春は自慢の弟だ。弟を置いていけるわけないだろ。本当は汀春と冰春の面倒を見てあげていたかった想い、果たさせてくれ)
玖朗、今更言われても、僕の魂はもうすぐ消える。兄さんが羨ましかったな。
(そばにいられなくて、悪かった冰春。息子なのに、助けることもできなくて、あの時の後悔も何もかも全て、俺はずっと後悔してた。汀春と冰春を育てられなかった分、ここでだけど冰春と過ごして生まれ変わりたいんだよ。それから俺の夢、ここで叶えられるなら叶えたい夢がある。その夢には冰春がいなきゃダメなんだよ)
父様の夢に僕がいていいの。僕がいれば必ず不幸になっちゃうよ。
(冰春、ごめんなさい。あなたを苦しませてしまって。母親失格ね。あの時も助けられたのに、できなかったことがとても悔しいの。再び同じことが起きた時、今度は助けたいという一心で、色々と準備をして、みんなも手伝ってくれたのよ。大丈夫、冰春。恐れることはない。あなたはあなたのままで、あなたがやりたかったことを成し遂げればいい。お願い、冰春。邪神に負けない勇気を出してちょうだい)
母様、僕は本当に生まれてきてよかったのかな。僕が生まれなければ、汀春は苦しまなくてよかったんじゃないの。
(冰春、僕のこと覚えてるかな。僕の名前は照秋。今は思穏と一緒に邪人を倒しながら向かってる。あまり面識はなかったけど、汀春の代理として言わせてほしい。汀春は現世にいた時も、天の世界にいた時も、獄の世界にいた時も、想心となって冰春と過ごしていた日々も、汀春は冰春のそばにいたんだよ。心の中で生きてる。汀春がデステクライン使いになった時、汀春が言ってたんだ。冰春と過ごせて凄い充実した日々だったって。冰春が偽名を使っていようとも、汀春は本当の弟として接していたこと。汀春と冰春は双子として生まれたから、魂は通じ合っていたから、弟だってすぐわかったって。ただあえて言わなかったのは、獣柱の言いつけを守っていたから、偽名の名で呼んでいた。本当は冰春って言いたかったらしい。そして生まれ変わって、想心もそれを感じているんだと思う。冰春の想いは全て、想心に伝わってることも。僕も想心と会って、戻って来たんだって実感が持てたから、こうして目を覚ますことができたんだ。今度は僕もその中にいさせてよ、冰春)
照秋が目を覚ましても、もう止めることはできないよ。
もう聞きたくないと思っていたら、辺りが明るくなり、僕に向けて差し出す手は、想心の手だとすぐわかった。ううん、違う。汀春兄様の手と立ち上がり、その手を握ったらくっきりと汀春の顔が見えた。
「冰春。僕のために、邪神を引き受けて、僕を生まれ変わらせてくれて、本当にありがとう。この恩は忘れることもできなくて、意思だけが残った。冰春が偽名を使って僕と過ごし日々、本当に冰春って言いそうになったよ。それでもどこで見張られているかわからなかったから、秘めた想いは封印してた。僕はね、冰春」
汀春兄様が強く握ると暗かった場所が水鏡のような場所へと切り替わり、そこには想心がいる。汀春兄様は想心のほうを一度見て、そして僕の背中を押すまえにこう言った。
「これだけは忘れないで。どんなに引き離されそうになっても、僕たちの絆は永遠に残っているんだよ。だからどんなに冰春がみんなに背を向けようが、僕はずっと冰春のそばにいる。目に見えなくても、声が聞こえなくても、冰春の灯火が消えそうになったとしても、冰春の灯火は僕が守り続ける限り消えはしない。だから行っておいで。想心が待ってる」
背中を押されて、一度振り向くとほらっと汀春兄様は微笑み、汀春兄様ありがとうと笑って、僕は想心が待つ場所へ行き、想心の手をとった瞬間、温かい光に包まれた。
◆
冰春が涙を流しながら目を開け、想心と言うから強く抱きしめてしまう。くすぐったいよと言われながらも、元の冰春に戻ってくれて嬉しかった。
そこに照秋と思穏くんが到着して、元に戻ったんだねと安心した表情だ。
「想心、僕」
「わかってる。冰春、全て終えたらゆっくり話そう。今はあいつをなんとかしないとならない」
冰春を立たせてやり、状況を把握してもらって、セブラとくーたんがこっちに来たら冰春だけかと思えば、俺ごと二人がハグして照れるんだがと思ってしまった。
すると風向きが変わり、邪神が不気味な高笑いをし、周りにあった蝋燭が消える。この感じとてつもない嫌な感覚があり、冰春もセブラたちも、警戒を抱いていた。
「せっかくのおもちゃが台無しになった。まあいいや。準備は整った。さあ始めよう、地獄の始まりを!」
龍宮に行ったはずの二人が邪神の手の中に入ってしまい、見たこともない龍が現れてしまう。これを相手しろってかと思っていたら、思穏の姉ちゃんと松風先輩が現れる。
「ここは私と涼太郎が止めておくから邪神を」
「早く邪神を倒さないと芽森ちゃんと雫が危ない」
本当に二人で任せっきりでいいのかと思えば、みよりさんと複数の人たちが現れた。そしたらみよりさんも俺と冰春にハグをして、みよりさんの想いを知る。
「想心と冰春が並ぶと、本当に汀春がいるような感じよ。想心、冰春と仲良くしてくれて、ありがとう。ここは私たち龍使いに任せてちょうだい。あなたたちなら、やり遂げられる」
はいとみよりさんに告げ、俺と冰春は手を繋ぎ、俺は白虎を、冰春は龍を出して、邪神に挑むことにした。




