111話 暗示
辰弥くんと避難をしていたけれど、大きな地震によって、芽森ちゃんが危険だと感じた時には手遅れだった。辰弥くんが私を助けようと動いてくれるも、アンジによって倒されてしまう。
辰弥くんと近くに寄ろうとも邪人に囲まれ、私の前には邪悪な光で包まれている芽森ちゃんが到着する。それによって私も邪悪な光の中に入ってしまい、なんとか抜け出そうとしても無意味だった。
「僕が本当の姿に戻るまでに時間がかかる。冰春、姫君を見張っていてね」
アンジが自分に語ると、ふっとアンジじゃない魂がいなくなるも、アンジは暗示がかかっているせいで、正気を取り戻せてない。芽森ちゃん起きてと叫んでみるも、芽森ちゃんは起きようとしなかった。
カステクラインは没収されていないから、なんとかこの光から抜け出して、逃げなくちゃならない。この光を壊せる魔法ってなんだろう。
ある程度の魔法は取得済みだとしても、この光は邪神が作り出した光だから、どれも効果は薄い。考えられるとしたら萩魔法。やってみる価値はありそうとカスてクラインを起動させてみた。
「カステクライン!萩の思案!」
やってみるも弾かれてしまい、簡単にはいかなくて、カステクラインは使えない。想心、どうしようと思っていたら、芽森ちゃんがゆっくり体を起こして、ここはと周囲を見ていた。
「芽森ちゃん、大丈夫?」
「うん。想兄と会って、想兄の友達と一緒に逃げる途中に光に包まれちゃって」
「私は辰弥くんと避難してたら、アンジと芽森ちゃんが現れて」
「私たちを見ている人?」
そうだよと芽森ちゃんにアンジのことを伝えた。アンジは邪神によって支配されていることで、正気を取り戻せていないこと。正気を取り戻してくれたら、優秀な魔導士だからなんとしてでも助けてあげたいことも伝えた。
「えっと辰弥くんにいろいろ教わってたけど、本当に邪神様がここにいるの?」
「うん。アンジくんの体を使って、今は本当の体に戻るからっていないよ。ここから抜け出せれば、アンジを救う方法が必ずあるはずなの」
芽森ちゃんは少し考えていて、夏海ちゃんからいろいろと教わっておけばよかったなと感じてしまった。今頃、想心たちはこっちに来るかもしれない。
もしかしてアンジの光はまだ想心の中にいるから、正気を取り戻せていないとしたらどうなんだろう。考えていたら辰弥くんが痛いなと起き上がった。状況を把握した途端に建物が吹き飛んでしまい、空には五龍が飛んでいる。
「邪神様が目覚める前になんとかしたかった。芽森ちゃん、それからロゼ姫。僕に力を貸してほしい」
「ここで儀式をさせるわけにはいかない!」
そこに夏海ちゃんが現れ、辰弥くんは突っ立っているアンジに刃を向けた。夏海ちゃんは術を唱えて、邪悪な光が消え自由の身となる。
「二人と儀式を結べば邪神を鎮められる。邪魔をしないでもらえるかな。もう能力がない、君には用がない」
「そうだとしても、こんなこと間違ってるって言ってんの。それに儀式を行っても邪神は人の弱みから現れる。だから完全に倒さないと、再び災害が起きる。あなたのお父さんもそれを望んで」
「父さんが望んだから、父さんは邪人によって支配された。だから父さんを助けるために、儀式を行うから邪魔しないで!」
赤龍が夏海ちゃんを吹き飛ばして、自由になったから芽森ちゃんの手を握って逃げようとするも、体が思うように動かない。胸には妙な紋章の光が現れる。
逃がさないよとアンジを残したまま、私たちは辰弥くんと一緒に儀式をするため、場所を移動しようとしたところ、強風が吹いて、そこには松風先輩と見慣れない男の子が現れる。辰弥くんは舌打ちをしながら、龍に指示を与え二人に攻撃しようとも、そこに白虎が龍に噛み付く。
「どうやって入って来れた?」
「事前に芽森さんのご両親からいただいた龍桜神社のお守りで入ることができたんです。爽の風龍に連れて来てもらいました。はっきり言います。儀式を行ったとしても、無意味だと。時代は変わり、やり方も変わる。古い行いをやっていたとしても、効果はない」
じゃあどうしろと言うんだと辰弥くんは怒り、虎のポシェットをつけている男の子はこう言った。
「僕たち現世にいる人間ではやることはなにもできない。ただ祈るだけ。あの世にいる人たちにかかっている」
「僕が今までやってきたことは無意味だと言いたいの?」
「無意味じゃない。ただ芽森さんはいかなくちゃならない使命がある。龍桜家はあの世と現世を繋げる通路を作れる。そのさきは龍宮と呼ばれている場所に行かせるのが辰弥、君だよ」
「芽森が帰って来られなくなっては」
僕を信じてほしいと少年は真っ直ぐな目で、辰弥くんに言い、辰弥くんは一度私と芽森ちゃんを見て、迷っているようだった。すると芽森ちゃんは辰弥くんの手を握って伝える。
「災害を止めに行きたい。無事に帰って来る。それに今までのことは、その…まだ整理がついていなくても、辰弥くんの友達だよ」
「…ごめん。必ず帰って来て、僕の龍たちを使って大丈夫だから」
ありがとうと芽森ちゃんが感謝を述べ、辰弥くんが龍宮の道を作ろうとした時のことだった。蝋燭についている火が全て消え、寒気さを感じる。
辰弥くんが危ないと庇おうとしたけれど、体がまた動かなくなってバタンと倒れる音がした。迎えに来たと耳のそばで囁かれ、私と芽森ちゃんは邪神によって奪われることに。
◆
クロノ王国へと到着して、鈴翔くんが案内してくれた場所の中へと入り、そこには照秋さんが眠っていた。手を握れば入れますと鈴翔くんに言われ、照秋さんの手を握ると紅葉の木々に綺麗な川が流れている。
莉穏ちゃんかなと声をかけられ振り向くと、照秋さんがいらっしゃった。思穏はと聞いてみると、こっちと案内をしてくれる。セブラから聞いてたけど、本当に私のことも忘れてしまったのかなと景色を眺めている思穏がいた。
照秋さんがお姉さん来たよと声をかけると、思穏は振り向いてお姉ちゃんと呟く。
「えっ」
「僕もわからない。莉穏さんだけ覚えてるんだよ。だから来てもらった。僕はあっちにいるから、なにかあったら言ってね」
はいと告げたら照秋さんは行ってしまい、よかったと思穏に抱きつく。お姉ちゃんどうしたのと言われるも、思穏が無事でいてくれてよかったとほっとした。
肝心なのは他のみんなと過ごした記憶を失っているってことだよね。思穏と離れて、何も覚えてないのと再確認する。
「何も覚えてない?」
「ごめん。お姉ちゃんがいたってことぐらいしか覚えてない」
思穏のカステクラインは壊れてしまったとセブラから聞いてた。修復できれば思穏は想心くんの元へ行って一緒に戦いたいだろうな。
本当にこのやり方であっているのかは定かではないけれど、やる価値はあるかもしれない。
「思穏、ちょっとそこにいてくれる?」
うんと思穏は、不思議そうにしているも、雷龍を呼び出して、雷を起こしてもらう。雷と思穏は空を見上げ、雷が思穏に向かって落雷した。
落雷したことによって私は照秋さんの手を離してしまい、そしたら思穏の姿があり、そして照秋さんがゆっくりと目を覚ました。思穏もあれというような顔立ちでいて、状況が読めないでいるようだ。
「僕は確かアンジくんにやられて、それから」
はっきり思い出したことで、再度思穏を抱きしめてしまった。お姉ちゃんどうしたのと言われるも、照秋さんも起きていることで、そっちに驚いているようだった。
「まさか、思穏のお姉さんに起こされるとは思わなかったよ」
背伸びをする照秋さんであり、そう言えば鈴翔くんの姿がない。どこへ行ったんだろうと思っていると、照秋さんがかなりやばいかもと言い出す。
「鳩柱が戻ったらしいけど、邪人になってしまった獣柱にやられて、鳩柱の子も邪人になってる。とにかく僕は適当にカステクラインかデステクラインもらってくるからって。まさか戻ってくるだなんて」
思穏が使用していたデステクライン。透過の紅葉が修復されて照秋さんの元へと戻り、そして思穏には新しいカステクラインが到着する。思穏の本当のカステクラインは橙の半透明で金色に紅葉が描かれていた。照秋さんがそのカステクラインの名を教えてくれる。
「橙の黄葉と呼ばれているカステクラインだよ。誰にも従わなかったカステクラインが君を選んだということは何か意味がある。思穏、セブラからすでにもらっているなら状況は読めてるね?」
「はい。邪神が現れて雫ちゃんと芽森ちゃんが危ない。それとアンジが」
「このままいけば、冰春の魂は消えてなくなる。そうならないために、急ごう」
想心くんがいるという場所へ行こうとしたら、邪人が現れてしまい、照秋さんが死屍を出して、行こうと言われたから、行くことになった。
◆
僕はもう生まれ変わることもできないよねと真っ暗な場所にいる。邪神に体を奪われ、もうすぐ僕の魂は消えるような感じをしていた。
想心は芽森ちゃんに会えているといいな。艿花ちゃんの魂を持つ芽森ちゃんは、まだ龍ノ姫の力を完全に扱えるほどではない。だからもしかすると儀式を行ったら失敗に終わりそうな予感がした。
眠くなってきちゃったと目を閉じようとしたら、雫の声が聞こえる。雫は僕を恐れていたけれど、僕を目覚めさせようと呼びかけてる。だけど怖いんだ、雫。目を開けたら、また想心がいなくなってしまう恐怖心。
また僕を置いて行ってしまうのが目に見えているから、このまま僕の魂はなくなったほうがいい。
早く、僕の魂の灯火が消えればいいのになと目を閉じることにした。
◆
連れて来られたのはシロノ王国であり、シロノ王国にいた者たちが亡くなっていた。また千年前に起きたように魂が消える感覚は、夏海ちゃんも感じてるはず。
邪神は私と芽森ちゃん、そしてなかなか正気を戻してくれないアンジはシロノ城へと入った。邪神はここで成せなかったことを実現させる。私の力と芽森ちゃんの力を使って、三つの世界を滅ぼす。
アンジを目覚めさせられるのは私じゃない。セブラやみよりさん。玖朗にリディー先生、それから想心の声じゃないと起きてはくれない気がする。
鼻歌を歌う邪神であり、隙を見て逃げたいけれど、辰弥くんたちが無事か心配だった。倒れた音が三回したってことは、あの場にいた、辰弥くんと松風先輩に、見馴れない子か虎のポシェットをつけていた男の子がやられた。芽森ちゃんは自分のせいでやられてしまったことで、落ち込んでしまっている。
アンジ起きてと再度言っても、無駄だよと邪神が言っていて、私はなにもできない自分に嫌気がさしてしまった。
到着したらしく始まるんだと思っていたら、久しぶりだな邪神とセブラの声が聞こえて、よくみるとそこにはセブラと玖朗団長がいた。
「千年前のけりをつけさせてもらうぞ。以前は冰春の体と汀春の体を奪いやがって」
「まだここにいると聞いていたけど、復讐のためにお前らは残っているとはね。その分、邪人にしやすい体質。冰春のようになってみる?」
嘲笑う邪神であり、怒りを鎮めてという前に、二人は光り始めていく。この時のために二人は準備していたのは知ってたけど、この輝きは見たこともなかった。
二人の腰にはデステクラインとそしてカステクラインがついており、心の中にある灯火が見えるような感覚で、二人の灯火が通常より強い。
「その怒りを糧にさせてもらった。昔と違うことを証明させてやる」
「あの時の悔しさは今でも覚えてる。守れなかった悔いは、もう二度と起こさせない!シャン!今だ!」
お父さん来てるのと思いながらも、眩い光が放ち、私と芽森ちゃんは宙に浮いたかと思えば、虹龍に乗っかっていることがわかる。虹龍は初めてみたけど他の龍と比べて美しい龍を従えているのは玖朗団長だった。
邪神は邪人を出し、そしてアンジも動き出して、三人に攻撃をし始める。このまま見てるわけにもいかないと、私は祈りポーズをして、龍たちに告げる。
龍神様、お父さんたちに力を貸していただきたく、お願い申し上げます。
目を開けると玖朗団長の虹龍が鳴き、強い風が吹き始めた。伝わるといいなと、なんとかして龍宮にいく必要がある。邪神はもしかして私たちを利用して龍宮に行くために連れて来たのだとしたらと思っていると、五龍が現れ邪神に向けて力を出し始めた。
私の願いが届いたんだと思っていると、それを待っていたかのように、私は虹龍から落下する。私が呼んだ龍に何かをしたらしい邪神で、芽森ちゃんが私の名を叫んでいた。
龍に何かをされたことで私にも影響が出始めている。嫌だ、嫌だよと虹龍にしがみつこうとも、うまくつかめない。
助けて想心と芽森ちゃんがだんだんと見えなくなって、あともう少しで地面に着くと思った時のことだ。私をキャッチしてくれたのは、白虎に乗った想心であり、お待たせと想心が言った。
アンジがと私は想心にしがみついて、涙を零す。
「大丈夫。みんなも来たから、絶対にアンジを助けて、みんなで邪神を倒すから、雫。芽森と一緒に龍宮に行ってくれ。そこに龍ノ王がいるから、そこで指示をもらう。いけるな?」
「私が呼んだ龍たちはどうしたら?」
「雫の想いで来てくれているんだ。自信を持っていれば、龍の傷は癒える」
想心が言った言葉を信じて、私は涙を拭い、不安になっていたものを消して、強く願う。虹龍が近くに来て、芽森ちゃんが手を伸ばすから、その手を握って想心と離れた。
芽森と雫ならできると想心が叫んでくれて、私たちは虹龍に、龍宮へと連れてってと伝え、行くことに。




